――クリエイティブを学び取れ! 気鋭のDTM女子による音楽道場破り
(写真/河本悠貴)
[今月のゲスト]
SONOMI(そのみ)
青森県生まれ。KREVAが主宰する〈くレーベル〉の第一弾アーティストとして2005年に「一人じゃないのよ」をリリースし、翌年にはメジャーデビューを飾る。今年約9年ぶりとなる新曲「説明できない」で返り咲き、同郷のレゲエ・アーティストであるSoniaとのコラボ「会いたい」がリリースされたばかり。
Twitter〈@singersonomi〉
Instagram〈@song_chang〉
すっかり年の瀬。今回ゲストにお越しいただいたのは、今年9月に約9年ぶりとなる新曲「説明できない」、レゲエ・アーティストのSoniaさんとのコラボ作「会いたい」を11月にリリースしたばかりのSONOMIさんです。自らトラックメイキングもこなすシンガー・ソングライターの先輩からいろいろ学び取らせていただきます!
AmamiyaMaako(以下、A) 新曲、どちらも聴かせていただきました。まず「会いたい」はSoniaさんとの共作ですが、どのような経緯で制作された曲ですか?
SONOMI(以下、S) 私もSoniaも出身が青森で、同じイベントに出演することが増えてきて、彼女の情緒溢れるリリシストぶりと艶っぽくて倍音のある声が好きで、私から「いつか一緒に曲ができたらいいね」と誘ったのがきっかけで実現しました。
A 大切な誰かを失ったことを明確に思い浮かべられる優しい曲だなと感じました。どんな背景があって出来上がった曲なのかなと思っていたんですが、そのような経緯があったんですね。
S テーマはクラブ向けではないんですけど、私たちのルーツはクラブという場所にあって、歌詞は大切な人を失って会いたい気持ちを歌っていますが、トラックはヒップホップ/R&B、アフロビーツ調にしました。
A トラックメイキングはSONOMIさん自身ですもんね。
S ただただ悲観的になるのは違うかなと思い、「悲しいけど踊ろう!」という気持ちを込めました。
A 音楽を始めた頃からトラックメイキングはされていたんですか?
S いえ、本格的に着手したのはこの数年なんです。デビュー前は好きな曲の12インチに収録されているインストをオケにして歌っていたり、デビュー以降も基本はビートメイカーの方が作るトラックで歌ってきました。
A デビューのきっかけはKREVAさんですよね。どのような出会いだったんですか?
S もともと私がファンで、熊井吾郎くんや仲間たちと地元青森でやっていたイベントにKREVAさんに出演いただいたことがあったんです。それからいろいろアドバイスをいただくことも増えて、私自身の目標が高くなっていきました。以降、音楽に関して濃密に話すようになってきて、〈くレーベル〉から「一人じゃないのよ」でデビューさせていただくことになりました。
A KREVAさんにいろいろ鍛えていただいたんですね。……厳しかったですか?
S プロとしての厳しさはたくさんありましたが、根底はとても優しい人ですよ。
A 新曲「説明できない」は9年ぶりのリリースですが、その時間を要した理由をお聞きしてもいいでしょうか?
S 父親のガンの闘病生活を家族で乗り越えようとがんばったけれど、別れが訪れてしまい、その後に私自身が結婚したりしてすごく心が忙しく、曲は作り続けていたけれど、人間活動を一生懸命やっていた時期だったなぁと思います。メジャーとの契約が終わり、KREVAさんにこれまでお世話になった感謝がとても大きかったので、「これからは頼らずに歩ける」という姿勢を見せたいなと思いながらも……曲を発表できない葛藤があって。実際に「KREVAがいないと何もできないんだろ」とSNSで言われたこともあり、意固地になっていた部分もあった。でも3年くらい前に、久しぶりにKREVAさんのツアーに誘っていただき、KREVAさんファンの方々が私との共演をとても喜んでくれたのを感じて、「ここにも自分の居場所があって、ファンのみなさんが喜んでくれることをするのが自分の幸せ」と気がついて。閉ざされた道を開いていただいた感じです。その後はコロナが流行り出して、世の中の流れもどんどん変化し、自分の人生と向き合う時間が増えたこともあり、自分のやりたいことを叶えていかないともったいないというマインドに変わっていきました。
A お話ししづらいことをありがとうございます。私なら「なにくそっ!」と怒りの曲をリリースしそうです(笑)。
S そういった曲も作りましたよ(笑)。実際、9年の時間は長かったですし、平成から令和に、音楽業界もクラブも世代交代。曲をリリースできなくてもライブに呼ばれる機会はあったんですが、コロナ禍でそれも一気に減ったので、焦りもありました。
A まさに簡単には「説明できない」9年間だったんですね。ちなみに同曲はオーボエやトロンボーンなどの管楽器をフィーチャーしていますよね。
9年ぶりの新作であっても、その空白を埋めるようなクリエイティビティとボーカルはさすがの一言。そんな抜群の存在感をSONOMIソロカットで収めようとするも、見切れるまあこ。
S もともと吹奏楽部だったので、いつか曲で吹奏楽サウンドをやりたいと思っていたんです。コロナ禍の自粛中、旦那さんと夕陽を見て「きれいだね」って話した瞬間があって、「あ、なんて素敵な時間なんだろう」と初めての感覚になって。それを歌詞に起こして曲にしたいと思ったんです。ストリングスだと「感動してください!」みたいに大袈裟かなと感じたので、オーボエやフルート、ピッコロ、ホルンなどをフィーチャーしました。
A SONOMIさんは曲を作るとき、何から始めるんですか?
S トラックを作ってからメロディ、歌詞という流れが多いですね。
A セルフプロデュースだとメロディの善し悪しを客観的にジャッジしにくいと思うんですが、「作り直したほうがいいんじゃない?」とか言われたら、SONOMIさんはどうしていますか?
S 私がこれでいいって言ってるんだからいいじゃん! みたいな頑固さがありつつも……「じゃあ、ここはこうするので、こっちはこうさせてください」とか中間で折り合いを付けたりします(笑)。もちろん、貫き通すこともありますけどね。ただ、長年プロデュースしてきてもらい、今はこうして自分だけで曲を作っているわけですけど……平和に音楽を作れる環境を整えることが、なにより一番大事であることに気づかされました。「よかった」「ダメだった」は後からついてくる評価として、まずは自分自身の心が喜べる活動をしたい。
A 素敵ですね。今は自分のことを好きでいられる自分なんですけど、年齢を重ねるたびに嫌いなところがめちゃくちゃ嫌になってきて(笑)、「私が私を好いてあげられる曲を作りたい」と思っているんです。
S 私は常にマイペースだったからなー……(笑)。自分はそれが普通だと思っていても、相手に対しての配慮に欠けていたりするので、気をつけるようにしています。音楽に集中しちゃうと周囲が見えなくなりがちなので、私。
A 私が今年リリースしたアルバムは、この連載にゲストで来ていただいた方々のお話をベースに制作したんですが、来年はゲストに来ていただいた方々と共作したいな……なんてざっくりと考えているんですけど……。
S すごい面白そう! 私でよければぜひ呼んでください!
【今月の教訓】
平和に音楽を作れる環境作りが大事
(構成/佐藤公郎)
(写真/河本悠貴)
AmamiyaMaako(あまみや・まあこ)
シンガー・ソングライター、かつトラック・メイキングも自ら担うDTM女子。2017年にファースト・アルバム『Baby scratch』をリリース以降、コンスタントに楽曲を発表。ニューアルバム『Drops』絶賛発売中。
Twitter〈@amamiyamaako〉
Instagram〈@amamiyamaako〉