サイゾーpremium  > ニュース  > 社会  > 「【農協】の闇」が放置される理由

JA職員の間では、横領をしたり、組合員(JAに加入している農家)や准組合員(基本は出資金を払っている農家以外の地域住民)を騙すなどして共済等の契約に持ち込んだりといった、不正・不法行為が横行している――。

なぜなら、北海道を除く都府県のほとんどのJAは本業である農業関連事業(経済事業)が立ちゆかず、低金利で貯金や融資事業も期待できないからだ。共済販売で赤字を埋めざるを得ない構造的な要因があり、そのために職員に過大な販売ノルマを課し、日々、圧をかけているという。

こうした問題をJA職員、元職員への取材と地域のJAの内部資料から明かした一冊が『農協の闇(くらやみ)』(講談社現代新書)だ。本書を著したジャーナリストの窪田新之助氏に訊いた。

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JA共済のホームページより。

誰もJAを訴えたことがない

――『農協の闇』では、JA職員が共済などの金融商品を後期高齢者に対して強引に契約させたり、そうでなくても不要な契約、不利になるような契約を日常的にさせていたりすることが書かれています。そういうやり方が横行していることが、共済契約者になぜ広まらないのでしょうか?

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窪田新之助著農協の闇(講談社現代新書)

窪田 基本的に、JA職員も正組合員・准組合員も共に地域の住民で、昔から知った仲ですから、JAを信じているんですね。逆に疑って遠ざけると、なんらかの形で嫌がらせを受けるのではないかと心配になる。たとえあやしいと思っても、言い出しづらい状況にある。もちろん、わかっている人はわかっていると思います。

――JAの職員はパソコンに組合員の名前と顧客番号を入力すれば、貯金残高から入出金の記録までの通帳の中身、JAと契約している共済商品の内容、組合員の家族構成までわかるとありました。こういう情報を利用して、さらに別の商品の勧誘をしているとなると、個人情報保護法的にアウトなのでは? 個人情報の目的外利用ですよね。

窪田 消費者庁にも尋ねましたが、そこはグレーゾーンのようで、「顧客情報だから職員が見てもいい」との見解でした。

――え、それは驚きですね……。JA職員には一般的にどういう人がなるのでしょうか? 上から課せられた販売ノルマをクリアするために、自腹を切って共済を契約する「自爆営業」が半ば強いられているのに、なぜ働き続けるのでしょうか?

窪田 地元出身者が一般的だと思います。地方ではJAと市町村役場は人気の就職先です。職場として安定していて、給与はそれなりで、おまけに地元に長く住み続けられ、親・家族の面倒も見られますから。地域のJAには親父さんや親族、同級生が勤めていたから……と言ってコネで入ってくる方が多い印象ですね。だからこそ、抵抗なくみなさん入ってくる。都市部では勤め先の選択肢が豊富ですが、田舎に行くほど限られてきますので、一度勤めるとなかなか辞めづらい。それで自爆しても勤め続ける人が少なくない。

――共済の自爆営業は違法ではないんですか? 例えば生命保険の場合、勧誘者が保険料の肩代わりをするのは保険業法違反のはずですよね。

窪田 ここもグレーゾーンなんですね。もちろん、違法性が疑われる点はいくつかあります。例えば、職員に過度に無理強いして加入させることは労働基準法に引っかかるはずです。ところが、私が知る限り、いかんせん誰もこの件でJAを訴えたことがないので、違法であると法廷で証明されたわけではない。加えて、農水省も地方行政も見て見ぬフリをして介入しないので、野放しになっています。

では、なぜ訴訟を起こさないかというと、これもいくつか理由が考えられますが、ひとつには組織に入ってノルマを課され、周りもみんな自爆をしているとなると、いい・悪いか客観的に判断できなくなっていき、諦めも含めて「しょうがない」「当たり前」という感覚になってしまうからです。

――JA共済の販売についてJA職員の商品説明がザルであることも窪田さんは指摘されていましたよね。普通、保険や投資商品は、商品の説明義務や用いてはいけない表現について厳しい規制があります。JA共済は、なぜユルユルなのがまかり通っているのでしょうか?

窪田 例えば、ゆうちょも保険の販売で不適切販売が報じられています。ゆうちょもJAも地場に足を置いて地域の人と付き合っており、その馴れ合い、過度な信頼関係のもとに無茶な契約をしているという共通点があります。

――JAでは共済販売者に対する研修もかなり簡易で、専門知識を持っている人がほとんどいないそうですが、保険会社や金融機関勤務であれば資格をたくさん取らないといけませんよね。

窪田 一般の保険会社や金融機関は競合がいますから、専門知識にしろコンプライアンスにしろ、しっかりしないと負けてしまう。でも、JAは組合員との深い関係性を前提にしており、事実上、競合がないに等しい。管轄エリアを超えて事業を展開したり、組合員を獲得したりすることはできますが、実際にはお互いの縄張りを荒らさないように引き続きやっています。業績が悪くなっても潰れるのではなく、優良なJAが吸収合併する形で存続していく。ある種、守られているわけで、だからいい加減な営業でもまかり通ってしまうんですね。

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