サイゾーpremium  > 連載  > 友清哲のビールの怪人【28】/【本場仕込み】のビールが飲める“リビングルーム”

――すべてのビール党に捧ぐ、読むほどに酩酊する個性豊かな紳士録。

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有田川町は人口2万5000人強の小さな町。最近では首都圏をはじめ他の地域のビアバーで、ノムクラフトのビールを見かける機会が増えてきた。

 日本でビール造りに励む外国人ブルワーは少なくないが、有田みかんの産地として知られる和歌山県・有田川町でも、アメリカからやってきたブルワーが辣腕を振るっている。

 2019年に誕生した「NOM- CRAFT Brewing(ノムクラフトブリューイング)」は、ポートランド出身のベン・エムリックさんが有田川町の土地柄に着目し、現地の町おこし団体にビール事業を売り込んだことに端を発するマイクロブルワリーだ。

 ポートランドといえば、かつては工業化による環境汚染のため人口流出が止まらず、深刻な過疎化が懸念された街。ところが、官民一体の取り組みによって地域の魅力を底上げし、今では「全米で最も住みたい街」と言われるまでに至った中核都市である。多くのブルワリーが密集し、それが地域の再生の一助となったポートランドは、クラフトビールファンにとって聖地と言うべき場所柄。そんなポートランド生まれのベンさんが、日本でビール造りに取り組むことになったのはなぜだろう?

「もともとは交換留学生として日本を訪れたのが始まり。日本がすっかり気に入って、大学卒業後はしばらく、大阪で英会話スクールの講師をやっていました。そのうち、日本でも徐々にクラフトビールがはやりだしているのを感じ、当初は大阪でブルーパブをやれないかと模索していたんです。そんな矢先、梅田の百貨店で催されたポートランドフェアに有田川町が出店しているのを見つけ、こちらから声をかけました」

 有田川町は柑橘類の生産が盛んで、非常に水質に恵まれた地域であることから、「ポートランドに負けず劣らず、ビール造りにはうってつけの土地と直感した」とベンさんは言う。

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