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丸屋九兵衛の「バンギン・ホモ・サピエンス」【7】

【バンギン・ホモ・サピエンス】ドウェイン・ジョンソン――人類最強、聖林に君臨!

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――人類とは旅する動物である――あの著名人を生み出したファミリーツリーの紆余曲折、ホモ・サピエンスのクレイジージャーニーを追う!

ドウェイン・ジョンソン(Dwayne Johnson)

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(絵/濱口健)

北カリフォルニアのヘイワード生まれだが、母の一族とニュージーランド生活も経験。アメリカ内でもハワイ、テネシー、ペンシルベニアと転校続き。実は10代で逮捕経験多数、なんと手形詐欺まで! 大学時代を過ごしたマイアミを地元と呼ぶ。

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(絵/濱口健)

 今年9月2日、衝撃が地球を襲った。

 あのザ・ロックことドウェイン・ダグラス・ジョンソン(48歳)が、妻と2人の娘を含む家族全員で新型コロナウイルスに感染したことを公表したのだ! 「人類最強と謳われるロック様が!?」「ドウェイン・ジョンソンすらコロナには勝てないのか……」という諦観にも似た嘆息が世界各地で聞かれたという。

 とはいえ、そんな騒ぎから3週間後には、停電で機能停止した自宅ゲートを自ら破壊し、撮影現場に出勤したとのニュースが! やはり今でも最強なのだ。

 ドウェイン・ジョンソンの英語版ウィキペディアには〈Johnson is half-Black (African-American)〉とあるが、あまり正確ではない。彼の父はカナダ黒人だから。だが、まずは母方の系譜を辿ってみよう。

 日本を舞台にした迷作映画『007は二度死ぬ』を思い出してくれ。ショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドを味方と勘違いし、日本語で「大丈夫か」と声をかける敵組織のボディガードがいたはずだ。

 彼こそは“ハイ・チーフ”ことピーター・メイヴィア。NWA(もちろんナショナル・レスリング・アライアンスのほう)ハワイ地区の興行主としても活躍した、アメリカ領サモア生まれのサモア系アメリカ人プロレスラーだ。その妻“リア”ことオフィーリアもサモア系アメリカ人レスラーで、その間に生まれたのが娘アタ。このアタが恋した相手が父ピーターのタッグ・パートナー、ロッキー・ジョンソンというレスラーだ。レスラーの家族がどれだけ大変な思いをするかをよく知っていたピーターは当初、2人の交際を認めなかったらしいが。

 さて、そのロッキー・ジョンソンはブラック・ノヴァスコシアンである。この少数民族は、18世紀のアメリカ独立戦争時に大英帝国側で戦った黒人兵士――帝国側が自由を保証したため、独立派の農園主(奴隷所有者)から逃げて戦争に参加した奴隷――の子孫だ。もちろん戦争は独立派が勝利したが、大英帝国は約束を守り、彼ら黒人兵を自由人として北米植民地(現カナダ)内の土地に移住させた。それが東海岸のケープブレトン島を中心としたノヴァスコシア州であり、のちにカナダの一部として平和裏にUKから独立する。

 と、そんな数奇な運命の一族、複雑な出自の持ち主であるロッキー・ジョンソンが、わかりやすく「ソウルマン」とか「エボニー・ダイアモンド」と形容されてしまうあたりがプロレスである……が、とにかく、このロッキー・ジョンソンとアタ・メイヴィアの間に生まれたのが、ロック様ことドウェイン・ジョンソンだ。

 父はレスラー、母もプロレス一家出身。つまりプロレス界のサラブレッドなのだが、ドウェインが目指していたのはアメリカン・フットボール、NFLだ。それがアメリカではスポーツの中のスポーツだから。高校時代から名選手として知られ、スカウトされてマイアミ大学に進む。しかしNFLには指名されずカナディアン・フットボール(ほぼアメフト)のカルガリー・スタンピーダーズへ。だが、そこでも2カ月で解雇されたことで運命を悟ったのか、ようやくプロレス入りしたドウェイン。もっとも、父ロッキーは反対したらしいが。

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映画『ジュマンジ/ネクスト・レベル』の記者会見にて。プロレスラー時代はもちろん、俳優に転向してからも常にネクスト・レベルの男、それがドウェイン“ザ・ロック”ジョンソン。(写真/Getty Images)

 96年、そんな父ロッキー・ジョンソンと祖父ピーター・メイヴィアという2人のレジェンドの名前をかけ合わせた〈ロッキー・メイヴィア〉名義でWWEデビュー。「正義の味方の好青年」キャラクターとして会社から激推しされるが、プロレス・ファンの目は厳しく、ブーイングの嵐にさらされる毎日だった。

 転機が訪れたのは翌97年夏。独自の造語を多用した罵詈雑言マイク・パフォーマンスが得意な悪役〈ザ・ロック〉に変身! ネイション・オブ・イスラムを模した黒人レスラー軍団「ネイション・オブ・ドミネイション」に加わり、悪役なのに超絶人気者となったのだ。

 その勢いで99年にテレビドラマ『ザット70sショー』で初演技を経験。自分の父ロッキー・ジョンソン役だ。翌年、『スター・トレック:ヴォイジャー』で異星人格闘家を演じたのに続き、01年の映画『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』にゲスト出演、翌02年にはスピンオフ映画『スコーピオン・キング』でアッカドの暗殺者転じてファラオとなる主人公を演じてみせた。

 こうして03年あたりにリングからフェイドアウトしていったザ・ロックは俳優に本格転身。演技派を目指してか体を絞っていた時期もあるが、ヴィン・ディーゼルと予想外の禿頭筋肉対決を見せた11年の『ワイルド・スピード MEGA MAX』あたりから吹っ切れたらしく、レスラー時代より巨大化! 筋肉を維持するために1日7食、タラや鶏肉を大量摂取することも話題になったが、とにかく「もっともセクシーな男」「もっとも稼ぐ俳優」としてハリウッドの頂点に立つ。リングでのしゃべり上手が伊達ではなかったことを証明したのだ。

 面白いのは、彼の「ひとり多民族性」である。WWEでザ・ロックとして人気を博した頃は、「ネイション・オブ・ドミネイション」の一員だったわけで、黒人カテゴリーだ。だが最近の散発的なWWE登場ではローマン・レインズやジ・ウーソズといった母方の親戚であるサモア系レスラーたちと絡むから、サモアンとしてのヘリテッジが押し出されている。

 彼自身にとって、どちらが自分の本性なのか? もちろん両方だ。アフリカ系でありサモア系である、そんな二重性や多重性が当たり前に認められ、歓迎されるべき時代のヒーロー、それがロック様ことドウェイン・ジョンソンなのだから。

(絵/濱口健)

丸屋九兵衛
ストレイト・アウタ・伏見稲荷な元・音楽誌編集者にして「万物評論家」。まだまだ続くコロナウイルス禍の中、オンライン・イベントが揺るぎなきメイン業務に。11月は【人類文化史月間!】と称してイベント連発予定、ロック様に絡めた太平洋諸島系トークを含む。詳細はツイッター〈@QB_MARUYA〉にて。

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