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第1特集
YouTuberが教育界に与える衝撃【1】

学校教師や塾講師の“敵”なのか――オリラジ中田が授業を代行? 教育系YouTuberの脅威

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――今年に入って、「中田敦彦のYouTube大学」というチャンネルが多くの誤りを指摘され、炎上することがあった。しかし、彼は今や人気YouTuberであることは疑いなく、ほかにも数々の“教育系YouTuber”と呼ばれる者たちが支持を集める。では、こうした存在は学校教師や塾・予備校講師にとって脅威なのか――。

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「中田敦彦のYouTube大学」のチャンネル登録者数は204万人(4月初頭時点)。この「【世界史(8)】イギリスの裏切りの果てでガンディーが愛を叫ぶ!  近代の中東とインド【2019版】」は“間違い”を多々指摘された動画のひとつ。最近は「世界を変えた感染症の歴史」といった動画もアップする。

 オリエンタルラジオ・中田敦彦が歴史や政治、社会情勢などを解説するチャンネル「中田敦彦のYouTube大学」。その動画は平均数十万回、多いものだと100万~200万回も再生されている一方、歴史の動画をはじめとして間違いだらけだと各方面から指摘され、炎上した事件は記憶に新しい。

 中田以外にも、左ページのような“教育系YouTuber”が人気を集めている。例えば、「予備校のノリで学ぶ『大学の数学・物理』」チャンネルのヨビノリたくみ、世界史・日本史を教える「Historia Mundi」チャンネルの山﨑圭一はYouTube上で人気なだけでなく、出版した本もベストセラーになっている。

 2018年2月2日にAbemaTVの番組『AbemaPrime』に出演した教育ジャーナリストの後藤健夫氏は、教育系YouTuberの台頭により「予備校は厳しくなっていくのでは」とまで語っていた。では実際のところ、学校教師や塾・予備校の講師、学習参考書に携わっている人たちは、教育系YouTuberについてどう見ているのだろうか――。

教師が学校で講義する必要はなくなるのか?

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たくみ著『難しい数式はまったくわかりませんが、微分積分を教えてください!』、山﨑圭一著『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた』(共にSBクリエイティブ)はベストセラーになった。

 まず今回、複数の中学・高校教師に取材した印象では、「間違いを教えるのでなければ、学校教育を補完してくれるものになりうるから、特に気にしていない」というのが基本線だった。そもそも現場教師は忙しいため、自分で積極的に見る人間は少数派のようだ。もちろん、数学教師がヨビノリたくみをチェックしたり、大学では日本史を専攻したのに世界史を教えることになった教師が教科書準拠でわかりやすい「Historia Mundi」を参考にしたりするケースもあるにはある。ただし、視聴者需要が高いだろう英語の教育系YouTuberに関しては、英語教師たちから次のような反応があった。

「発音の参考にはなるでしょうし、身近さがあって『自分でもできそう』と見る側は思うのかもしれません。でも、『学校英語は使えない』とか、教科書や参考書を揶揄しながら『ネイティブはこんなこと言わない』とかマウンティングをYouTuberたちはしがちなので、教師側のウケは良くない」(高校教師A氏)

「TOEIC対策や中学英語に関しては人気チャンネルがありますが、高校英語については教科書準拠のものや、受験英語に特化したものを配信する有力なYouTuberはいない」(高校教師B氏)

 ちなみに、最近の参考書や問題集は、購入すると解説動画が無料で見られるものが少なくない。また、予備校では教育系YouTuberが台頭するはるか前からサテライト講義(動画授業)が存在しており、スマートフォン普及以降はリクルートが提供する授業動画サービス「スタディサプリ」などがすでにあった。そのため、“無料”という点を除けば、動画で講義を配信することには教師たちは特に目新しさを感じていないようだった。

 岐阜県の公立高校で地理・歴史科目を担当する教師であり、共著に『教師のブラック残業』(学陽書房)がある斉藤ひでみ氏も多くの教師と同様、熱心に教育系YouTuberを追っているわけではないという。そこで、前述のような人気のチャンネルをいくつか視聴してもらったところ、斉藤氏は次のように話した。

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