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第1特集
国家防衛のためのサイバーセキュリティ【2】

中国共産党が抗議!――サイバー戦争を描いた“リアル”なSF小説

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『中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す』(二見文庫)

 サイバーセキュリティ業界では、テロリストによる電力送電線への攻撃でヨーロッパがパニックに陥る様子を描いたドイツの小説『ブラックアウト』(角川文庫)など、実際に起こり得るかもしれない非常事態を描いた小説作品が時折話題になる。サイバーセキュリティの専門家としても知られるアメリカの国際政治学者、P・W・シンガーらが2015年に著した『中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す』(二見文庫)も、そんな非常事態を描いた小説として注目を浴びた一冊だ。

 物語の舞台は近未来。共産党支配からより少数独裁的な新体制に変わった中国は、ロシアと共同戦線を結びながら、アメリカに攻撃を仕掛けてくる。その先制攻撃として用いられたのが、中国によるサイバー攻撃だった。アメリカ軍のネットワーク機器や兵器に使用されている中国製のマイクロチップがマルウェアに汚染され、突如、機能不全に陥ってしまうのだが、情報インフラの脆弱性を狙ったその手口は、かなりのリアリティと説得力をもって描かれている。そして、ハイテク機器の使用が不可能となったことで、中国軍に押される一方だったアメリカを救うのが、ハッキングの影響を受けない旧式艦隊、通称「幽霊艦隊(ゴースト・フリート)」だったという展開を見せる。

 ちなみに、本書の作者と版元には出版時、中国当局から激しい抗議が寄せられたとか。ただし、それは“あらすじ”に関するクレームというよりも、むしろ“共産党支配が崩れた後の中国”という、そもそもの設定自体に対するものだったようである。

SNSを利用した操作の手口――トランプ当選を導いた英企業ドキュメンタリー

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『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』より。

 この7月にNetflixで配信され、話題を呼んでいるのが『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』というドキュメンタリー映画。16年のアメリカの大統領選挙にロシアが関与していた可能性については前記事でも触れたが、トランプを勝利に導いた要因は、それだけではなかった。本作で描かれるのは、その選挙戦のネット戦略において重要な役割を果たしたとされるイギリスのデータ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカ(以下、CA)の実態だ。

 内部告発者2名の証言をもとに描かれる、CA社の手口。それは、フェイスブックから不正入手した個人情報を分析し、浮動層と呼ばれる人々をターゲティング、彼らの感情に激しく訴えかけるような過激なフェイクニュースをそのタイムラインに送り込むことだった。ちなみにCA社は、同年にイギリスで行われたEU離脱の是非を問う国民投票にも、同様の手口によって深く関与し、離脱に導いた疑いがあるという。さらにはロシアとの接点も……。

 人々の緩い“つながり”を促すと思われていたSNSが、むしろ取り返しのつかないほど深い“分断”を生み出すという皮肉な現実。個人情報を抜き取ったり、他国の情報インフラを混乱に陥れたりするだけでなく、その国に住む人々の“考え方”そのものを操作し、内部から“分断”を促していくことが可能であるという、現代社会の姿を描き出した必見のドキュメンタリー映画である。

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