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クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第54回

【クロサカタツヤ×実積寿也】通信の理想と現実の狭間で揺れる「ネットワーク中立性」ってなんだ?

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●インターネットの利用者数及び人口普及率の推移
出典:総務省「通信利用動向調査」

――KDDIがNetflixを割安で見られる料金プランを発表した途端、いきなり「ネット中立性に反してる」とのコメント多数。利用者にとってはお財布に厳しい毎月の通信料金が、多少なりとも節約できて大歓迎なのに、どうしてKDDIが批判されるのかさっぱり、という人も多いはず。そういえばLINEモバイルの時も「ネット中立性」が話題になったけど、改めてどういう理屈なのか、この分野に日本で一番詳しい大学教授に聞いてみた。

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一部では「夢のコラボ」などともうたわれるほど、注目を集めているが……。

クロサカ このところ通信にかかわる分野で法律に関する議論が沸き起こっています。今月はKDDIが、スマホでNetflixを視聴した際に通信料金が割安になるプランを発表し、にわかに「ネットワーク中立性」に関する注目が集めています。

 これについては、以前もLINEモバイルとゼロレーティングの関係について触れましたが、常に議論となりながら、その概念の理解はかなり難しいのではないでしょうか。そこで、中央大学の実積寿也教授にお越しいただき、そもそもネットワーク中立性とはなんぞや、というあたりから伺いたいと思います。

実積 簡単に言えば「通信会社がすべてのトラフィックをできるだけ平等に扱いましょう」という意味です。

クロサカ 例えば、ISPが、あるサービスのデータは優先的に送って、それ以外のサービスのデータは後回しにすることは公平性の面で中立性に反している、という理屈ですね。

実積 この問題が特に複雑なのは、インターネットはその技術の性質上、データの中身やアプリに応じて適切な制御を加えないと安定して通信できない。つまり、技術的にはネットワーク中立性の完全な実現は難しいし、そもそもそういうふうにインターネットはつくられていないということなんです。

クロサカ 例えば、電子メールは1秒やそこら到着が遅れたところで利用者は気にしないけど、通話が1秒途切れたら、気にする利用者は多い。つまり、両方のデータをまったく平等に扱うことは、消費者にとってかえってマイナスになる。

実積 だから、通信事業者はトラフィックの中身に応じて、その取扱いを最適化する必要がある。一方で、それを強烈に支持する人たちは「ネットワーク中立性によってインターネットを本来の形に戻すべきだ」と主張する。でも、その「本来の形」っていうのは、そもそも最初から存在していなかった。そういう世界を理想として求める人たちがいるのは理解できますが、それはあくまで理想論だということは明確にしないと、話が混乱する。

クロサカ 「通信の中身を見るな」という点でネットワーク中立性と通信の秘密は似ていますが、両者はどんな関連があるんでしょうか。

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