サイゾーpremium  > 特集  > 社会問題  > デジタル時代の写真学【1】/【学問としての写真】最新潮流

――写真の教育については、写真学科やそれに類する学科が複数の大学にある一方、専門学校も数多く存在。だが、著名な写真家の中には、そのような学校で教育を受けていない人もいる。写真を学校で学ぶ意味は? 大学と専門学校の違いは? 動画の発達やインスタグラムの人気の影響は? 写真教育の現状を、有識者の声をもとに見ていこう。

1806_syashingaku_200.jpg『(簡易版カラーチャート付) さぁ、写真をはじめよう 写真の教科書』(インプレス)

 音楽や映画など他のアートの分野と比較すると、写真家には学校(大学や専門学校)で写真の教育を受けた人が多い……という印象がある。代表的な学校といえるのは、日芸(日本大学芸術学部)の写真学科や、写真専門学校が前身の東京工芸大学の芸術学部写真学科など。専門学校では、木村伊兵衛写真賞の受賞者を6人輩出した東京綜合写真専門学校などが有名だ。

 では、専門学校と大学では教育内容はどのように違うのだろうか。写真史研究・写真批評を行い、東京工芸大の写真学科や東京綜合写真専門学校で非常勤講師を務める調文明氏はこう話す。

「まず大きく違うのは、やはり教育を行う期間。大学が4年制なのに対し、専門学校は基本的に2~3年。そのため大学のほうが幅広い知識や技術をじっくり学ぶことができる……と言えます。また授業内容で大きく違うのは、写真以外の科目の充実度。専門学校にも映画や現代美術、音楽などの授業はありますが、やはり数は限られてくる。一方で写真学科のある大学では、同じ学部内に映画や美術関係の学科があることも多く、自由に数多くの授業を履修可能です」

 東京工芸大学教授の吉田成氏も、大学の写真教育の利点を次のように話す。

「一般教養や芸術・美術関連の科目も幅広く学べること、写真制作・研究の背骨となる技術や知識をじっくり身に付けられることは、大学の写真学科の特長だと思います。また、私が担当している古典印画技法の授業のように、古い時代の写真の技法を実践しつつ研究し、それを作品制作に活かせるのも大学の利点。授業においては、古い技法とデジタルの技術を組み合わせることもしており、そこから新しい表現を生み出すこともできるでしょう」

 アカデミックに写真と向き合いたい人には、やはり大学が向いているわけだ。一方、専門学校のメリットは、短期間で卒業し、早い段階でプロのカメラマンになれる可能性がある点。卒業後はスタジオに勤務して、数年後に独立を目指す……というのが典型的なルートのようだ。

「なお写真の仕事をする人でも、『カメラマン』の肩書を名乗るタイプの人と、『写真家』と名乗る人では活動内容が大きく異なります。カメラマンは企業広告や雑誌などの依頼を受けて撮影し、クライアントからギャランティを受け取る仕事が中心です。一方で写真家と名乗る人は、自分で撮りたいものを撮る。それを作品として発表して売っていくことがメインになります」(調氏)

 フリーのフォトキュレーターとして活動し、日本大学芸術学部写真学科で非常勤講師を務める小高美穂氏もこう話す。

「『純粋に写真の技術だけを学びたい』という人なら、専門学校を選ぶ人も多いでしょうし、作家を目指す人であれば、専門学校を卒業してスタジオへ進む……というキャリアは不要な場合もあるでしょう。写真の勉強をしたい人の中には、卒業後に写真家になるだけではなく、写真に関連する会社に就職する学生や、写真以外の分野に進む学生もいます。さまざまなニーズに応じて、写真を学ぶ場所に複数の選択肢があるのはいいことだと思います」

 なお、カメラマン以外の写真の職業に就きたい場合は、大卒者が有利となる。

「東京工芸大学の写真学科でも、広告代理店に就職する卒業生は一定数いますし、広告代理店にはカメラマンのほか、レタッチャーやプロデューサーとしての求人もあります。また新聞社に就職する人や、ホテルの写真室や美術館、博物館からの人材募集もあります」(吉田氏)

 大学で写真について学んだ学生には、今も高い需要があるというわけだ。

「誰でも写真が簡単に撮れる時代になっても、本当にクオリティの高い写真をつくるには、レタッチ等も含めてやはり一定の知識や技術が必要です。また動画の需要が増えつつある中でも、『静止画の勉強をした人は動画もうまい』と言われていますし、広告の分野でも、スチールカメラマンが動画を撮影することが増えている。ライティング等もひとりで行えるスチールの写真家は、撮影のコストダウンを図りたい企業からもありがたい存在なのだと思います」(同)

 18歳人口の減少が続き、いわゆる2018年問題等も取り沙汰されているが、「写真学科の受験者数は急激に減っている印象はない」(同)とのこと。

「写真という表現には体力があるんだな、ということは、この5年ほどで私も再認識しています」(同)

デジタル化で変わる写真教育の現状

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