サイゾーpremium  > 連載  > 学者・萱野稔人の"超"哲学入門  >  哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第47回/エルネスト・ルナンの【国民とは何か】を読む
連載
哲学者・萱野稔人の「"超"哲学入門」第47回

【哲学入門】国家のメンバーシップをめぐる問いに対する、ナショナリズムという一つの解

+お気に入りに追加
1801_P102-103_kayano1801_520.jpg
(写真/永峰拓也)

『国民とは何か』

エルネスト・ルナンほか(鵜飼哲ほか/訳)/インスクリプト/3500円+税個人の主体的意志が国民を形成するという定義を唱えたルナンの講演「国民とは何か」邦訳のほか、ドイツの哲学者フィヒテによる国民論「ドイツ国民に告ぐ」、バリバール、鵜飼哲らの論考を収録。


『国民とは何か』より引用
国民とは、したがって、人々が過去においてなし、今後もなおなす用意のある犠牲の感情によって構成された大いなる連帯心なのです。それは過去を前提はします。だがそれは、一つの確かな事実によって現在のうちに要約されるものです。それは明確に表明された共同生活を続行しようとする合意であり、欲望です。個人の存在が生命の絶えざる肯定であると同じく、国民の存在は(この隠喩をお許しください)日々の人民投票 〔un plébiscite de tous les jours〕 なのです。

 前回から引き続き、今回もエルネスト・ルナン「国民とは何か」を取り上げましょう。

 かつて日本の哲学・思想界でナショナリズム批判が最重要テーマとして考えられていたとき(90年代後半~00年代前半)、このルナン「国民とは何か」はナショナリズム思想の古典だということで槍玉に挙げられていました。しかし、実際にこのテキストを読んでみると、どうもルナンを批判していた日本の反ナショナリズム論のほうがおかしかったのではないか、ということがみえてきます。

 ルナンのテキストが含意していることを一言でいえば、ナショナリズムとは国家のメンバーシップをめぐる一つの解である、ということです。

 どういうことでしょうか。まず、国家は必然的にメンバーシップをめぐる問いを提起します。つまり「誰が国家のメンバーなのか」という問いですね。日本でいえば「誰が日本国のメンバーなのか」という問いです。

 この問いに対してはただちに「日本国民が日本国のメンバーである」という答えがだされるでしょう。ただ、ここで考えておきたいのは、なぜ国家はこうしたメンバーシップをめぐる問いを必然的に提起するのか、という理由です。その理由は、国家がそもそも集団的な意思決定をおこなう組織である、ということからきています。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2020年3月号

バンクシー&現代(危)アート

バンクシー&現代(危)アート
    • 【バンクシー】の矛先と日本
    • バンクシーと【パルコ】の関係
    • 社会を斬る【次世代アーティスト】
    • 【石川真澄×くっきー!】異端美術対談
    • レン・ハン自殺後の【中国写真】
    • 【舐達麻】が吐くラップとタトゥー
    • 【刀剣乱舞】狂騒曲
    • 芸術なのか?【AIアート】の真贋
    • AI推進国【韓国】のAIアート
    • 【高山明×中島岳史】「不自由展」圧力と希望
    • あいトリをめぐる【政治家たち】
    • 【書肆ゲンシシャ】が選ぶ(奇)写真集
    • 【天皇肖像】の含意とアート群
    • 【美術展ビジネス】に群がる既得権益
    • 現代アートの今がわかる書籍群

池田ショコラ、甘くて苦いオトナグラビア

池田ショコラ、甘くて苦いオトナグラビア
    • 【池田ショコラ】大人に脱皮

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 表紙/都丸紗也華「このへんで跳ねたいんです」
    • 【ぴーぴる】天真爛漫娘の現代っ子放談
    • 必ず最後に【杏】は勝つ
    • 【ベビーテック】の伝道師が語る普及の道
    • 【萱野稔人】"殴り合い"はなぜ人間的なのか
    • 【イズム】が蘇る2020年の音頭
    • 米発【ミートテック】が狙う中国人の胃袋
    • 【丸屋九兵衛】アンバーを語る
    • 【町山智浩】「スキャンダル」TV局トップのセクハラを暴け!
    • 世界の左派が掲げる【反緊縮経済政策】
    • 小原真史の「写真時評」
    • 笹 公人「念力事報」/令和のマスク騒動
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/「So kakkoii 宇宙」小沢健二の鎮魂歌
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 震災をきっかけに浸透した「んだ」のビール
    • 更科修一郎/幽霊、雑誌もまた老いて死んでいく。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』