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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第111回

『フェンス』――デンゼル・ワシントンが築いた裏庭の“壁”を人種は超えられるのか?

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『フェンス』

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1950年代、かつて黒人リーグの野球選手だったトロイは、ゴミ回収業者として働いていた。メジャーに行けなかったのは肌の色のせい。トロイは出自を嘆き、息子にもそう教えていた。だが時代は変わり、スポーツ界では黒人の活躍が目立ってくる。そんなある日、息子のコリイはアメフトでの大学推薦を得るが……。トニー賞4部門を獲得した同作の映画化。

監督・主演:デンゼル・ワシントン/出演:ヴィオラ・ディヴィス、ミケルティ・ウィリアムソンほか。日本公開未定。


 1957年、ピッツバーグ。54歳になるトロイ・マクソン(デンゼル・ワシントン)は南部生まれのアフリカ系。清掃局員として18年間、ゴミの回収を続けて、小さいながらも自分の家を持つことができた。その裏庭を囲む柵(フェンス)を作ろうとするのだが……。

 デンゼル・ワシントン監督作『フェンス』は2時間以上ある映画だが、この裏庭からほとんど出ない。原作が舞台劇だから。黒人作家オーガスト・ウィルソンが83年に発表した戯曲を読んだデンゼルは、まずブロードウェイでこれを上演し、その時の妻役のヴィオラ・ディヴィスと共に映画化した。そして、アカデミー賞の作品賞、脚色賞、主演男優賞、助演女優賞にノミネートされた。

 50代の中年男が、裏庭で柵を作るだけの映画が?

 いやいや、実はこの柵には、黒人の、アメリカの、いや、すべての人々の“業”が象徴されている。

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