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第1特集
【菅野裕子×田尾下哲】音楽と建築を語り尽くす

“良いホール”の条件って、何? 耳で聞く! 建築の“旋律”論――識者が語る建築と音楽の関係

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――J-POPのコンサートを楽しむには、どのような空間が最適で、オペラを十二分に味わうには、どんな空間が適宜とされるのか?離れているようで、実は密接な関係にあった“建築と音楽”の歴史を振り返りながら、両者の共通項を解く。

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東京文化会館
1961年に竣工。「東京都開都500年祭」の記念事業として開館し、建築家・前川國男の代表建築として知られている。海外の著名な歌劇公演が開催される場所として世界的な建物は、昨年改築を施し、リニューアルオープンしたばかり。
(写真/黒瀬康之)

 建築と音楽――一見、どのような共通性を持つのか首を傾げてしまいそうな2つの言葉だが、はるか昔、数世紀も前から、建築と音楽は同じ視点から語られることが多く、また共通する項目がいろいろと指摘されてきた。例えば1436年、フィレンツェの大聖堂「サンタ・マリア・デル・フィオーレ」の献堂式にて発表された記念碑的楽曲「ばらの花が先ごろ」の小節の長さと、その大聖堂の長さや高さには〈6、4、2、3〉といった共通する整数が隠されていたといわれている。

 果たして、建築と音楽の関係性は、これまでの建造物にどのような影響をもたらしてきたのか。また、“音”にとって良いホールと悪いホールの差異とは、いかなるものなのか。

 五十嵐太郎氏との共著『建築と音楽』の著者で、横浜国立大学特別研究教員の菅野裕子氏と、新国立劇場のオペラチーフ演出スタッフを務めた田尾下哲氏を招き、音楽的見地から考察する建築物の構造性、そして建築と音楽の親和性について聞いてみたい。

――菅野さんは、横浜国立大学工学部建設学科の卒業論文で「建築と音楽」をテーマにされていましたが、そもそも両者の結びつきを意識したきっかけはなんだったのでしょうか?

菅野 高校生の頃に月に一度、日本フィルハーモニー交響楽団のトップだった新松敬久先生にオーボエのレッスンを受けていたんです。オーボエは音色が命なので、先生の音色に近づけようと試行錯誤するんですが、時間がたつと先生が奏でていた音の記憶がおぼろげになってしまうんです。録音では生音の解像度、情報量は再現できないので、結局は次のレッスンで思い出すという繰り返しが続きました。それが悔しかったので、頭の中で“音を形に変換する”ことを思いついたんです。「出だしの音は、カーブで丸い」「後半に行くに連れて、音がだんだん細くなる」「ファの音は表面がツルツルしている」とか。それが、音というのは形やテクスチャーに置き換えられる、すなわち、形を持つ建築にも通じるなと思うようになったことがきっかけでした。田尾下さんは、なぜ建築学科で学ぼうと?

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【1】オペラ『蝶々夫人』あいちトリエンナーレ2013プロデュース オペラ
長崎県を舞台にした没落藩士令嬢の蝶々と、アメリカ海軍士官ピンカートンとの恋愛劇を描いた作品。田尾下氏が演出を担当した、まさに「音楽は動く建築」を形にしたかのような舞台である。

田尾下 海外で舞台美術をやっている人は、建築を学ぶことも多かったからです。大学では住宅デザインなどの課題もやっていましたが、「舞台空間をどうやって表すか?」ということをずっと考えていました。そこで卒業論文では、ジョン・ルーサー・ロングの短編小説を基に制作されたオペラ『蝶々夫人』【1】をテーマにしました。長崎県が舞台になっているので、舞台美術の研究をしつつ、日本建築の意匠も勉強できるなと。海外の上演ではバウハウス【編註:美術と建築をメインに総合的教育を学ぶ学校】のモホリ=ナギが舞台デザインをしていたりして、とても興味深かったです。

菅野 日本と西洋、伝統的な音楽の違いには、建築も大きく関係してきますよね。

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