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サイゾー×プラネッツ『月刊カルチャー時評』VOL.31

『妖怪ウォッチ』もはや水木しげる超え!? 現代風俗と一体化した節操なさの魅力

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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×真実一郎[現役サラリーマン]×石岡良治[批評家]

2014年ヒット番付等にも堂々の上位ランクインを果たし、『アナと雪の女王』と並んで今年社会現象化したアニメ『妖怪ウォッチ』。子ども向けということなかれ、大人にも大好評を博すその実力を徹底分析!

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スティーブ・ジョブズを思わせるサメ型妖怪スティーブ・ジョーズ(画像上)と、剣で貫かれて何かに目覚めるロボニャン。

宇野 今年は、黄色いネズミ(=ピカチュウ)が赤いネコ(=ジバニャン)に食われた年として記憶されるんじゃないかというくらい、『妖怪ウォッチ』の勢いがすごかった。

真実 ここまでビッグなコンテンツになるとは、予測されていなかったんじゃないでしょうか。僕には小学生の子どもがいるんですけど、子どもたちを見ていて思うのが、ほかのコンテンツと比べて『妖怪ウォッチ』はメジャーになるスピードが速い。『妖怪ウォッチ』のマンガ版が載っている「コロコロコミック」(小学館)も、それまでは60万部くらいだったのが、付録に妖怪メダルをつけた途端130万部が完売になったそうで、今でも安定して100万部は売れているようです。

宇野 アウトドア雑誌でも親子向けのグッズ付録を付けたり、セブン-イレブンやピザーラなど、企業コラボの節操なさもすごい。

真実 ヒットしているコンテンツって、普通は売れれば売れるほどタイアップ先選びに慎重になるんですけど、『妖怪ウォッチ』はなんでもありですよね。経営不振のマクドナルドが、妖怪ウォッチとコラボしたことでハッピーセットの売り上げが3倍くらいになったらしく、「神風が吹いた」と言われています【1】。「hulu」のような動画配信サイトも、どこもこぞって『妖怪ウォッチ』の配信を売りにしている。これはもう、日本経済を動かしているといえるかもしれません。

宇野 今年発売された3DSソフト『妖怪ウォッチ2 元祖/本家』も、累計300万本を超えた。玩具の妖怪ウォッチも品薄が続いています。もはや国民的タイトルになっているにもかかわらず、特にアニメ版は、あそこまで好き勝手にやっていいのかと思ってしまう。21世紀の夕方にこういうアニメが放送されているって、奇跡的なことに思える。ゲームも工夫されているとは思うけど、『妖怪ウォッチ』の直接のブレイクのきっかけはアニメでしょう。徹底的に俗悪に風俗と一体化するような形で、キャラクターを新しく作っている。同じ幼年向けコンテンツでゲーム原作の『ポケモン』と比べても、アナーキーさが違う。むしろ今の『ポケモン』アニメは、上品にまとめようとしていてつまらない。

石岡 ジバニャンの可愛さを盾にして、好き放題やっている感じがいいですよね。『ポケモン』も初期は“ユンゲラー”【2】みたいなパロディに代表されるように、黒い要素が満載だったけど、今はそうではなくなっている。『妖怪ウォッチ』にはまだ、「子どもに見せたくない感じ」があります。あのパロディの節操のなさは異常でしょう。39話がネット配信休止になった時も「ピンクレディーのパロディが原因じゃないか」とかいろいろ理由が推測されてましたが、「ほかの話のほうがヤバイだろ!」と思いました(笑)。
宇野 23話でロボニャンがアナル開発される回【3】や、27話のスティーブ・ジョブズをパロったスティーブ・ジョーズの回【4】なんか、特にひどかった(笑)。ジョブズなんて、まだ亡くなって3年くらいしか経っていないのに、容赦なくネタにしてしまっている。しかもあの回って、玩具の「妖怪ウォッチ零式」の発売直前で、視聴者に対して「零式もiPhoneみたいに並んで買えよ」と暗に言っているわけで、悪意がすごい。

真実 昔の『飛べ!孫悟空』【5】的なパロディというか、『サウスパーク』的な風刺というか、サブカルチャー的な過去のネタがめちゃくちゃ豊富ですからね。石岡さんが「子どもに見せたくない感じ」とおっしゃいましたが、『妖怪ウォッチ』のあのブラックさは、教育上はよろしくないかもしれないけど、親も一緒に観ていて楽しめてしまう。

宇野 『サウスパーク』は社会風刺としてのパロディだけど、『妖怪ウォッチ』にはそれすらない。同じ幼年向けアニメの『ケロロ軍曹』は大人のオタクの想像の範囲内、安全圏でパロディをやっているけど、『妖怪ウォッチ』は原作に配慮がないというか、ある種、殺伐としているのが面白い。もちろん、幼年向け作品の中でパロディというのは昔からあって、『ドラえもん』だって、ミニ四駆やガンダムが流行ればそれを取り入れたエピソードを出していた。けれど、それは児童誌で連載しているから流行を追わなければならないということであって、『妖怪ウォッチ』のあの節操のなさとは全然違う。

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