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サイゾー×プラネッツ『月刊カルチャー時評』VOL.32

『ごめんね青春!』 今『木更津キャッツアイ』を繰り返す理由とは? クドカン新作のつまずき

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批評家・宇野常寛が主宰するインディーズ・カルチャー誌「PLANETS」とサイゾーによる、カルチャー批評対談──。

宇野常寛[批評家]×中川大地[文筆家/編集者]

『あまちゃん』以来の書きおろしながら、平均視聴率7.7%という低空飛行が驚きを与えた宮藤官九郎の新作。もともと宮藤作品は、内容の評価のわりに数字はついてこないと言われていたが、今回は内容に関しても、首をひねる部分があるようだ。その物足りなさはどこから来るのか?

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00年代前半のドラマのひとつの達成であった『木更津キャッツアイ』。クドカンはいまだにこの地点から逃れられずにいるのだろうか?

宇野 「つまらないわけじゃないんだよなぁ」という感想ですね。宮藤官九郎(以下、クドカン)&磯山プロデューサー【1】コンビのドラマは、長瀬智也くんと一緒に年を取ってきたところがあるわけじゃないですか。思春期の終わりに直面している『池袋ウエストゲートパーク』(00年~)、大人になって地に足をつけた共同体や家族的なものと向き合わないとやっていけないというのが『タイガー&ドラゴン』(05年)で、大人になりきった後にホモソーシャル空間でどう生きていくかというのが『うぬぼれ刑事』(10年)だった。その流れの中で一番重要な作品がやはり『木更津キャッツアイ』(02~06年)ですよね。これはまさに男の子のモラトリアムとその終わりの話で、今でいう「マイルドヤンキー」的な、部活動の延長線上にあるような同世代のホモソーシャルに依存したまま年を取って死んでいく、というモデルを提示したわけで、これはやはり決定的に新しかった。その後のクドカンはむしろ、『木更津キャッツアイ』的なものを自分で信じられなくて試行錯誤していったところもあると思うんですよね。

 磯山ドラマで培ったものを、80年代以降の消費社会の総括に応用して大成功を収めたのが『あまちゃん』(13年)だったと思うんです。そして今回クドカンがTBSに帰ってきたわけだけど、今度は長瀬くんより5歳若い30歳の錦戸くんを主人公にして、もう一回青春との決別の話をやった。『木更津〜』シリーズでケリをつけたはずだったところに、戻ってきてしまった。もちろん、あれから10年くらい経っていて、相応のアップデートは随所に見え隠れしていたんだけど、全体的には単ににぎやかな楽しい話を無難に描いて終わってしまったように思うんです。もちろん、それはそれでいいんだけど、なぜ今この作品を描く必要があったのか、よくわからないんですよね。

中川 「先に進めなかったな」という感想は、僕も同感。はじめは、すごく期待感があった。基本的にクドカンが得意としていたのは、『木更津~』以降の、ホモソーシャル的なコミュニティで異性愛を絶対視しない幸福像を描くことだったわけだけど、だんだん世の中がそこに追いついてきて、2014年に至っては『アナと雪の女王』で「ソフト百合な女子バディもの最強!」になりましたよね。で、これに対して男女共にホモソーシャルな世界観が広がってきた中で、今度は女子高と男子校の合併話を通じて2つのホモソーシャリティがぶつかると、どのように軋轢を起こし融和するかのプロセスを描くという、そのコンセプト性はすごく刺激的でした。実際、最初の2~3話くらいまではそれがいきいきと描かれていてワクワク観てました。最近ネットで神経質になりがちな性愛にまつわるジェンダー問題も相当先回りして取り込んだ上で、「そうはいっても一緒にやっていかないといけないよね」という描き方は非常に巧みだった。だけど、その葛藤が解消されてからドラマがなくなってしまった。

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