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哲学者・萱野稔人の"超"哲学入門 第8回

法と権利は国家がうまれると同時に発生するものである

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(写真/永峰拓也)

『千のプラトー 資本主義と分裂症』

ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ(宇野邦一、豊崎光一訳)/河出文庫/上中下いずれも1296円(税込)
17世紀イギリスの政治思想を代表する哲学者ロックの主著。フィルマーの王権神授説を否定し、政治的統治の起源を所有権を守るための社会契約によるものと主張。アメリカ独立宣言、フランス革命にも影響を与えた。

 前々回、前回と、これまで2回にわたって所有権はどのように成立するのかという問題を考えてきました。ホッブズとロックはともに、国家はどのようになりたつのかを社会契約論で説明しながらも、所有権の成立については正反対のことを主張しています。

 簡単に振り返っておきましょう。

 ホッブズは国家の成立以前に所有権が発生することはないと考えました。たとえば、国家がまだない状態で、私がどこかに肥沃な土地を見つけて、そこを耕して自分の土地だと主張しても、それだけでは所有権にはなりません。たんなる物理的な占有にすぎない、と彼はいいます。もし私より強い者によって土地を奪われたら、そこはもう私の土地だと主張することはできないからです。税を納めることと引き換えに私たちをそんな強奪から保護してくれる国家という存在がうまれることではじめて、その保護のもとで所有権も成立するとホッブズは考えたのです。

 ロックはそこに異論を差しはさみます。そもそも所有権は私が土地を耕した時点で成立する、と。そうでなければ国家が設立される理由はどこにあるのか、というわけですね。私たちは自分の労働をつかって手に入れた所有権を守るために国家をつくった、というのがロックの考えです。この場合、所有権が先にできてそのあとに国家ができるという順序です。

 では実際のところはどちらが先なのでしょうか。

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