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第1特集
現場から見たドラマ制作鼎談【1】

園子温に楯突いて干され寸前!? 入江悠が、ふがいないドラマに下克上

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──映画『SRサイタマノラッパー』でブレイクした映画監督入江悠。最近では、さまざまなドラマを手がけ、その演出手腕が話題だ。そこで、本誌元連載陣である放送作家の山名宏和・鮫肌文殊両氏の弟子であり、映画の脚本を手がける林賢一氏、さらにドラマ業界にかかわりの深い完全匿名のMr.Xが、ドラマについて真剣討論した!

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入江悠:映画『SR サイタマノラッパー』でブレイク後、映画・ドラマなどで活躍。(写真/永峰拓也)

Mr.X それぞれ現場で働く立場から、クリティカル(笑)にドラマについて語るってことですが、まず7月~9月期はドラマが豊作ですね。『あまちゃん』【1】『Woman』【2】『半沢直樹』【3】は特に話題に上ってます。

入江悠(以下、) でもこれらって、決して斬新というわけじゃないよね。山田太一や向田邦子から続く家族の話、すなわちホームドラマの基本にどれも忠実なだけだと思う。

Mr.X 『君の瞳をタイホする!』(フジテレビ/88年)の刑事が全員ブランド服着てたり、夜な夜なシャレオツな飲み屋で高そうな酒飲んでたりといった、現実にはあり得ない都会の若者の生態を描いていたバブル期のフジの月9が、むしろ異常だっただけで。

林賢一(以下、) 今放送してる月9の『SUMMER NUDE』【4】は90年代の月9と物語の構造が全然変わってないよ。誰もがイメージする月9パターンをなぞってるだけで、『ロングバケーション』【5】時代からの劣化っぷりはヒドい。

 それは林君が大人になったからじゃないの? 昔は、ドラマの影響をモロに受けてて、海の家に行ったら即セックスできるって思ってたでしょ。『ビーチボーイズ』【6】の広末みたいな子がいるかもって。

 そうかもしれないけどさ、初めて店で作った焼きそばが売れるか心配してる香里奈に山Pが「お前、自分の作った焼きそば信じろよ」って言うんだよ。大人も子どもも関係なく、こんなセリフは即失笑でしょ。

Mr.X 『SUMMER NUDE』は置いといて『あまちゃん』は地域活性化論やアイドルビジネス、『Woman』はシングルマザーや痴漢冤罪問題、『半沢直樹』はリアルな銀行の内幕と、時流に乗ったテーマに切り込んでいますね。どれも視聴者が「物申したい」話題だから、ツイッターなどによる評判の拡散スピードも早い。

 ただ、批評の対象になるテーマや、ニュース性が強いエゲツないトピックを盛り込むって話なら、実は過去に『金八先生』【7】シリーズが全部やってるね。校内暴力とか15歳で妊娠とか性同一性障害とか。俺も『金八先生』の上戸彩を見て、「性同一性障害っていう病気があるんだ」と学んだクチだから。

 なるほどね。でも『あまちゃん』は9月に入って東日本大震災展開になってさらに盛り上がってるよね。

 今、俺が演出で入ってる『天魔さんがゆく』【8】の福田雄一監督が、脚本に「じぇじぇ」って入れてきたくらいだからね。でも俺、『あまちゃん』見てなかったから、なんだか知らないで演出してしまった(笑)。

 ただ、朝ドラ史の中での相対評価で言えば、メタフィクションを存分に使って冒険してると思うけど、震災を扱ったドラマであれば、同じNHKでモンスター級の大傑作『その街のこども』【9】に遠く及んでない。面白い面白くないで言わせてもらうと、『あまちゃん』正直べつに面白くない。普通だよ。

Mr.X これは勇気ある発言!

 奇妙なことに、「『あまちゃん』面白くない」って言ってる人に会ったことがない。で、何がイヤって、『あまちゃん』を批判できないこの空気。

Mr.X ツイッター上では、放送中に「どれだけ早くうまいこと分析できるか競争」が繰り広げられてますよね。論客がこぞって評論対象にしてるから、小難しいサブカル評論を理解できない人も、ドラマを見るだけでなんとなくその論壇クラスタに混じった気になれるし。

 それって単に評論芸じゃん。であればむしろ、「なんでつまんないか」って話を聞きたいけどな。そっちのほうが面白いでしょ。

 もっと単純に、「かわいい能年玲奈を見るための15分」だって認めればいいんだよ、みんな。難しいこと言ってないで。

 昔からテレビドラマって旬な俳優を見るものだからね。

『あまちゃん』を例えるなら、「毎朝、きれいな花に水をやる15分」。能年という花を愛でるように毎日見る。そういう習慣には価値があると思う。

Mr.X テンポはいいですよね。展開が早い早い。

 最近のドラマは昔に比べてだいぶ早くなってるよね。話のテンポが遅いやつはもう見られないよ。去年、『SRサイタマノラッパー』のキャストが『GTO』【10】に出るっていうから見たんだけど、テンポが遅くて、きつかった。撮影や編集にも時代に合ったキレがないと、観ていて途中でチャンネルを変えたくなる。これは映画じゃなくてテレビゆえの特性。

 でも『Woman』は、テンポはゆっくりだけど、面白いよ。脚本がとにかく上手い。セリフがすごく自然で、余計なセリフがない。情景と行動で見せていく。僕、ドラマ見ていて、「こんなこと絶対言わねえよ」っていうセリフが我慢できないんだよね。入江君がテンポの遅さに我慢できないのと一緒で。そもそもドラマって、大切なことはセリフじゃなくて行動で示すべきだと思うんだけど、その点『SUMMER NUDE』は大切なことを全部セリフで説明しちゃってるんだよね。そこが駄目なところだよ……。

夏帆のベッドシーンに情熱を傾ける

 今まではゴールデンタイムと朝ドラの話だったけど、一方の深夜ドラマって、時流とは全然関係なく作られてるものも多いよね。入江君、『みんな!エスパーだよ!』【11】の演出をやってみてどうだった?

 とにかく夏帆のベッドシーンに力を入れたかも。俺の後の回の監督が、何もやりようがないくらい、あらゆる角度から撮ってやろうとね。あんまり粘ったから、現場は「まだやんのかよ」みたいな空気に包まれたけど。どうしても次の監督には「このパターンはもう無理だ、撮れない」って思わせたかった。夏帆が感じてる顔をどれだけかわいく撮るかという部分に精力を注いだよ。このあたりは監督によって違って、別の監督だと変態性を見出す相手が(共演の)真野恵里菜だったりするんだけど。

 それは変態性なんだ。

 染谷将太の勃起シーンも、誰もやってないパターンをやりたくて。従来の勃起はズボン越しにテントが張られる風だけど、俺のはチャックがぼんとあいてパンツごと出てきて、チンコが勝手に暴走するという。

Mr.X 映画と違ってドラマは複数の監督が持ち回りで演出するじゃないですか。ほかの監督に対抗心を抱くんですか?

 もちろん。特に俺の場合、園子温という大きな存在の次の回だったんで、上の世代の園さんを倒してやるぜっていう意気込みはあったね。

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