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第1特集
4年ぶりのシャバを『ヤクザと原発』の鈴木智彦が聞く

"闇社会の守護神"田中森一、仮出所――「許永中を裏切るわけにはいかなかった」

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――許永中や山口組大幹部ら、日本の裏社会を牛耳る人々との交際が厚かった元弁護士・田中森一が、12年11月に仮出所を果たした。自伝『反転』でも記された通り、裏社会の人間たちと相通じてきた田中は、4年の間に様変わりしたアンダーグラウンドの世界をどう感じているのか? ヤクザ業界に当代随一通じるジャーナリスト・鈴木智彦が、じっくりと話を聞いた。

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(写真/田中まこと)

 中森一はかつて「闇社会の守護神」と呼ばれた。ヤメ検弁護士として大物暴力団幹部と交流を持ち、仕手筋の大物や地上げ王など、そうそうたるワルの顧問をしていたからだ。

「田中はんが手がけるいうたら、そのへんの事件とちゃう。最初にドカンとでかい金を言われるけど、それ以上のことは、必ずきっちりしてくれた。もう(娑婆に)出てきたんかいな。あの人になら、なんぼでも会社紹介できるわ」(京都の事業家)

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50万部を超えるベストセラーとなった『反転―闇社会の守護神と呼ばれて』(幻冬舎/07年)。

 その田中が逮捕された事件は、通称「石橋産業手形事件」と呼ばれる。1996年、石油卸の大手商社に絡んだ179億円の手形詐欺事件だ。このとき共謀したとされるのが「闇の帝王」こと許永中……戦後最大の不正経済事件といわれる「イトマン事件」の主犯だった。2人の関係は、田中が高裁判決前に上梓し、ベストセラーとなった『反転』(幻冬舎)に詳しい。

 今回のインタビューは、この事件で服役した田中が、滋賀刑務所を仮出所した1カ月後に行われた。娑婆に舞い戻った田中は以前の脂っ気が抜け落ち、見違えるほどスリムだった。

「服役中の健康診断で胃がんが見つかったのが、平成22年暮れ。翌年2月には大阪医療刑務所で手術を受け、胃の3分の2を摘出した。その後は1年間、抗がん剤を飲んだ。今は体重も標準近くに戻ったけど、最高に痩せた時は40キロ程度まで落ちたかなぁ。これだけは、結果として刑務所行ってよかったかもしれない。外にいたら病院なんて行ってないもん。刑務所って、案外病気が治るんだ(笑)。

 石橋産業事件に関して……未だになぜ詐欺になるのかわからんというのが正直なところ。実際、わしは許永中とは反対側の弁護士に就いた。石橋の弁護人だから。ところが裁判所は、わしが許永中と話し合って、わざわざ相手方の弁護人に就いて、結託してやったみたいになっている。わけわからんのだけどさ。そうなってる。

 わしが一番無罪を取りやすいのは、許永中と別れることだった。その上で『謀議はしてない』と法廷で戦えばよかった。でも永中は、『そもそもこれは詐欺じゃないんだ』と争った。共謀の有無は想定外だし、ほとんど審理もされてない。この戦い方では無罪にならないだろうとわかっていた。でも許永中とは共同路線で行こう、裏切るべきじゃないと決めたから、結果、刑務所行くのは仕方ないと観念したんだ。なんといっても世話になったし、
彼の男気も見てきたからね。

 例えば、弁護士になったばかりの頃に顧問になったノンバンクが、ゴルフ場開発でとある会社に30億円融資し、焦げ付いていた。依頼を受けて相手と交渉したけど、バブルが崩壊して金がない、払えない。その時、許永中が『弁護士になってとっかかりの事件だし、なんとか解決してやらんといかん』と言ってくれて、ゴルフ場を友人に買い取らせたんだ。あっという間に30億円の焦げ付き債権がなくなった。報酬は……2%としても6000万円。3%なら1億円近い。そういうものが積み重なって収入が増えた。だから恩人だよ。

 小さなことだけど、こんなこともあった。

 あいつらのことだから、けっこう美味い店を知ってるわけ。大阪のそうした店に何軒か連れて行ってもらったことがある。永中がイトマンで逮捕されて中(刑務所)に入ってる間に、自分が女の子なんかをそういう店に連れて行くと、オーナーや支配人に『田中が来たら金を取るな』と指示してあった。そこまで気配りをしてもらって、自分だけが共謀を否定し無罪になって、のうのうとなんてできない。そんな生き方は弁護士としてというよりも、男として恥ずかしい。

 だが、金のやりとりは全くなかった。裁判であれだけ資料を出させても、全く出てない。これはどこに出ても胸張って言える。そういう綺麗な付き合いだったから、永中を裏切れなかったのはある。

 今だから言うけど……表向きは会ってなかったことにしていながら、密航して日本に来てた時など、1カ月に1回か2回は会って食事したりしていたんだ。今は韓国の刑務所にいるらしいし、連絡先は教えてあるけど、今回は仮釈の条件として『共犯者と会ってはならない』とあるから、すべてが終わるまで会えない」

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