サイゾーpremium  > 特集2  > 【町田徹】が語るリクルート上場の意義
第2特集
リクルート上場に立ち込める暗雲【6】

経済ジャーナリスト・町田徹に聞くリクルートの意義「一部上場は日本経済に大きな影響を与えない」

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──今回のリクルート上場が日本経済に与える影響とは? リクルート事件当時より同社を知る、経済ジャーナリストの町田徹氏に、リクルートが上場する意義を聞いた。

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 リクルートが日本経済に与えた影響としては、やはり88年のリクルート事件は外せません。政財界を揺るがす大スキャンダルに発展したあの事件は、証券市場のあり方をも変えてしまいました。当時の報道では、未公開株が賄賂になると喧伝され、「株で儲けるなんて卑しい」という世論が出来上がった。その結果、未公開株の保有者は株式公開後も一定期間、株を売却できないという法律が定められました。資本主義下で「株で儲ける=悪」というのはナンセンス。後にソフトバンクの孫正義氏や元ライブドア社長の堀江貴文氏といったベンチャー経営者がぽつぽつ出てくるものの、当時の過熱した報道が創業者利益の担保を損ね、日本のベンチャー精神を抑え込んでしまった感は否めない。

 このとき、リクルートコスモスの未公開株の譲渡を受けていた有力者は、当時の竹下登首相、中曽根康弘前首相、さらに文部官僚やNTT会長とそうそうたる面々で、江副浩正という人物の政治的ネットワークづくりの手腕には驚かされました。私が勤めていた日本経済新聞社の森田康社長(当時)も譲渡された未公開株を売却していたことが公になり、辞任に追い込まれます。森田氏は80年代から日経の大胆な海外展開や電子メディア戦略を提唱していた人物。リクルート事件はこうした改革者たちの横のつながりも断ってしまったわけです。もし、江副氏がイケイケのままリクルートを率いていたら、日本社会はどうなっていたか? 惜しまれる側面もあります。

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