サイゾーpremium  > 特集  > エンタメ業界──先行き暗めの業界で伸びる...

──「日本の産業はものづくりからコンテンツへ」などと言われるようになって久しいが、それを支えるエンタメ業界は、どこもなかなか苦しい様子。構造の変化も進むゲーム業界をはじめ、その中核を担う3業界に着目した。

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(イラスト/都築潤)

勝ち企業

DeNA
ケータイ向けSNS・モバゲータウンにて、「怪盗ロワイヤル」などの人気ゲームを配信する。昨年12月には、ゲームメーカーへ不当な圧力をかけたとして公取委の立入検査を受けた。

GREE
SNS・GREEで、「釣りスタ」などの人気ゲームを抱える。市場調査会社によって昨秋行われた「ソーシャルアプリの課金ユーザー比率に関する実態調査」では、登録率、アクティブユーザー率、課金ユーザー比率でmixiとモバゲーを上回った。

負け企業

スクウェア・エニックス
2003年にスクウェア社とエニックス社が合併して誕生した会社だが、それぞれの大ヒット作『ファイナルファンタジー』と『ドラゴンクエスト』以外結局ヒット作が生み出せていない。近年は人員整理も進んでいる。

 政府が推進する「クールジャパン」のキモであり、エンタメ業界の中核を成すゲーム・アニメ・映画系企業。だが、どこからも先行きの明るい話は聞こえてこない。まずはゲーム業界から見ていこう。昨年は『ポケットモンスターブラック/ホワイト』(任天堂)や『モンスターハンターポータブル3rd』(カプコン)など大型タイトルのヒットが目立ったが、ゲーム業界に詳しいジャーナリスト・橘寛基氏によると、10年も海外を含めた総出荷金額は縮小傾向になる見込みだという。

「ビデオゲーム(家庭用ゲーム)の日本企業による総出荷金額は、ニンテンドーDSとWiiの世界的ヒットのおかげで一時は約3兆円にまで急成長しました。しかしそのブームも一巡し、10年は2兆円ぐらいまで落ち込むと予想されます。任天堂は、今年2月発売の『ニンテンドー3DS』(裸眼で3D映像が楽しめる次世代機)が大ヒットするか否かで、命運が分かれると思いますね」

 また10年9月期の中間決算で任天堂が急激な円高で為替差損を出し、7年ぶりに赤字になったとの報道も記憶に新しいが、ゲーム業界は輸出依存型。出荷の8割を輸出に頼るというから、円高は相当響いたようだ。だがそんな中で着実に業績を伸ばしているメーカーがあるという。

「『レイトン教授』シリーズで有名なレベルファイブが好調です。同シリーズが海外でも大ヒットし、累計1000万本を超える勢いです。『イナズマイレブン』も好調ですし、昨年12月にはスタジオジブリが制作協力した『ニノ国 漆黒の魔道士』を発売するなど、タイトル数は少ないですが、メディアミックスなど、"売る"戦略が非常にうまいんですよ」(同)

 対して業績不振が顕著だったのは、『ドラゴンクエスト(ドラクエ)』や『ファイナルファンタジー(FF)』などビッグタイトルを抱えるスクウェア・エニックス(スクエニ)だったそう。

「スクエニは、『ドラクエ』『FF』頼みの会社。09年に両者が出た反動もありますが、10年にリリースしたオンラインゲームの『FF14』の出来が非常によろしくなかった。今後、経営陣の責任が問われるかもしれません」(同)

 さらに、ゲーム業界の潮流として無視できないのが、GREEやモバゲータウン(DeNA)など携帯電話・パソコン向けソーシャルゲームの台頭だ。09年度の国内ソーシャルゲーム市場規模は、前年度比7・5倍の338億円で、11年度には1171億円になると見込まれている(矢野経済研究所調べ)。

「特に昨年のGREEの成長は圧倒的で、会員数でモバゲーを抜きました。株式時価総額も、今やスクエニより高い。11年は、大手ソフトメーカーやヤフーなどさまざまな企業がソーシャルゲームに本格参入し、ソフト過剰の傾向になると思いますが、そこからさらに市場が拡大するのか否かが注目ポイントだと思います。ビデオゲームとソーシャルゲームでは、予算・開発期間・スタッフ数がまったく異なるので、ビジネスモデルの大きな違いに戸惑いを隠せないソフトメーカーも少なくないようですが、臨機応変な対応が各社生き残りのカギになるでしょう」(同)

アニメ界は成長企業が皆無 映画界はより淘汰が激しく

 続いては、パッケージ不況といわれて久しいアニメ業界。アニメの場合、1作品にさまざまな企業がかかわって制作しているため作品の出来不出来で会社の可能性を見極めるのは困難だが、そもそも「伸びている企業は皆無でしょう」とアニメ業界関係者は語る。

「パッケージセールスなどの収益悪化、地上波デジタル対応による制作費高騰、ユーザーの高クオリティ要求など、制作側への負担が大きくなっているからです。特にブルーレイが話をややこしくしていて、プレイヤーが普及していないので商品が売れないにもかかわらず、"画質が劣るDVDを買うと損"というユーザーの心理で、DVDもブルーレイも両方売れないという状況になってしまっている。ただ、デジタルのコストは時間と共に低廉化しますし、ブルーレイもやがて普及するはずなので、各社共に今は耐えているという状況でしょう」

 そんな中でも、東映アニメーションやポニーキャニオンなど、大幅増益をしている企業もある。両社とも『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』(09年12月)や『映画 プリキュアオールスターズDX2』(10年3月)などのヒットがあり、共通するのは、キャラクター人気の高い作品の恩恵を受けたという点だ。特に東映アニメーションの場合は『プリキュア』の原作を自社で持っているため、グッズや玩具の収益がすべて入ってくる。原作の権利を自社で持つのは大きな強みだ。成功例は少ないが、自社でのキャラクター開発を積極的に行うなど、キャラクタービジネスに着目することは今後のカギになると、前出のアニメ業界関係者は語る。

「関連グッズやフィギュアなど2次商品との連携性を強めたり、思いきって作品自体はコストダウンして別の付加価値をつけるとか、別の方向性を持つ会社が伸びる可能性があります。たとえばフィギュアのために、OVAが収録されたDVDを雑誌の付録やイベントなどで60万枚無償配布した『ブラック★ロックシューター』のグッドスマイルカンパニーなどが好例ですね」

 一方、映画業界もアニメ同様パッケージ不況にあえぐが、興行収入的には活気があるといえそう。キネマ旬報映画総合研究所の掛尾良夫エクゼクティブ・ディレクターはこう分析する。

「10年の全体の興行収入は、09年に対して110%ほどになると予測されています。3D映画のヒットが興収アップに貢献しました。3D映画は鑑賞料が300円ほど高いので、その分興収が増加しているというわけです」

 だがその実、業界内には淘汰の嵐が吹き荒れているようだ。

「98年は公開本数554本で興収が1934億円程度。08年は806本に対して約1948億円で、興収は増えずに本数だけが増えている。そんな状況の中でシネコンの普及が進みました。シネコンでは、人気作の上映回数を増やし、人気のない作品はどんどん減らす。そうすると当然ながら、作品の勝ち組と負け組の二極化が深刻化してしまうわけです。また、スクリーンのデジタル化もこの二極化を助長しています。デジタルにするには1スクリーン当たり約1000万円、3D対応にするためには、さらに1000万円ほどの費用がかかります。東映系の『T・ジョイ』や東宝系の『東宝シネマズ』など、大手資本のシネコンは11年までにほぼ全スクリーンデジタル化するようですが、中小規模の映画館ではそんな費用は出せず、劇場はさらに淘汰されていくかもしれません」(同)

 スクリーンがデジタル化されれば映画以外にも音楽ライブやスポーツ中継など、劇場の使用範囲は広がるが、デジタル化でイイことずくめというわけではないようである。

 ここ数年、映画業界では"東宝のひとり勝ち状態"といわれてきたが、この状態は11年以降も続くのだろうか。

「映画ビジネスは、"制作・配給(流通)・劇場(ショップ)"という3つの基盤から成り立っています。東宝の場合、出版社やテレビ局と共に製作委員会方式をとって制作を行い、自社で配給し、東宝シネマズという自社のショップで上映できるから強いんです。東映や松竹もだいぶ体制ができつつありますが、規模的には東宝より小さい。角川映画や日活は大きなショップを持っていないので、大作を上映するときは東宝や松竹と組まざるを得ません。手堅く映画ビジネスをしていくためには、3つの基盤とネットワークを強固にする必要があります」(同)

 一見華やかに見えるエンタメ業界だが、その中身はどこも不安因子がいっぱい。この厳しい状況を各社どう乗り越えていくのか、気になるところだ。

(取材・文/遠藤麻衣)

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