サイゾーpremium  > 特集  > もはや月9にキムタクは不要!? ドラマ評...

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──最近のジャニーズと言えば嵐が注目されていますが、1年前に古崎さんに話を伺った時は「二宮和也と松本潤が突出している」との話でした。

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月9で大成功をおさめ、確固たる地位を築いたキムタクと、『花より男子』でブレイクし、これからの活躍に注目が集まる松潤の両者だが新作では……。

古崎 松潤は『夏の恋は虹色に輝く』【10】で嵐のメンバー初となる月9主演を果たしましたけど、数字があまり良くないですね。我々ドラマファンから見ると、さまざまな文脈が読み込めて面白いのですが。

成馬 大きく飛躍したのは大野君ですよね。作品にもめぐまれたけど、特に『怪物くん』【11】はよかった。前段階として『銭ゲバ』【12】があったと思うのですが、マンガ的なキャラクターを、今の日本の風景の中に置くことで、面白い映像を生みだしていました。ドラキュラとかフランケンの格好した奴が現代の日本に普通に溶け込んでいる姿は結構、ショッキングで、現実と虚構が混ざり合ったような、現実を異界化するような表現にキャラクタードラマの可能性があるんじゃないかと思います。

宇野 櫻井君と大野君ら、近年は嵐の躍進が目立ったけど、彼ら以外では錦戸亮が注目です。僕は錦戸君のね、なんかこう「所在のなさ」みたいな部分が好きなんですよ。『てるてる家族』【13】で初めて錦戸君を意識したのですが、一生懸命やってるけど、所在がないところが可愛くて、それが『ラスト・フレンズ』【14】の及川宗佑役につながっている。あの、捨て犬のようなさびしそうな目に狂気が宿る瞬間が素晴らしい。

古崎 私はやっぱり山P(山下智久)ですね。フジでの優遇のされ方を見ていると、ポスト・キムタクとして、月9のエースに育てようとしていますよね。『ブザービート』【15】もストーリーの展開など、批判的な意見もあるでしょうが、彼の魅力は出ていました。これから楽しみですよね。

成馬 『野ブタ。』の草野彰役も良かったですよね。メインは亀梨和也なんだけど、おいしいところを持っていきました。

宇野 亀梨君はアッパーなゼロ年代というか、小泉純一郎的な「ぐちゃぐちゃの世の中をサバイヴしていく」みたいな余裕のかまし方が魅力だったんだけど、『野ブタ。』以降伸びないのが歯がゆいです。『野ブタ。』の修二がいいのは、あれもやっぱり亀梨君のパブリックイメージをうまく生かしていたからですよね。しかも後半になると、自分の「なんでも器用にこなせているだけ」のキャラクターについて修二が悩みだす。これはほとんど亀梨のキャラクター批評として「も」読めるし、あのキャラがあるから作品自体の主題も効果的に追求されていく。

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下馬評とは裏腹に成功を収めた『怪物くん』。一方、視聴率としては成功した『西遊記』だが……。

──90年代に入ってから、ジャニーズタレント主演のドラマが増えた印象を持ちますが、やっぱりSMAPの影響が大きいのでしょうか?

古崎 80年代後半までは、アイドルの出ているドラマって「よくできた隠し芸大会」といわれ、馬鹿にされてたんですよ。その意味で、木村拓哉が当時のトレンディ俳優を押しのけて、月9のエースになったことは大きい。もしキムタクがいなかったら、月9は全然別のものになっていたかもしれないです。

宇野 ただ、いい加減転換期にさしかかっていますよね。『月の恋人』【16】浅野妙子【17】たちの脚本がそこまで悪かったとは思えない。あれって従来のキムタクドラマの限界を悟って、キムタクに繊細な内面の動きを表現させようというコンセプトだったと思うんですね。しかしキムタクに演出陣が遠慮しているのか、もっと全体的なレベルでうまくいかなかったのかまったく画面に反映されていない。

──最後に、今後のジャニーズドラマはどうなると思いますか?

古崎 気になるのは大河ドラマですね。『龍馬伝』【18】 は最初「キムタク主演で」って噂があったんですよ。脚本も『HERO』【19】『CHANGE』【20】で組んだ福田靖【21】ですし。NHKとしては、「いずれキムタク大河」って考えはあるでしょうから、それがいつ実現するかが興味深いですね。

成馬 むしろ、いきなり二宮和也を使うほうがありそうですよね。

宇野 演技には問題ない。というか『流星の絆』【22】の有明功一役もよかったし、むしろ見たいですね。、二宮大河は有り得るかもしれません。

古崎 74年のNHK大河ドラマ『勝海舟』で、脚本家の倉本聰が演出に口を出して降板した事件があったけど、今となってはNHKと和解してますから、最後の花道として考えているかもしれませんね。75歳ですから年齢的に大河を全話担当するのは難しいかも知れませんが。

成馬 『歸國』【23】の前日譚みたいな、太平洋戦争が舞台の大河とかやったら面白いかもしれないです。

古崎 そもそも、私がテレビドラマを好きなのは、テレビという制約があるからなんです。一定の大衆性が必要なメディアの中で、いかに作家性を発揮するかっていう戦いがテレビでは常に行われていて、今はその大衆性をジャニーズが果たしている。それをうまく使うことで、ゼロ年代のテレビドラマは発展してきたんです。

宇野 良いジャニーズドラマと、悪いジャニーズドラマの違いって、ジャニーズを使う=キャラクタードラマにならざるを得ないことを、逆手にとれるかどうかなんです。無理やり映画っぽくしようとしてもうまく行かないし、逆にただタレント人気だけを当て込んだ作品も面白くはならない。例えば『西遊記』【24】は香取慎吾の子ども人気に甘え過ぎでしょう。パブリックイメージにひねりがなくてキャラ造型も演出も安易。こういう作品はやっぱりダメで、やはりジャニーズという制度を逆手にとったものが成功している。

 この回路を使えば、まだまだ名作ドラマは生まれるだろうから、ドラマスタッフもジャニーズ事務所も冒険を恐れないでほしいですよね。
(文/成馬零一)
(絵/川崎タカオ)

古崎康成(ふるさき・やすなり)
1966年生まれ。「テレビドラマデータベース」(http://www.tvdrama-db.com/)を運営。共編に『テレビドラマ原作事典』(日外アソシエーツ)がある。

成馬零一(なりま・れいいち)
1976年生まれ。ドラマ評論家。雑誌、ムック、ウェブなど各種媒体に寄稿。著作に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)がある。

宇野常寛(うの・つねひろ)
1978年生まれ。企画ユニット「第二次惑星開発委員会」主宰。本誌連載『批評のブルーオーシャン』の執筆と『月刊カルチャー時評』の監修でもおなじみ。

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