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第1特集
本気のレビュー! 歴代ジャニーズ・ポップの真骨頂【3】

嵐のジャケとピンク・フロイドの類似点──ジャニーズ・カバー・アート進化論

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──ジャニーズの音楽ソフトにも付帯してきた「ジャケット」。それらは単に売るためのイメージでしかなかったのか? 田原俊彦、SMAP、嵐と各時代におけるジャケット・デザインの真価を、美術評論家の楠見清氏が問う。

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 黎明期のジャニーズはロカビリーやGSといった戦後の若者の音楽文化をテレビを介してお茶の間に持ち込んみました。ただ、そのことが逆に後発のフォーク歌手に比べると歌謡曲の枠を出ないものにしてしまった。フォーリーブスや初期の郷ひろみのレコード・ジャケットは洋楽とはまったく別のドメスティック指向で作られていたように見えます。しかし、80年代のたのきんトリオの頃から何かが変わり、とりわけ田原俊彦のジャケットは前世代のジャニーズとは異なっていた。その中でも『It’s BAD』【1】(キャニオン/85年)は、マイケル・ジャクソンの『スリラー』【2】(Epic/82年) をどこか思わせる。今見ると宣材写真そのままのような印象ですが、背景にロール紙を垂らしてライティングというのは当時はやった広告写真のメソッドで洋楽もこうだった。レコード店に洋楽と邦楽が肩を並べて置かれたのもこの時代ですし、MTV世代のアイドルは洋楽を当たり前に指向するようになる。当時のトシちゃんの顔付きがマイケルと比べて遜色ないのは、きっとマイケルの歌とダンスをビデオで研究しながら自分が何者でどこへ行くのかを理解していたからだと思います。

 90年代に入るとSMAPが登場しますが、仲良し男子グループのイメージをジャケットで演出するにあたってザ・ビーチ・ボーイズが参照されました。『Surfin’ Safari』【3】(Capitol/62年)を彷彿させる『SMAP 002』【4】(ビクター/92年)や、『Pet Sounds』【5】(Capitol/66年)へのオマージュであろう『La Festa』【6】(ビクター/98年)などです。後者の写真は『Urban Hymns』【7】(Virgin/97年)にも近く、当時のブリットポップ・ブームも意識したフォト・ディレクションだったのでしょう。でも、あのジャケットはおそらく制作者の意図とは別にチューリップの『Someday Somewhere』【8】(東芝EMI/79年)にも漸近し、それはそれで日本のポップスの文脈にある。一方で、『SMAP 002』~『La Festa』の間には、フリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴのジャケット・デザインを手がけた信藤三雄が『SMAP 009』【9】(ビクター/96年)でアート・ディレクターを務めるなど、渋谷系の文脈も取り入れた。こうしてデザイン・コンセプトをあれこれ試みたSMAPの6年は、61年に結成されたビーチ・ボーイズがフリークアウトしていく6年にも匹敵した内面的な変遷もみられるわけです。

 ところが、大貫卓也がアート・ディレクションした『SMAP 011 ス』【10】(ビクター/97年)からSMAPは記号性を押し出す。これはジャケ単体のデザイン性というより、ビルボードやCDショップと至る所に「ス」の文字が並ぶのを想定した広告戦略。それを『S map ~SMAP 014~』【11】(ビクター/00年)で拡張したのが佐藤可士和で、構成主義的(1910年代旧ソ連の芸術運動から生まれた幾何学的デザイン)ですらある。彼がいなければSMAPのジャケは『La Festa』 路線を突き進み、キムタクはブライアン・ウィルソンみたいになったかもしれませんが(笑)、00年代の彼らはジャケから自らの姿を消し時代の記号として流通することを選んだといえるでしょう。

 そんなここ10年のSMAPに比べ、嵐のジャケット・デザインは正統的。例えば『How’s it going?』【12】(ジェイ・ストーム/03年)の並びはピンク・フロイド『夜明けの口笛吹き』【13】(Capital/67年)が想起され、『HERE WE GO!』【14】(ジェイ・ストーム/02年)初回限定盤はビートルズ『Beatles for Sale』【15】(EMI/64年)と通じるものがある。音楽パッケージはこうあるべきというか、あえてこれ以上しないことに好感が持てる。ただ、嵐はまだSMAPのような転換期を迎えておらず、そのアートワークがどう化けるかに期待したいです。

(構成/岡澤浩太郎)

楠見清(くすみ・きよし)
1963年生まれ。アートストラテジスト、美術編集者/評論家。「コミッカーズ」編集長、「美術手帖」編集長を経て、首都大学東京准教授。共著に『現代アート事典』(美術出版社)、『八谷和彦OpenSky2.0』(NTT出版)、『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』(河出書房新社)など。

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