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第2特集
行列ラーメン店、人気のカラクリ【1】

ラーメンブームの実態とメディアの脅威

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 先日、味噌ラーメンの人気店「ど・みそ」(東京・京橋)の店名が、某会社に商標登録され、使用料を請求される一悶着があった。商標法では、その店名を先に使っていればそれまで通り使用できるが、まさか個人店の名称をめぐってこんなことが起きようとは、店主も思いもよらなかっただろう。それほどまでに、いまや人気店ともなれば、個人経営でも全国に名前が知れ渡り、"儲かる商売"として認識されるラーメン店。しかし、不況が続く今の日本で、その実情は本当に何も変わっていないのだろうか?

 現在のラーメン産業に大きな影響を与えた「くじら軒」や「麺屋 武蔵」「中華そば 青葉」がオープンしてから、はや13年。ブームがピークとなった5年前には、業界全体で年間約1兆円という売り上げをたたき出し、全国に約5万店ものラーメン店が存在していたといわれている。経済不況の昨今でも、その売り上げは年間9000億円ほど。同じく国民食であるうどんやそばなど比ではないほど行列ができ、もはや、日本食文化の代表と称されるのも当然のことなのだろう。

 しかしその一方で、かつて隆盛を極めた店たちが、毎年1万店ほど潰れているのもまた事実。"ジャパニーズ・ドリーム"と化したラーメン業界の新陳代謝は激しく、ひとつ店が死んでは2つ店が生まれ、無限に増殖している。果たして、人々がラーメンに引きつけられるのはなぜなのか。行き着くところまで来たといわれるラーメン業界の今とその裏側に、
さまざまな角度から迫ってみたい──。

[座談会出席者]

A......グルメライター
B......グルメ情報誌編集者
C......情報誌のラーメンライター

 情報誌やムック本で数多くのラーメン店を取材し、その浮き沈みを目の当たりにしてきた編集者&ライター。そんな彼らに、業界の裏側をこっそりと暴露してもらった。

A ラーメンブームと言われて久しいけど、ラーメン店の栄枯盛衰は本当に早いよね。そういえば最近、「俺の空」(東京・高田馬場)や「九段 斑鳩」(東京・九段下)は雑誌に載らなくなった。

B 「俺の空」はオープン2年目の02年に、「斑鳩」は3年目の03年に日本テレビのラーメン番組で上位に取り上げられてるんだけど、味が安定していないうちに大行列ができて大変だったみたい。

C 日テレはほかのメディアが注目しないような意外な店を1位に持ってくるんだよ。だから、急に行列ができると店側もテンパっちゃう。味を安定させて常連さんをつかめればいいんだけど、それができずに結局転がり落ちた店は多いよね。

B テレビの影響力はすごい。「放送した直後から、客が押し掛けてくる」って。

A 「麺や 七彩」(東京・都立家政)は07年4月にジャニーズの番組『裸の少年』(テレビ朝日系)で紹介されたんだけど、放送中にファンの女の子たちが走って来たらしいよ。生放送じゃないのに(笑)。

B テレビといえば、「大つけ麺博」(10月22日〜11月11日まで、東京・日比谷で開催)もすごいね。参加店すべて限定メニューで1杯800円に統一してたんだけど、そのうち半額程度が主催のテレビ朝日に入るらしい。これじゃ、店側は普通の量のラーメンは出せないよ。

C それでも、毎日8店舗参加して、平均1日500〜600杯は売れたみたいだから、少なく見積もっても、テレ朝は3360万円以上の売り上げ。会場は簡易なセットで、準備に費用もかけてなかった。協賛金も考えると、ボロ儲けだよ。

A 店側がそんな条件でも参加するのは、話題性で鮮度感を保つためだろうね。新鮮さが失われてメディアに出なくなった途端、お店までダメになったような印象になって、お客さんがパタリと減ってしまうこともあるから。

C それを懸念して、「RAMEN CiQUE」(東京・南阿佐ヶ谷)のように最初から取材拒否の店もある。

A でも、メディアに出なかったら出ないで大変。レベルの高い新店が次々にできる中、生き残るのは本当に難しい。

B 雑誌やムックをつくる側としてもプレッシャーだよ。誌面に載ればお客さんが来ると思ってる店主さんが多いから。実際の効果はテレビほどじゃないのにな。

A あと、取材して雑誌が出るまでに、お店が潰れちゃうこともあるよね。先日も、校正確認のときに1店なくなってた。

B あるある。校了後に連絡つかなくなって、店に行ってみたら不動産屋さんから「連絡ください」の貼り紙があって。結局そのままドロンだったよ。

20時間労働も水の泡!? 客には伝わらない職人魂

A 店主は本当に大変だと思うよ。コンクリートの店内に立ちっぱなしで体は冷えるし、腰やひざを痛めてる人は多い。以前、「BASSO ドリルマン」(東京・池袋)の店主が「腰痛で休みます」と臨時休業したら、「わざわざ行ったのに」とブロガーに叩かれたことがあった。

B こだわりのある店主ほど労働時間も長い。「煮干鰮らーめん 圓」(東京・八王子)の店主は1日20時間労働だって。素材選びに時間もかけているから、その分価格に乗せざるを得ない。でもお客さんは原価率なんて知らないし、「高い」と言われるそう。

C 確かに普通のお客さんに味の違いがわかるかというと......わからないかもね。

A 大枠の味の流れは2〜3年変わってなくて、豚骨魚介が相変わらず人気。

B 東京から地方にも飛び火してるしね。この前大阪で、「いちばんはやってるつけ麺屋」に連れて行かれたんだけど、「またこの味か......」と、がっかりした(笑)。

A つけ麺は厨房のシンクが狭いとできない店もあるんだけど、まぜ麺なら狭くてもできるから人気が出てきてる。タレを用意するだけだから、スープの仕込みをしなくていいし。ブームは店側が取り入れやすいかどうかもポイントかもね。

C そろそろラーメン本が大量発行される季節。今年の人気店はどこだろう?

B 今年のランキングは、各誌とも変わらなそう。基本的には「なんつッ亭」(神奈川・秦野ほか)が1位。そろそろ「ラーメン きら星」(東京・武蔵野)あたりが1位を取ってもいいと思うんだけど。

C マニア向けの雑誌だと淡麗系の「煮干鰮らーめん 圓」が1位になってるよ。各誌で注目されてるし、これを機に煮干しブームが再燃すると思うな。

(文/安楽由紀子、秀也)

(絵/師岡とおる)


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