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第2特集
フジロック、サマソニ、ライジングサン......利権と欲望が絡む夏フェス裏ガイド【5】

エコを叫ぶ説教臭いフェスは萎える(笑) これからは地域密着型、もしくはシニア層狙い

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クリエイティブ・ディレクター/湯山玲子インタビュー

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 まず『クラブカルチャー!』(毎日新聞社)の著者として言うと、いまロックフェスはクラブカルチャーの入り口のひとつになっているんです。私の指導している学生の中に「ロックフェスで初めてクラブの楽しさを知った」という子がいます。90年代を通して、それが日本にやっと定着したのに、近年のクラブは入場規制が厳しくなってしまって、(未成年など)若い子が遊べる場所ではなくなってしまった。だけど、最近はどのフェスにもDJパーティ・テントがありますから。そこでパーティの雰囲気や空間のエッセンスを知る事はすばらしい入門だと思う。

 クラブの入場管理が厳しくなっているのと並行した現象だと思いますが、近年フェスの管理体制が厳しくなっています。かつて、ロックフェスの起源というべきウッドストックが開催されたころには、「興行に対してのフェス」という対比の構図がありました。「お膳立てされた興行に客としてサービスを受けにいく」のではなくて、「出演者も含め自分たちで勝手に集まる」という自発性を志向していた。そこにロックの「自由」という理念を体現しようとしていたんですね。海外のフェスに行くと、いまでもそのDNAが色濃く残っているのを感じます。さまざまなことが客の自主性に任されていて、Sonar(ヨーロッパで開催されているエレクトロニカ系フェス)なんて、主催者も聴衆と一緒に踊っている(笑)。それに比べると、フジロックの管理の厳しさは異様にすら思う。「ゴミを分別しろ」とずっと声かけしているエコ系ボランティアが大きな顔をしていたり、説教臭いというか、学校臭いんですよね。

 そもそも、日本のボランティアやNPOの活動はどれも学校臭い。個人的には「エコ、エコ」と言って正義感に浸っている人たちはすごく苦手なんですが、一番説教臭いフジロックが日本のロックフェスの雛形になったことで、ほかのフェスにもフジの運営方法が流用されています。結果、日本のフェスはどれも説教臭くて、フェスのDNAであるフリーで自主的なムードはまったく感じられなくなっている。

富裕層をつかまえたフジロックの戦略

 私も開催に協力した04年のsonar sound tokyo(Sonarの日本版)で、広告代理店の担当者と話していて知ったことなんですが、フジロックは観客をほかにすることのない山中に隔離するから、タッチポイントを多く作り出すと見なされて広告獲得に有利なんだそうです。また、フジロックの観客特性は代理店的には「可処分所得が多い人」ということになっています。確かに、3日間見に行くなら、チケット代、苗場までの交通費、宿泊費など、ひとりで10万円はかかる。彼女と2人で行けばその倍必要ですし、特定の3日間、前後を入れると5日間も連休を取る必要がある。社会人でそれだけの所得と余暇を自由に使えるのは、大手企業の正社員とか、いわゆる勝ち組の人でしょう。フジロックは他フェスに比べ、なんといっても老舗ですし、広告収入は潤っていると思いますが、さすがにサブプライム以降のスポンサー度はどこも大変なんじゃないかな。

 フジロックの動員数は06年をピークに漸減しているそうですね。フェスは毎年参加するリピーターをがっちりつかんでいると言われていますが、フェスがスタートした90年代後半に20代だった人、つまり団塊ジュニアの層は、いま30代です。

 結婚、出産を迎えて私生活が忙しい時期に入っている人も少なくない。そこよりも、今オヤジバンドばはやっているように元気なシニアを狙ったほうがいいかも。40代以上の、センスも元気もある彼らと新しい音楽をつなぐ提案がフェス側からほとんどなされていないのがもったいないですね。

 フェスのように毎年開催されるイベントの場合、どの年にも、初めて参加する客がいて、前年まで来ていてその年から来なくなった客がいる。フェスには多くのミュージシャンが出ますから、前年との出演者の重複はある程度避けられない。サマソニで(常連の)ナイン・インチ・ネイルズを見るのはもういいよ、と思う人が一定数いて当然です。sonar sound tokyoにかかわった経験から言っても、外タレの招致は金も労力もかかる割には報われない(笑)。出演者のメンツの魅力だけに頼っているフェスよりも、広島のSETSTOCKなど地域と密着したフェスや、観客側に「踊ることを楽しむ」動機が定着しているMETAMORPHOSEなど、出演者以外に特色を持ったフェスのほうが長期的なポテンシャルを持っていると思いますし、地域活性化やツーリズムを含めた、さらに大きな産業になる可能性があると思います。「音楽」に縛られず、アートや食など、ほかのジャンルも飲み込んだ総合的なフェスに拡張していけば、減り続ける「若者」以外のシニア層などを開拓することもできますからね。(談)

湯山玲子(ゆやま・れいこ)
出版、広告ディレクター。日本大学藝術学部非常勤講師。著書に、『クラブカルチャー!』(毎日新聞社)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)など。カルチャー、女性の実態を鋭く読み解く視点に定評がある。9月開催の野宮真貴リサイタルをプロデュース予定。


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