サイゾーpremium  > 特集  > 元電通社員の名もちらつく"中田英寿財団"...
第1特集
醸し出す雰囲気は、もはや宗教指導者!?

元電通社員の名もちらつく"中田英寿財団"慈善ビジネスの怪

+お気に入りに追加

──引退から約3年で、50カ国以上も旅した中田。そこから見えてきたのは、世界が抱える環境と貧困をめぐる問題だという。「そんなこと、旅しなくてもわかるだろ!!」というツッコミはさておき、問題を解決すべく設立された"中田財団"の実情とはいかに?

 先月22日、元サッカー日本代表の中田英寿が、自身が代表理事を務め、環境問題や貧困問題の解決を目的とする財団法人「TAKE ACTION FOUNDATION」の設立を発表した。この財団の活動目的は、引退した元日本代表選手(コラム参照)らで結成されたチームを各地に派遣し、試合やイベントを実施して、地域の活性化を図るとともに、各試合の入場料収入を元にアジア・アフリカなどの貧困国の子どもたちへサッカーボールを贈るといった支援をするもの。傍目には、立派な活動内容と映るかもしれないが、同財団設立を受けて、サッカー界では"嫌中田ムード"が、より一層強まったという。

「所属事務所のサニーサイドアップ(以下、SSU)と中田が、またうさんくさいサッカービジネスを始めた、と見る向きが多い。というのも、この財団運営にあたって資金面でバックアップしているのが、エステ大手のTBC。『2年ぶりに中田がCMに帰ってきた!』なんて大々的に報道されたけど、中田がTBCの広告塔になったワケは、財団のスポンサーになった交換条件というだけです」(サッカー専門誌記者)

 同氏が「うさんくさい」と指摘するのは、ほかにも理由がある。これまで本誌でもたびたび報じたが、中田の所属事務所であるSSUが仕掛けた「ホワイトバンド問題」の前例があるからだ。05年から始まったホワイトバンド・プロジェクトは、貧困救済に向けての提案とその支持を集めることを目的として、シリコン製の白い腕輪を1本300円で販売するというもの。しかし、その実態は「世界の貧困問題についてみなさんも考えましょう」という啓蒙・広報活動だけで、売り上げそのものが直接的に貧困国へ援助されるわけではないシステムに対し、 「募金詐欺ではないか?」という多くの批判を浴びた。そして、昨年10月には、同プロジェクトの中心となっていたNPO法人「ほっとけない 世界のまずしさ」も解散しているのだ。

「まずしい世界をほっといて、ひっそりと解散(笑)。そしたら、すぐに財団設立の話が持ち上がった。これじゃ、『ホワイトバンドが終わったから、次のビジネスの仕掛けに打って出たのでは?』と勘繰られても仕方ない。中田本人にはその意思がなくても、SSUやその周辺に、慈善やチャリティを名目に、利益を生み出そうとする人間がいるのでしょう」(同)

財団に名を連ねるのは "エコ商法"の元電通社員

 そこで、同財団の関係者を調べてみると、まず、理事には前千葉大学学長の古在豊樹という名前がある。古在氏は、『ALL YOU NEED IS GREEN コザイ教授とツギハラ社長が考える「環境と貧困」』(講談社)という、SSU社長・次原悦子との共著もある。次原氏と古在氏の関係について、SSUに近い人物はこう説明する。

「古在氏は緑資源の利用や開発を目的とした園芸学の権威。05年に千葉大学学長に就任した当時、大学のイメージアップを図り、SSUにPRを依頼してきたことで、次原さんと知り合った。それ以来、近しい関係を保ちながら、互いに意見交換などをして、協力しあっているようです」

 また、評議として名を連ねているのが、環境広告を中心としたメディアエージェンシー・サステナの代表を務めている、マエキタミヤコという人物。SSU関係者は続ける。

「彼女は、もともと電通の社員だったんです。電通時代から、次原さんとは昵懇の間柄で、ホワイトバンド・プロジェクトにも深く関係し、同プロジェクトの"もうひとりの仕掛け人"とも言われています。そして、エコブームの火付け役としても一部では有名で、環境雑誌の『ecocolo』(エスプレ)の創刊にも参加しています。一言でいえば、環境問題をカネに換えるプロフェッショナルですよね」

 なるほど、同財団には"環境・貧困問題の日本代表"ともいえるメンバーが揃っているというわけだ。もちろん、彼らの活動を間違ったものだと糾弾するつもりは毛頭ない。ただ、彼らが執心し、立ち向かっている諸問題は、長期的な視点に立って活動を持続していくことが重要だとされているにもかかわらず、ホワイトバンドをめぐる活動を、たった3年でやめてしまった前例がある。それだけに、『同財団もホワイトバンドの二の舞いになってしまうのではないか?』という疑念を多くの人が抱くのも不思議ではないだろう。

 一方、日本サッカー協会(JFA)関係者も、憤りを隠せない。

「協会の犬飼(基昭)会長が『(中田の財団設立の報道を受けて)何も知らないし、わからない』と漏らしたように、事実、JFAには、なんの事前連絡もなかったようです。中田本人は『引退した選手が、何をやろうと勝手だろう』と思っているのかもしれないですが、彼らのやろうとしていることは、サッカーの試合を行って収益を上げるという、JFAとバッティングする事業内容。それだけに、『JFAに対し、なんらかの説明があってしかるべきではないか?』という論調が、JFAサイドでは大半を占めています。こんなやり方では、JFAがナーバスになるのは当たり前の話ですよ」

 現時点で発表されている同財団の今後の展開としては、まず4月上旬に、引退した元日本代表選手らで結成されたチーム「TAKE ACTION FC」の試合が予定されている。開催地は中田の故郷でもある、山梨県甲府市。しかし、「そこにも問題が潜んでいる」と前出のサッカー専門誌記者は指摘する。

「問題点は2つあります。国内でサッカーの有料試合を開催する場合、JFAに開催申請を行わなければいけない規定があるんですが、申請はまだない(1月末時点)という状況だけあって、本当に開催できるのかどうかすら怪しい。また、同地には、ヴァンフォーレ甲府というチームがある。地元クラブとはいえど、07年にJ2に降格した影響もあって、人気に陰りが出ている。そんな状況下で、TAKE ACTION FCの開催試合と、ヴァンフォーレが戦うJ2の試合が重なってしまった場合、中田の出場する試合に観客が大勢流れるのは、目に見えている。ヴァンフォーレ側も、そういった事態を恐れているようです」

 つまり、同財団が目標として掲げる地域活性化どころか、逆に地域破壊につながる可能性さえあるというのだ。

 電撃的な引退から、はや3年近く。サッカープレーヤーとしては"一流"の名をほしいままにした中田だが、現在の彼には厳しい声も多いのが現実のようだ。このような状況を見る限り、サッカー選手から旅人へ、そしてビジネスマンへ、という転身は、「迷走」ととらえられても仕方ないだろう。

(文/野村裕介)

「アイツの世話になりたくない」と、一部の選手は怒り心頭!
中田財団のサエないチーム事情

「TAKE ACTION FOUNDATION」、通称"中田財団"によって結成される「TAKE ACTION FC」には、元プロサッカー選手を登録制という形で募り、選手たちに報酬を支払うことで、セカンドキャリア(引退後の仕事)を創出する、というもうひとつの目的もある。チームメンバーとしては、現在のところ、名波浩、前園真聖、澤登正朗、名良橋晃ら、約20名ほどの名前が挙がっている。

「よく知られていることですが、プロスポーツの選手寿命は、非常に短い。プロ野球の場合、平均選手寿命は約9年ですが、Jリーガーだとさらに短く、約5〜6年。平均引退年齢は26歳という非常に厳しい世界です。毎年150人もの選手が引退を余儀なくされています。しかも、そのほとんどが、所属チームのレギュラーにもなれず、日本代表なんか夢のまた夢といった選手たちです。

0903_maezono.jpg
元日本代表の前園真聖。"中田財団"チームのエース? 彼もサニーサイドアップに所属。

 一方、中田財団の現状のメンバーを見る限り、そのほとんどが代表に選ばれていた選手。登録制でチームを作ると言っているが、一部の有名選手以外の引退選手たちをどこまで救ってあげられるのか、疑問ですね。彼らが、中田財団の主催する試合に出場しても観客が集まるとは考えられない。結局は、名の通った引退選手たちによる、シニアチームといった形に落ち着くのものと予想しています」(スポーツ誌編集者)

 また、現在も高齢選手として活躍している、元日本代表のあるFWは「引退してまで、アイツの世話になんかなりたくねえよ!」と怒りを露わにしたという話も。中田財団、前途多難といったところか。


Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年5月号

NEWS SOURCE

サイゾーパブリシティ