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第1特集
【反権力座談会】ニセ領収書や自転車泥棒をでっちあげる、"国家の犬"たちの悪行

止まらない警察官たちの暴走!新聞が報じない"桜タブー"を暴く

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 "桜タブー"として新聞やテレビが扱わない、警察の組織ぐるみによる犯罪に真っ正面から迫った映画『ポチの告白』が公開される。なぜ警察官の不祥事が絶えないのか? 警察組織の浄化は可能なのか? 権力に対峙する3人の男が、それぞれの立場から警察の腐敗構造に刃を向けた !!

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写真右/寺澤有氏、中央/高橋玄氏、左/黒木昭雄氏。

──警察組織の腐敗ぶりを大胆にえぐり取った映画『ポチの告白』を完成させた高橋玄監督、原案協力として同作に取材資料を提供した"反警察"ジャーナリストの寺澤有氏、そして元警視庁警察官として警察内部を熟知するジャーナリストの黒木昭雄氏に集まっていただきました。映画の中で描かれている警察の不正を例に、警察不祥事がなぜ絶えないのか考えていきたいと思います。

寺澤 高橋監督は脚本の段階から「映画はエンターテインメントじゃなきゃダメだ」と言ってましたが、純粋に映画として面白いものに仕上がりましたね。僕は、フリーのジャーナリストとして警察や官僚の不祥事を告発して20年になりますが、なぜそれだけ続けられたかというと、高尚な主義主張があったからではなく、記事が売れるから。雑誌出版社もできれば警察批判ネタは避けたいけれど、新聞やテレビが報道しない"警察不祥事"の記事は読者からの反響が大きいからやるわけです。僕がこれまで書いてきた告発記事によって処分された警官は、公表されているだけで100人近くはいます。僕の取材記事が発端になって悪い警官が逮捕されるのが、読者は痛快なんです。


黒木 警察に20年勤めた自分にとっては、『ポチの告白』は衝撃的な映画。「ここまで日本の警察はひどくないだろう、これはドラマなんだ」と自分に言い聞かせながら観ましたが、マジメな主人公の巡査が署内で出世していくにつれ悪事に手を染めていく過程は、「いや、これはドラマとは言い切れないぞ」と思わせる迫力がありました。

高橋 僕は"反警察"というイデオロギーがあって作ったんじゃない。これまで独立プロとして映画を撮り続けてきましたが、興行の世界にいると、周囲にはグレーゾーンの人たちが多いんです。右翼もいれば、市民運動家もいて、チンピラもいる。警察の世話になる人間が、身近だったということです。それこそ警察からの天下りを受け入れているメジャーな映画会社が手がけないものを、独立プロである自分が作ったわけです。

ノルマに追われた警察官が善良な市民を自転車泥棒に

──『ポチの告白』は、04〜05年にかけて撮影されました。捜査実績を上げようとした現職警部が、捜査費用を捻出するため覚醒剤密売などに手を染め、最終的には覚醒剤や拳銃の不法所持で逮捕された北海道の稲葉事件(02年)や、道警の裏金作りが騒がれた頃でしたが、それらの事件に触発されたわけではないんですか?

高橋 直接は関係ないですね。特定の事件を告発するというより、もっと警察全体に対する庶民の感情を反映した映画にしたいと考えたんです。ただ、映画を作る上でいろいろと警察内部の話を聞いているうちに、かなりデタラメな組織であることがわかり、同時にこれは面白いと感じた(笑)。

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寺澤有氏。

寺澤 警察官の日常を、笑いを交えてうまく描いていますよね。交番の警官が盗難自転車をわざと路上に放置して、酔っ払いが乗るのを待ち構えて逮捕するシーンがあるけど、あれは僕がJR豊田駅近くの交番で目撃した実話です。

黒木 90年代に警察が「POT」という携帯端末を導入して盗難自転車を照合するようになってから、そういう悪質な検挙が始まったんです。哀しいけど、全国的にはびこっている行為。警察官の質の低下を象徴しているよね。当時、まだ警官だった僕は、それを見て「マズいだろう」と思った記憶がありますが、あくまでも少数派の警官ですよ。とはいえ、取り締まる側の警官が犯罪を犯していることは、懲戒免職に値しますがね。


寺澤 あの交番には放置自転車が長年あったから、代々やっている感じでしたね。その警官たちには、罪悪感はないんだと思う。やがて、彼らはノルマ達成のために、拳銃や麻薬を自作自演でヤラセ摘発するようになりますよ。

──警察上層部は警察予算を獲得するため犯罪検挙率を上げるべく、現場に過酷なノルマ主義を強いていると聞きますね。

黒木 寺ちゃんとは10年来の付き合いになるけど、そこまで言うのは思い込みが強すぎるよ(笑)。でも確かに、年収1000万円以上のベテラン警官が、新人巡査でもできるような自転車の取り締まりしかやっていないという状況は、あまりにも哀しいね。もっと凶悪犯罪や暴力団に対して体を張って、正義感を見せてほしい。国民が警察に求めているものを、警察は理解しないとダメだと思う。

高橋 以前、僕の友人が警官に道を尋ね、教えられた通りに車を走らせたら一方通行だったので逆行したところ、出口で警官が待ち構え、違反キップを切られたことがある。黒木さんをイジメるつもりはないけど、「問題のある警官は少数派」で済む問題レベルではないですよ。我々の税金で給料をもらっている警察官が国民を陥れるなんて、とんでもない!

黒木 それはもう、監督の言う通りです(苦笑)。

高橋 庶民側は、警察の横暴に抵抗するすべがないんです。僕はこういう見た目なので、若い頃からよく職務質問されるけど、警官の態度や言葉遣いが高圧的でオカシイでしょう? 話してみると、彼らは警察の不祥事が報道されている新聞すら、ろくに読んでいない。市民相手に職務質問で威張っている一方で、市橋達也(07年、リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件の容疑者)とか、凶悪事件の容疑者をやすやすと捕り逃がしている。そういう人たちに、市民の安全を委託しなくちゃいけないというのが怖いですよ。不景気なご時世の中で、高給をもらっているんだから、公務員である警察官はもっと厳しく見られてしかるべきです。今回、映画の着想を得たのは、桶川ストーカー殺人事件や栃木リンチ殺人事件(ともに99年)。どちらも、被害者の家族は警察に何度も助けを求めたのに、警察は事件性を認めず、動こうとしなかった。仮に地元の暴力団に助けを求めたら、一晩で片付きますよ。悪い警察官は少数派だと黒木さんは言うけど、それだったら暴力団の中にもいい人はいるわけです。阪神・淡路大震災では山口組が神戸で救援活動をしていたのに、ほとんどのマスコミは報道しなかったでしょ? 僕も良心的な警察官を知っています。でも権力構造としての警察全体のイメージが、あまりにも国民感情と乖離しているんです。

黒木 僕も、神戸大学院生リンチ殺人事件(02年、大学院生が暴力団員に拉致監禁されたのを現場にいた警官たちが見逃し、さらに捜索を怠った事件。国家賠償裁判で初めて、警察の非が全面的に認められた)など、取材して本にしました。助けを求める市民を見捨てた警察官は、これからは不作為の罪(公権力を行使すべきなのに、しない罪)に問われますよ。

寺澤 そもそも、警察官を教育・訓練する警察学校の時点で、不祥事が起きているから深刻ですよ。たとえば、秋田県警察学校生が警察手帳を悪用して、複数の女性ドライバーを恐喝し、強制わいせつ行為に及んだ事件(93年)があった。高校を卒業したばかりの純真な若者も警察手帳や拳銃を突然持たされて、舞い上がってしまうんですよ。

ニセ領収書、ヤラセ摘発......バレなければ罪じゃない

──映画の中では警察幹部の遊興費を捻出するために領収書を偽造する"裏金作り"や、過酷なノルマを達成するために暴力団などから横流しされた拳銃を街なかに隠し、自分で押収したふりをするという"クビなし拳銃"の実態が描かれています。警察による組織ぐるみの犯罪を告発した重大なシーンですね。

高橋 僕自身は、そうは思わないんだ。ニセ領収書もノルマを達成するためのイカサマも、どこの民間企業でもやっていること。もちろん、普通の企業は拳銃や麻薬は扱わないけどさ(笑)。マスコミ業界にだって、寺澤君が以前追っていた、新聞社が発行部数を水増しするための"押し紙問題(多くの新聞社は販売店に契約者数以上の部数を押し付けている)"があるしね。ただ、悪質だなと僕が感じるのは、警察官の場合はそういう行為が、世間にバレない限りは処罰されないということ。

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高橋玄氏。

黒木 警察の管理職は、"組織防衛"という言葉を呪文のように唱え、不祥事を世間に漏れないようもみ消す。そして、組織ぐるみの不祥事であっても、現場の警察官個人に責任を全部負わす。ニセ領収書に関して言えば、僕も新人時代、何もわからないまま先輩に頼まれて何回か書きました。1回につき3000~5000円ぐらいですが、公安部門なんかはケタがひとつ増えるらしい。また、警察官は転勤するたびに自分の印鑑を署に残していく伝統がある。いろんな種類の印影があったほうが、ニセ領収書を書くのに役立つからです。みんな、罪悪感はないんですよ。ほとんどの警察官が、裏金事件として大々的に報道されてから、初めてニセ領収書の総額(04年、道警が9億6272万円を返還したのを筆頭に、全国で12億円余を警察が国などに返還)の大きさを知って、愕然としているんです。


高橋 ところで、黒木さんが警察を辞めたのはなんで? 不祥事の当事者なの?

寺澤 "下剤ビール事件"というのがあったんですよね(笑)。

黒木 う~ん、簡単に言えば、上司との折り合いが悪くなったことが原因です(苦笑)。警視庁第二自動車警ら隊に所属していたとき、慰安旅行があったんですが、出発前に後輩たちが上司の酒にいたずらをしようと計画していたので「冗談の通じない上司だぞ」と僕は注意したんですよ。その企てが下剤を入れる悪質なものだと知らず、僕は宴会でその上司に「一緒に飲みましょう」とビールを勧めたわけです。ところが、その上司は下剤の件を察知しており、僕を実行犯だと思い込み、かたくなに僕の注ぐビールを飲もうとしなかった。それで、「飲め」「飲まない」の押し問答をしているうちに、酔っぱらった勢いでつい上司に対して手を上げてしまったんです。そのときは始末書処分で済んだのですが、1年4カ月後に「黒木に対して納得のいく処分をしないと、本件をマスコミに訴える」という匿名のタレコミがあり、今度は懲戒処分。同じ事件で2度も処分されたんです。

──宴会でのいたずらが事件に発展するというのも、警察組織の特殊性・閉鎖性を感じさせますね。

黒木 さらに、新しい転任先でもヨットクラブを作っただけで「無届けで危険なマリンスポーツのクラブに参加し、船に乗った」などと始末書の提出を求められたので、バカバカしくなって、辞めました。退職金で最初の警察告発本を自費出版し、残りは自宅のローン返済です(笑)。

高橋 退職金の使い道まで聞いてませんよ(笑)。

"警察不祥事"ではなく"警察犯罪"と報道すべき

──警察官の自殺者は、年間平均30人以上にもなります。安定した給料をもらっているはずの警察官の自殺が多いのはなぜでしょうか? 不祥事への責任感からでしょうか。

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黒木昭雄氏。

寺澤 不祥事の責任を感じている警察官が、どれだけいるのかは疑問。自分のキャリアに傷がついてはならないと、不祥事をもみ消して出世していくキャリア組ばかりですよ。むしろ、交番や警察署での拳銃自殺が最近多発していることが僕は気になる。

黒木 一部報道によれば、08年の警察官の拳銃自殺は9件。この10年で最悪の数字です。

高橋 警察に限らず、世の中全体が暗いからね。警官の場合は、拳銃が手っ取り早いからじゃないの?


寺澤 警官の自殺の多くは、職場でのイジメが原因のようですね。死ぬときぐらい、自分をイジメた上司にひと泡吹かせてやろうという意識があるんじゃないかな。

黒木 警官が自殺しても、遺書が出てこないという問題も起きています。00年に千葉県警の女性警官が首を吊って亡くなったんですが、最初に発見した遺族が見ていた遺書を警察が押収して存在しなかったことにしている。僕がおかしいと千葉県警を取材したところ、やはり遺書はあったんです。そこに書かれていた自殺の理由は、やはり上司によるイジメ。警察は自分たちに不都合なものは平気で隠してしまう。遺書を隠した警官は、処分すらされていません。

──警察組織を、はたして浄化することは可能でしょうか?

寺澤 一般企業のように倒産するリスクのない警察の再生は無理だと思うけど、不祥事の隠蔽に手を染めているキャリア官僚から警察庁長官を選ばずに、大臣と同じように民間から起用できるようにすれば、少なくとも組織のトップは汚れていない人間になりますよ。

黒木 いや、どんな人間も警察組織にいるとダメになってしまう。僕は警察に23年間勤めて、本当嫌になった(苦笑)。27万人いる警察官全体のわずか0・2%のキャリア官僚が牛耳っている警察組織は、共産主義国家以上に共産主義社会なんだ。警察内部の不正を追及するはずの監察は不正を隠す側になっており、警察を管理する役割の公安委員会も形だけの存在。僕のアイデアは常駐でなく、大きな警察不祥事が起きた際に、外部の人間による監察チームを組み、警察内部を調査すること。少なくとも、あからさまな違法行為はできなくなるはず。

高橋 でも、識者とかがメンバーに選ばれるわけでしょ? それだと、警察の息のかかった顔ぶれになる危険性がある。僕は情報公開を徹底させることだと思います。マスコミは"警察不祥事"だなんて報道するけれど、どれも"警察犯罪"ですよ。「秋葉原通り魔連続不祥事」だなんて言わないでしょ?マスコミが勝手に自主規制して"不祥事"と呼んでいるだけですよ。まず問題のある警察官の実名を公表させる。さらに国家賠償ではなく、問題にかかわった警察官の個人賠償にすればいいんです。

寺澤 警察官個人が何千万円もの賠償金を払わなくちゃいけないなら、警察官の意識が変わるでしょうね。

黒木 問題を起こした公務員に対しては賠償金を請求できる"求償権"というのが、国家賠償法に存在します。まだ判例が少ないけど、現実性のある対処法です。

高橋 それと日本の教育全般の問題だけれども、せめて警察官になる人間には警察学校でモラルをきちんと再教育することだね。「お前ら、人間としてもう少し格好よく生きようぜ」とね。

(構成/長野辰次)
(写真/田中まこと)

寺澤 有(てらさわ・ゆう)
ジャーナリスト。1967年生まれ。警察、検察、裁判所、記者クラブなどの組織的腐敗を追及している。平沢勝栄(元警察庁キャリア)衆議院議員と武富士から名誉毀損で訴えられたが、どちらも勝訴。主な著書に『警察庁出入り禁止』(風雅書房)など。『ポチの告白』には原案協力および裁判所の職員役で出演。

高橋 玄(たかはし・げん)
映画監督。1965年生まれ。92年にインディーズ映画『心臓抜き』で監督デビュー。以後、宮崎学原作の『突破者太陽傳』(00)、100万部ベストセラー原作の映画化『GOTH』(公開中)などアウトローたちの生きざまを活写している。最新作『ポチの告白』は、逮捕前の堀江貴文氏が1000万円出資していたことでも話題に。

黒木昭雄(くろき・あきお)
元警察官、作家。1957年生まれ。76年に警視庁に採用され、23年間の在職中に23回の総監賞を受けた。99年に依願退職し、以後は警察不祥事を糾弾するジャーナリストに転身。『警察腐敗』(講談社)、『警察はなぜ堕落したのか』(草思社)ほか著書多数。06年には初の小説『臨界点』(講談社)を上梓。

『ポチの告白』

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市民から愛される勤勉な警察官のタケハチ(菅田俊)は、その実直さゆえに上司(出光元)の命令に言われるがままに従い、次第に裏金作りや暴力団との共犯的行為に手を染めていく......。警察内部の組織ぐるみの犯罪を白日の下にさらすとともに、新聞が警察問題を報道できない元凶である記者クラブ制度や警察の圧力に裁判が左右されている弊害にも厳しく言及している。上映時間3時間15分の堂々たる社会派エンターテインメント大作。配給はドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』のアルゴ・ピクチャーズ。1月24日より、新宿K's cinemaにて公開。監督・脚本/高橋玄 原案協力/寺澤有 出演/菅田俊、野村宏伸、川本淳市、井上晴美、出光元、宮崎学ほか
(C)2008 GRAND CAFE PICTURES. All rights reserved.



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