『ワンダーウーマン』――女性解放のシンボルか、ボンデージ・コミックか?女性闘士の苦悩

『ワンダーウーマン』

第一次世界大戦の最中、女性闘士の島に住む王女ダイアナは墜落した飛行機パイロットを救出した。彼の口から驚くべき事実が語られ、戦争を終結すべく彼女はロンドンに向かう。

監督:パティ・ジェンキンス、出演:ガル・ガドットほか/8月25日全国劇場公開予定。


『ワンダーウーマン』は6月1日に日本を除く世界で公開され、週末だけで250億円を超える興行収入を記録した。これは女性が監督した映画で史上最大のヒットだ。

 ワンダーウーマンはスーパーマンやバットマンと同じDCコミックスのスーパーヒーローで、本名はダイアナ。古代ギリシャの神話に書かれた女性だけの戦闘部族アマゾネスのお姫さまだ。時は第一次世界大戦。アマゾネスの島に米軍のパイロット、スティーヴが不時着し、ドイツ軍の毒ガス(当時の大量殺戮兵器)を阻止しなければ、と言う。ダイアナは助けに行きたいと言うが、母は反対する。「男には、助ける価値はありません」。実はアマゾネスは、かつて男たちの奴隷として虐待されていたからだ。

 監督のパティ・ジェンキンスの長編デビュー作『モンスター』(03年)は、父や男たちに性的に虐待され続け、ついに銃で逆襲した女性死刑囚アイリーン・ウォノスの実録映画だった。ジェンキンズはその後の14年間を、『ワンダーウーマン』を監督するために費やした。

 ロンドンに着いたダイアナは、政治家と軍人の会議で「女なんか入れるな!」と怒鳴られる。当時の英米の女性に参政権はなく、女性たちは権利を求めて激しい戦いを続けていた。そして英国の婦人参政権運動の闘士エメリン・パンクハーストは『ワンダーウーマン』の原作者ウィリアム・モールトン・マーストンと会っている。

 1911年、アメリカのハーバード大学の学生たちはパンクハーストを講師として招待したが、当時のハーバードは女人禁制だったので、講演は学外のホールで行われた。客席の最前列にいた学生マーストンは、30年後に『ワンダーウーマン』の生みの親となった。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.4.28 UP DATE

無料記事

もっと読む