「おっさん向け少年マンガ」に違和感を覚える――幽霊、マンガの国は幸福な黄昏の中で。

――ゼロ年代とジェノサイズの後に残ったのは、不愉快な荒野だった?生きながら葬られた〈元〉批評家が、墓の下から現代文化と批評界隈を覗き込む〈時代観察記〉

本誌と同じく年末進行の号なので、お鉢が回ってきたという経緯。特集ネタとしてマンガは鉄板だからね。

 マンガの国の住人なので、呼吸するようにマンガを読んできたが、近年は電子書籍ばかり買っている。本棚のキャパシティが限界なので実に便利だが、気がついたら2000冊を超えていた。もっとも、半分以上が積ん読状態なので、この先、引きこもっても死ぬまで暇を潰せるだろう。しかし、大半はセールで買った旧作ばかりだ。現在進行系の雑誌やウェブコミックのチェックはマンガ編集者時代の職業的義務感というか、強迫観念で欠かすことができないのでシーンの動向は把握しているが、時々、苦行のような気もしてくる。

 いや、編集者になった20年前から、青年マンガとは違う「おっさん向け少年マンガ」の空気には違和感があるのだが、この20年で大きく裾野が広がったのは、そんなクールジャパンな界隈だけだった。あとは女性向けのBLくらいか。いわゆるオタク向けのマンガとして括られている界隈だが、筆者が作っていたのはまさにそのド真ん中だ。なのに居心地が悪かったのは、現役時代、先輩たちから「君が作るべきマンガは『週刊少年サンデー』であって、『週刊少年ジャンプ』ではない」とかなんとか批判されてきたからだ。それがこの界隈のローカルルールなのかな、とは思ったが、結局、手がけたマンガはことごとく先輩たちの不興を買っていた。

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