最終回「友だちなんかいない」

SNS隆盛の昨今、「承認」や「リクエスト」なるメールを経て、我々はたやすくつながるようになった。だが、ちょっと待て。それってホントの友だちか? ネットワーク時代に問う、有厚無厚な人間関係――。

『ほとんど人力』(小学館)

 はじめにお知らせをひとつ。

 当連載が書籍化されることになった。

 タイトルは「友だちなんかいない」。発行は太田出版で、発売時期はたぶん2月頃になる。乞うご期待。

 連載を開始した当初、私は「友だち」というテーマを転がすだけで一冊の本を作ることに対して、懐疑的な気持ちを抱いていた。たしかに、「友だち」は、大きなテーマだし、21世紀の日本を動かしている主要な原理のひとつでもある。とはいえ、特段の取材もせずに、自分の体験とアタマの中の考えだけで「友だち」について書き続けていれば、いずれ限界はやってくるはずだ、と、そう思っていた。なんというのか、ありていに言って、私は、このテーマに自信が持てなかったのである。

 ところが、書き始めてみると、「友だち」の周辺には、いくらでもエピソードが転がっている。

 というのも、「友だち」は、通常の意味でいう、「同性の仲の良い知人」という立場にとどまる存在ではなかったからだ。実際のところ、それは、ブラック企業の経営理念そのものであり、別の場面では愛国心の代用品としてネトウヨをドライブしていたりする。

 そうなのである。「友だち」は、実物の人間である以前に、そうあってほしいと我々が考える「思想」であり、そうであらねばならぬと現代の日本人が信奉している「信仰」なのだ。その意味で、「友だち」は、「友情原理主義」という思想の顕現そのものだ。

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