写真偵察機と東京大空襲

1945年3月。東京への攻撃の数時間後。(写真/著者蔵)

 小説家の百田尚樹が東京都知事選の際に、東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」と指摘して議論を呼んだことは記憶に新しい。が、その東京大空襲を指揮したカーチス・ルメイが百田の盟友である安倍晋三の大叔父・佐藤栄作内閣の閣議決定により、航空自衛隊創設に貢献したことを理由に勲一等旭日大綬章を授与されていることは、どれだけ知られているだろうか。

 1945年の3月から5月にかけてルメイの指揮の下、東京への大規模な空襲が行われた。これらを総称して東京大空襲と呼ぶこともあれば、一夜にして10万人以上ともいわれる犠牲者を出した3月10日の空襲のことを示すこともある。いずれにせよ、日本の戦争継続意思をくじくための非戦闘員を含めた無差別爆撃であった。したがって、人間を対象とした「大虐殺(genocide)」という言葉よりは、人間と環境全てを含んだ「殲滅(annihilation)」のほうが正確かもしれない。ここで百田の発言に細かく立ち入る紙幅はないが、37年のゲルニカから重慶、ベルリン、ドレスデンなどへと続く枢軸国・連合国による無差別爆撃の延長線上に東京大空襲があり、そのエスカレーションの極点として広島と長崎への原爆投下があるということだけ指摘しておこう。

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