子どものケアからカフェの仮設まで 被災者の心の支えとなる震災で試された宗教の理念

『震災復興と宗教』(明石書店)

 今回の特集に絡めていえば、東日本大震災は、ここ数十年で最も宗教の真価が試された出来事だろう。発生当初から、物資や運送手段が不足していた時期には、多数の宗教団体関係者が被災地の支援に駆けつけた。そこから見える宗教の在り方を、今一度確認してみたい。

 震災から2年半以上を経た今、復興から取り残され、いまだ満足のいく住まいや職を得られないでいる人の状況は深刻さを増している。そのような課題に直面したときこそ、宗教の存在価値とは何かが問われているともいえる。震災発生当初から、現在に至る震災と宗教の関わりは、いかなるものだったのだろうか?

 大正大学宗教学会では、震災発生1カ月後に「震災と宗教」研究会を設立。被災地へのフィールドワークを行い、その活動を調査してきた。同学会が発行する「宗教学年報27」の研究ノートを参考に、震災と宗教を概観してみたい。

 大正大学非常勤講師の星野壮氏によれば、この災害に対する宗教者の動きは素早く、発生直後から地元の宗教施設は被災者を受け入れる避難所として機能したほか、多くの宗教者や教団が支援物資を携えて現地入りした。また、宗教者の横のつながりとしては、大阪大学准教授の稲場圭信氏がフェイスブック上に、「宗教者災害救援ネットワーク」を立ち上げたほか、東京大学教授(当時)の島薗進氏によって「宗教災害支援連絡会」も発足し、情報交換の場として、今に至るまで機能している。(同年報「宗教者の活動の概況について」星野壮)

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