政府支配下にあった芸術の変化 屋台に並ぶ宗教画たち北朝鮮への影響は?

──2005年から翌年にかけて、北朝鮮と国境を接する中国・延辺朝鮮族自治州の国境の町を歩いていると、キリストや聖母マリアなどの宗教画を土産物として売る屋台が、あちこちで目についた。近くに教会などがあるわけでもないのにだ。その訳を、韓国に逃れて洗礼を受けた脱北者が教えてくれた。

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「美術やスポーツなど、なんでも英才教育を施す北朝鮮には絵心のある人間も多い。中国や韓国の宗教関係者が、そういう人々に絵を描かせて買い取りながら布教を行っているんです。北朝鮮の国境地帯には、体制に秘密の『地下教会』が結構ありますよ」

 北朝鮮においては本来、アートは「金王朝」による支配の道具として利用されてきた。その中心となってきたのが、1959年に設立された万寿台創作社だ。

 同社は、平壌美術大学卒などのエリートを中心に、1000人のアーティストを含む4000人のスタッフを擁する。故・金日成主席や故・金正日国防委員長の肖像画制作はこの集団が一手に担っており、彼らを"神格化"する上で重要な役割を果たしてきた。

 しかし近年、同社の動きにはやや違ったものが見られるようになった。

 米国議会系の短波放送「ラジオ・フリー・アジア」は6月14日、北朝鮮最高のアーティスト集団である「万寿台創作社」が外貨獲得のため、「絵画のインターネット販売に乗り出した」と報道した。

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