もはや"黒人の猿真似"ではない、日本語ラップ生誕30年の進化と成熟

 ダボついたシャツとパンツに身を包み、韻を踏んでラップする──。そんなヒップホップのスタイルが日本人に似合わないと鼻で笑うのは、子供のリアクションでしかない。一方で、音楽メディアの惹句に煽られてシーンのトレンドを消費するのも同じことだろう。なぜなら、30年の月日を経て熟成された日本語ラップは、もうそうした次元にいないのだから。これは、そんなカルチャーのリアルでフレッシュな知性を感じられる、"大人"のためのヒップホップ特集である。

(写真/有高唯之)
(モデル/鎮座ドープネス)

 諸説あるが、1970年代にニューヨークはブロンクスのスラム街に住む黒人たちによって産声をあげたといわれるヒップホップ。ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティの4要素から成るそのカルチャーは、今やグローバルに享受されているが、日本に伝播したのは80年代初頭。それから約30年が経過し、"日本語ラップ"はすっかり成熟した──。

 下のコラムは、当特集【2】で登場する音楽ライター・磯部涼氏が作成したもので、これを見れば日本語ラップの成長過程はあらかた把握できるのではないか。ただ、いとうせいこう、スチャダラパー、ライムスター、キングギドラ......と、読者の世代によりキーとなる人物・グループのとらえ方はまちまちのはず。そこで、同じく磯部氏の談話で構成した本誌の昨年11月号の記事「闇社会の悲哀をリリックにのせる"ハスラー・ラップ"という哀歌」をかいつまみながら、まずはこの10年で日本語ラップに何が起こったのかを整理したい。

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