全国各地で続々と創刊される「美少女図鑑」ヒットのヒミツ【1】

地方在住の普通の女の子をモデルに、現地の街並みをロケ地にした写真が中心の無料冊子、「美少女図鑑」。

 新潟発の"幻のフリーペーパー"が全国に広がっている。「普通の女の子たちをモデルに、地方都市に美少女を増やし地域を元気にする」というコンセプトでスタートした「美少女図鑑」だ。
 
 同誌の発行サイクルは年に2回から3回、部数は最大でも2万部で地域限定配布、A5版64〜80ページのフルカラーという体裁。02年に新潟で創刊され、05年に沖縄版が創刊、08年9月には各地で同誌を発行するライセンス契約企業の募集を開始した。今年7月の時点で東京都を除く全国46道府県の発行元が決定し、来年3月までには、そのほとんどの地域で創刊号が出揃うことになる。

「『R25』を始め軒並み業績が下がっているフリーペーパー業界の中で、『美少女図鑑』はひときわ人気を博している。なぜこれほどの支持を集め、急速に全国各地に広がったのか、業界内でも注目が集まっていますね」(フリーペーパー誌編集者)

「新潟美少女図鑑」の発行元で、全国の「美少女図鑑」を統括するテクスファームグループ代表(新潟、東京、沖縄)の近藤大輔さんは、「儲からないことを前提として作っていることが『美少女図鑑』の強み」だという。

「フリーペーパー業界は参入しやすい。でも、簡単には儲からないから途中でやめてしまう企業が多い。メディアとして、それではマズイと思うんですよ。『美少女図鑑』は利益よりもまず先に、女の子を主役に地元を盛り上げようというコンセプトがあり、その裏には『美少女図鑑』の発行元となることで自分の会社をアピールしよう、というテーマがある。その両方を目的にしてやっているので『儲からないからやめようか』ということがない。途中でやめてしまうモノにならないように設計していこう、というのは『美少女図鑑』を始める時点で決めていました」

ライセンス企業に対する第一声は「儲かりません」

 昨年秋からライセンス契約を結び全国各地の発行元を決めていく中で、応募のあった発行元候補の企業に対して、まずは「『美少女図鑑』は儲かりませんよ」という、収支見本の資料を送るという。地元のサロンや美容院でメイクを施された地域の女性たちが、店舗や商品の宣伝をして広告収入で運営するというビジネスモデル。地元美容院のネットワークを中心に展開されるだけあって、確かに堅実なものではあるが、発行が年2~3回では年間の売上には上限があるし、その多くは人件費などの経費で出ていってしまうので、それ自体ではたいして儲からない。「それでもやりたいという人、覚悟の決まった方を信用してお任せしています」というのが近藤社長のスタンスだ。

 にもかかわらず、ライセンス契約を希望する企業が後を絶たず全国に広がった理由は、端的に言えば、「作っていて楽しい」ということが大きいのだという。

「僕は直接、制作にかかわっているわけではないのですが、全国をまわって発行元を覗いたりすると、現場で作っている人たちが本当に楽しそうにやっている。これは素晴らしいモノを提供できているな、という手応えはあります」

 作り手が楽しみながら作ること、それぞれの発行元が能動的に取り組むことで、潤沢な予算に恵まれなくても作品はよりよいモノとなり、その結果として読者にもよいモノを提供できるようになる。「美少女図鑑」の制作体制はそういった正のサイクルに支えられている。

あくまで女性がターゲット男性目線のエロにはしない

 各地の「美少女図鑑」を見るとわかるが、タイトルや判型はフォーマット化されてはいるものの、それぞれの中身は随分と違う。美少女モデルの写真のみが中心となったものから、モデルへのインタビューがふんだんに入ったものまで、雑誌としての作りは各地によって特色が出ている。

「新潟美少女図鑑」に載っている女のコ。カ、カワイイ!  デザインもおしゃれです。

 企画の内容が統一されていないのは、「そのほうが『美少女図鑑』のポテンシャルをより多く引き出せるから」と近藤社長は言う。自分とは違ったアイデアや発想を持った人を信頼して製作を任せる。その中から出てきたアイデアを社長自身が楽しみながら学び、良い企画があればほかの地域にも紹介していく。こうして相互のレベルアップを図ることで、「美少女図鑑」の内容はより洗練されたモノになっていくというわけだ。

 ただ、各地で構成が違うとはいえ「美少女図鑑」を作る上で最低限押さえておくべきことが2つある。ひとつは「女性が主役の女性向けのメディア」であること。もうひとつは「地域に根ざしたもの」であること。

「ライセンス企業は各県に1社と決めていて、その中で何をやろうと自由なんです。ただメディア全体として、『女性がターゲット』で『女性自身が活躍できるもの』という基本コンセプトは崩さない。

 仮に男性目線で手っ取り早く作ろうと思えば、ポルノやエロにしてしまうのが一番早いわけですよね。そうすれば、男性読者の数は増える。でもそれは絶対にやりません。あくまで女の子向けのメディアであり、女の子が活躍する場である、というのが今の時点での最低限の決まりですね。実際、手にとって持っていくのも、ほとんどが女性です」

街に美少女が増えたらうれしいじゃないですか?

 また、編集のスタッフは多くが男性であるだけに、女の子を傷つける表現がないように、というのは気を遣っている部分だという。

「地域に住む女の子が見て楽しいモノ、おもしろいモノであることが大切で、読者である女の子を傷つける表現がないことが大切だとはよく言っています。

 モデルの人気ランキングなんかもやり方によっては、モデルを傷つける可能性もあるので、できるだけ避けてますし、公開のカメラテストでも落選はない。カメラテストや登録会で集まったモデルリストの中から企画に合った女の子に声をかけて出演してもらうという方法をとっています」

 このように、「新潟美少女図鑑」という地域限定の自社メディアからスタートし、そこから徐々に大きなビジネスに展開していったというわけだ。

「ただ決して、最初から全国の展開を考えていたわけではありません。美少女が大勢出てくるフリーペーパーがあったら面白いだろうな、というシンプルな発想と、そこに『新潟』という地名を入れたら、地元の女性たちが"自分たちのモノ"だと思ってくれるんじゃないかなと考えました。あと、街にオシャレでキレイな女の子が増えたらうれしいじゃないですか?(笑) それがめぐりめぐって街を活性化させる。楽しんで続けてきた結果が、今のような展開に繋がったと思うんです」

今後は発掘した美少女を育ててアイコンに

 決して多くは儲からないが、運営・制作者自らが続けたいと思うメディアであること。そういった発想からスタートした「美少女図鑑」だが、今後は、全国各地の「美少女図鑑」を利用したタイアップコンテンツや、大手企業との連携などにも取り組み始めている。

 さらには、各地で発掘した美少女モデルの中から「美少女図鑑」のアイコンとなる女の子を育てていくことも考えているという。

「これまでは芸能プロダクションさんから問い合わせがあれば、無償で紹介していたのですが、今後は『美少女図鑑』のアイコンとして育てていきたい子が出てくれば、そういった子を自分たちの手で育てていくことも考えています」

さらに今後、WEB上で展開されている「美少女図鑑」の公式サイト、特に美少女モデルの情報に関しては、「もう少し充実した内容にしていきたい」と近藤社長は言う。街で配る「美少女図鑑」は女性のためのもの。そこに登場する女の子に興味をもった男の子は、WEBでモデルの情報をチェックする、という流れを作ることで、新たな展開が見込めることになる。

「美少女図鑑」はあくまで、女の子が主役の女の子のためのメディアだ。だが、街にオシャレでキレイな女の子が増えることは、男の子にとっても歓迎すべきことに違いない。

街に美少女を増やし地域を元気にさせる。「美少女図鑑」の取り組みはまだ始まったばかりだ。

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