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法社会学者・河合幹雄の法痴国家ニッポン【19】

コスプレ犯農薬混入事件に見る日本社会における「放火」の持つ意味

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法と犯罪と司法から、我が国のウラ側が見えてくる!! 治安悪化の嘘を喝破する希代の法社会学者が語る、警察・検察行政のウラにひそむ真の"意図"──。

今月のニュース

「群馬県の農薬混入事件」
2013年11~12月、アクリフーズ群馬工場製造の冷凍食品の購入者から、「異臭がする」などの苦情が寄せられ、農薬のマラチオンの混入が発覚。同社による製品の自主回収が実施されたものの、健康被害の訴えは全国で2800人以上にのぼった。群馬県警は捜査の結果、14年1月25日に同社契約社員の阿部利樹容疑者を偽計業務妨害の疑いで逮捕。阿部容疑者は容疑を認めている。

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居住する群馬県の地元近辺では「ONE PIECEのコスプレおじさん」として有名だったという阿部利樹容疑者。(写真はTBSのニュース番組より)

 2013年12月、マルハニチロホールディングス子会社のアクリフーズ群馬工場で製造された冷凍食品に農薬のマラチオンが混入されていたことが判明し、連日トップニュースとして報じられました。そして、事件発覚から約1カ月後、同社契約社員の阿部利樹容疑者が偽計業務妨害の疑いで逮捕され、容疑を認めるに至るわけですが、さらに過熱するかと思われた報道は、そこから一気にトーンダウン。続報としては、阿部容疑者の自宅からマラチオンが発見されず、翌2月に前橋地検が証拠不十分として同容疑者を一旦釈放したものの、群馬県警が器物損壊容疑で再逮捕した、というニュースが新聞紙面の片隅に載った程度でした。

 私は普段、冷静に分析すれば実は大したことのない事件をさも大事のように騒ぎ立てるマスコミに少々嫌気が差しているクチですが、今回に関してはむしろ逆です。そのわけは、単にこの事件が、混入する毒物によっては多くの犠牲者を出しかねなかった一種の無差別テロであるからというだけではありません。今回の一件は、特に日本においては極めて重大な犯罪である「放火」との類似点が非常に多く、さらにそこから、犯罪を含む諸問題に向き合わざるを得なくなった時の日本社会特有のパターンについても考えることができると思うからです。

 さて、まずはそもそも放火とはどういう犯罪であるかについて述べておきましょう。一部の村人をつま弾きにする「村八分」の語源は、村社会における共同行為全体を「十分」として、そのうちの「二分」、すなわち葬式と火事のときだけは例外的に村全体が一致団結する、ということだとされています。この例からも想像される通り、日本では古くから、火事を特別に重大な問題と位置づけ、同様に放火についても、場合によっては殺人以上に重い罪であるとみなしてきました。なぜなら、欧米と異なり日本には木造建築が多く、火を着けるだけで簡単に共同体全体を破壊できてしまうという木の文化特有の脆弱性の問題を抱えていたからです。その伝統は現代にも受け継がれ、人の住んでいる建物に火を着ける現住建造物等放火罪は、殺人罪や内乱罪と並び、死刑が適応される26の罪種の代表とされています。

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