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第1特集
広告業界のガリバー・電通の光と陰【1】

電通を襲うパラダイムシフト社員が明かす"苦悩と活路"

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 不況になると、まず削られるのは広告費から──。経済が停滞し始めると、真っ先にあおりを食らう広告業界。国内最大手の広告代理店・電通とて例外ではない。いま電通マンたちは、どんな生活を送っているのか? 現役社員が集まって、最新電通事情をこっそり公開!

[座談会出席者]

A......メディア関連担当。20代男性
B......メディア関連担当。20代男性
C......マーケティング関連担当。30代男性
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A 電通って言うと、とにかくよく「モテるでしょ」って男友達から言われるんだけど、2人はどうですか?

B いきなりそれからか(笑)。まあ、外の人にはそういうイメージがあるみたいですよね。でも、女の子に引かれることも多くないですか? 合コンで「うわ、出た、電通マン」って露骨に、嫌な顔されたことありますよ。相手が学生だとそうでもないんだけど、なぜか社会人だと嫌そうな顔されることが増える(笑)。「軽そう」とか、「友達の女の子が電通マンに遊ばれた」とか......。

C でも、「電通」ってだけで目の色変える女の子もまだまだいるよ。まあ、みんながみんなそうじゃないけど、やっぱり会社名で口説いている人は少なくないと思う。「昔に比べたら減った」って、上司なんかは言うけど。

A 2001年に上場するまでは、やっぱり今とは社内の雰囲気が全然違ったらしいですね。僕たちは上場以降の入社だから、その頃のことは伝説的にしか知らないですけど。昔はすごかったって聞きますよ。野球のチケットが社内に積まれてて、それを転売して小遣い稼ぎしてたとか......。

C 今は多分、普通の企業のサラリーマンと変わらないよね。経費削減やら企業コンプライアンスやらうるさいし、タクシー券も使えなくなったし。昔は机の上に束で置いてあったのに。

B 経費削減といえば、最近、昼になるとオフィスが全部消灯するようになりましたけど、あれはひどいですよね。省エネ目的ってことらしいけど、つけたり消したりするほうがよっぽど電気代がかかるし、無意味ですよ。あとは、残業して退社するのが夜12時を1分でも過ぎると、次の日上司からむちゃくちゃ怒られる。汐留のビルって入り口にゲートがあるじゃないですか。あれで入退勤管理してるから、12時前になると受付が終電の改札みたいになってる(笑)。

A でもまあ、昔みたいに派手ではなくても、"体育会気質"とか"コネ入社が多い"とか、外部から思われがちなそういうイメージは、今でも健在ですよね。

C 体育会系っていうイメージは、まさにその通り。実際、学生時代に体育会だった人が多いのもあると思うけど、ほとんど軍隊みたい。入社1~2年目くらいだと、先輩が言うことは絶対だし、先輩が納得することをひたすら目指す。博報堂と一番違うのはこういう文化かな(笑)。コネ入社に関しては、就職活動時によく言われてるけど、本当に結構な人数がいるよね。

B 上場前は、仕事もしないでただ遊んでいるだけとか、会社の金に平気で手をつけるようなボンクラ社員もいたって。

C 今も、コネ入社で全然使えない人はいるけどね。かといって邪険に扱うわけにもいかないから、「お預かりもの」ってひそかに呼ばれてたり。

A でも、それでも全然オッケーですよね。コネも実力ですから。

C 使えない人でも、例えばクライアント企業の経営者のジュニアとか、その人ひとり入れることでお得意様ができて定期的に仕事をもらえるなら、会社的にはアリだからね。

B そいつ入れただけで、毎年20億円入ってきちゃうみたいなね(笑)。

A そんな額、逆立ちしたって自分じゃ取ってこれないですからね。最近よく言われるように、裸踊りで仕事取れる時代でもないですし。まあ、宴会芸は相変わらずやってますけど。

C ウチでは「お金取ってこれるヤツが神様」だから、社内で一番花形の部署は、やっぱり営業だよね。社内での発言力、影響力はピカいち。とはいえ、だんだん部署の分け方も細分化してきて、何をしてるのかよくわからないセクションもあったりする。社員が6000人もいれば、社内で打ち合わせっていっても、初めて会う人だったりするし。

B そういうとき、全社員の情報がデータベースになってるのは便利でいいですよね。あらかじめ、相手の情報を検索してチェックしておいたほうが、円滑に進みますから。

A 出身地、卒業大学、入社年、中途か新卒か......。社員同士でも、どうコミュニケーションを取るかが重要だからね。

不況で進んだ新規参入 厄介なクライアントも......

B 「営業が一番花形の部署」って話がありましたけど、メディア局のテレビ担当も、まだまだ強くないですか? 広告不況とかいわれても、テレビがやっぱり一番稼いでますし。北京五輪の影響で、今年度の第3四半期は歴史的に見ても売り上げ良かったですよ。

C 売り上げは良くても、利益で見れば全然だからなあ。一昨年初めて売り上げ2兆円を達成したけど、今年は2000億円くらい下がるでしょ。テレビ広告だって、昔は枠が足りなくてクライアントが広告出したくても出せなかったのが、今は媒体側がなんとか枠を埋めなきゃいけないって状況だからね。

A 昔だったら挨拶にも行かなかったような規模の企業にも、ちょっとでも金が見えたら飛びつくようになったってメディア局では言われてますよ。

B でも、そういう新規参入のクライアントは、ちょっと付き合いづらいところもある。今までずっと付き合ってきたクライアントだったら、どこかの媒体が大々的なキャンペーンを打つときに、「広告効果はわからないけど、これまでの義理があるから」ということで、義理人情で出稿してくれる。でも最近出稿するようになったクライアントなんかだと、そうはいかない。これまでなら枠が空かなくて、テレビとか新聞になんて広告を出せなかったわけじゃないですか。それが急に出せるようになって、びっくりしてるんじゃないですかね。広告業界のルールを知らないような無茶な値下げの要求をしたり、視聴率とか販売部数のような目先の数字しか見えてないところが多い。

A 空気読まないっていうか、長く付き合って信頼を深めていく中から何かを生み出そうっていう発想がないんでしょうね。つまり体育会系の真逆だから、僕らと合わないってことか。

C メディア関連担当っていうところでいうと、よく言われてる「スキャンダル潰し」とかはどうなの?

B 雑誌だったら、掲載した広告を確認するために事前にチェックしますし、発売日の2〜3日前には手元に来ますからね。それで間に合うかどうかはわかりませんけど、実際にクライアントから「あの記事止められない?」って相談されたら、努力すると思いますよ。

A 相手の会社に関する情報ならどんなことでも、どこよりも早く、多くのことを知っているっていうのが仕事の第一歩ですしね。人事異動なんかも、社内の人間より先に知っているってことは普通にあるし、冠婚葬祭の情報もそう。僕らは誰よりも先に知っていなきゃいけない。まあ、僕らは形のあるものを売っているわけじゃないですし、情報と情報を掛け合わせて何ができるかっていうのを提案するのが仕事ですからね。情報収集の速さに関しては意地があります。

B 某テレビ局の人事なんか、そのいい例ですよ。媒体社の人事って口頭で伝えられるから、本人以外は同社の社員でもわからないんだけど、電通の媒体担当は異動の時期になると、ひたすら社内に張り付いて情報を集めてますよ。担当替えをいち早く押さえて挨拶に行くっていうのも、関係を作っていく上では重要ですからね。

C まあ、どこの部署にしても、お得意先のパートナーとして一緒に作り上げていく、っていうのが基本姿勢だよね。その代わり、そのクライアントが経営的に傾いたら、倒産時の記者会見までがっつり食い込んでプロデュースして、骨までしゃぶり尽くしてから何食わぬ顔して競合他社に乗り換えるっていう非道さもあるけど。

転職するならメーカー系! でもやっぱり電通が好き(ハート)

C さて、あれこれ言われがちな我が社だけど、若い2人は、これから会社はどうなっていくと思う?

A やっぱりウェブに対応しきれていないのが課題でしょう。とはいえ、2011年に地上波デジタル放送へ切り替わったら、テレビ広告にも新たな可能性が生まれてくるんじゃないでしょうか。スポンサーのホームページに飛べるような、いわゆるバナー広告が地デジになってもっと増えるだろうし、テレビ局自体もネットテレビのような新しい試みを始めてる。こういった動きに広告側も対応していかなきゃいけないのは当然のことですから、もしかしたら最終的に、メディア局内部でテレビ局とインターネット・モバイル事業局が一体化する可能性もあるんじゃないかと思います。

B メディア周りを担当してて思うのは、とにかく今までと同じやり方じゃ厳しいってことですね。これからは、例えばテレビの30分枠をまるまる買って、メインの番組とCMをパッケージして納品するみたいなビジネスモデルも出てくるだろうし、メディアミックスが進めば、部署同士の連携もどんどん必要になる。コンテンツ自体を自社で作ろうって意識も、社内では高まってますよね。今までみたいに、場所を用意して買い手を探して、っていう広告ビジネス一辺倒じゃなくて、イベントだったり個人のマネジメントだったり、"プロデュース"っていう360度視点を持たないと、やっていけなくなると思う。そうなるとますます、社内の横のつながりが大切になってきますよね。

A 「営業やマーケティングの人間は知ってるけど、僕らは知らない」っていうことがいっぱいあります。例えば現状だと、メディア周りを担当してる人間には、消費者の声なんて聞こえてこないですからね。だから、仕事に対してのモチベーションは、得意先に満足してもらうことになってきちゃうんですけど、達成感ってほかに何があるんですかね。

C 五輪とか万博みたいな巨大プロジェクトを手がけて、金を動かしてっていうのは電通でしかできない仕事だよね。俺はそういうことがしたくて入社したようなものだったし。将来的に転職したいとかは、考えたりする? 俺なんかは、そろそろ将来的なレールも見えてきているし、考えなくもないんだけど。

A するなら、メーカーの宣伝部とかですかね。意外とそのパターンは多いですよね。クライアント企業にそのまま引き抜かれて、そっち側の宣伝担当になっちゃう人。今まで社内でコキ使われていたものが、電通をアゴで使うようになるという......(笑)。会社としても「じゃあ古巣を贔屓しろよ」っていう感じで、悪くはないんでしょうけど。まあ、僕個人に関しては、最低でもあと10年はいると思いますよ。

B やっぱり、なんだかんだいって満足している人が多いと思いますよ。転職考えたりしてはいても、離職率は低いですもんね。

C 結局さ、電通社員ってすごい会社好きだよね。ちょっと気持ち悪いくらいに(笑)。

B まあ、基本が体育会ですからね(笑)。

(構成/テルイコウスケ)


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