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『クロサカタツヤのネオ・ビジネス・マイニング』第100回

この10年で日本と世界はどう変わった? マス崩壊で始まりAI倫理に至る連載100回の軌跡

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――通信・放送、そしてIT業界で活躍する気鋭のコンサルタントが失われたマス・マーケットを探索し、新しいビジネスプランをご提案!

生成AIが登場して、写真やイラストが簡単にできて「すごいね」なんて驚いていたら、ChatGPTが登場して人間の仕事をガンガンとこなして世界中がすわ「AI 対 人類」かと大騒ぎ。その上でOpenAIのサム・アルトマンCEOの解任騒動が勃発して、AIをめぐって人間同士の対立も明るみに。なのに、相変わらずSNSでは炎上が繰り返され、企業はDXを叫べども踊らず、岸田首相の支持率はダダ下がりの2023年のニッポン。さて来年はどうなる?

●雇用形態、性、企業規模別賃金、対前年増減率及び雇用形態間賃金格差

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画像をクリックすると、拡大します。
(出典)厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」より

――今月は年末恒例のクロサカさんと担当編集による振り返りですが、ちょうど連載開始から100回目の丸10年【1】ということで、今回は10年分をまとめて振り返ってみようと思います。第1回の田端信太郎さん【2】から、第99回の小久保智淳さん【3】まで、計90名のゲストにご登場いただきました。

クロサカ 無事に100回を達成することができました。今年ご登場いただいたゲストの方々、そして過去10年間でご協力いただいた皆さんに、心から感謝しています。

――今年のゲストを振り返ると、広告業界の森永真弓さん【4】、ブロックチェーンの阿部涼介さん【5】、通信業界の岸田重行さん【6】、神経法学の小久保さんという顔ぶれです。

クロサカ 森永さんと岸田さんについては、昔からよく存じ上げていたので、うっかり「もう呼んだんじゃなかったっけ?」と勘違いしていました(笑)。お2人とも仕事上でつながりがあったり、ライフヒストリーが近かったりするのもあって、とても楽しくお話しできました。阿部さんと小久保さんは、僕が言うのもおこがましいほどの期待の若手研究者で、今後のご活躍が楽しみな方々です。

――この10年間を振り返ってみても、本当に多くの方に登場いただきましたが、皆さん立場や会社は変わりつつ、ご活躍されていらっしゃいます。

クロサカ 改めて振り返ると、以前からの友人・知人であったり、その時々で一緒に仕事をしていた人であったり、分野等の傾向が特にないんですよね。唯一、女性が少ないことは敗北だと認識しています。女性をひとりもお呼びできなかった年もあるので。

――振り返ってみて、印象に残っているお話はありますか。

クロサカ 第2回の荒川祐二さん【7】の、音楽業界とマスの変化についての話は今でも参照しています。第39回の永松繁隆さん【8】のスポーツビジネスの話は、新しいメディア環境とメディアビジネスについてとても示唆的でした。第45回の高口哲平先生【9】は、実は日本でITによる生産性向上がほとんどないという衝撃の分析は、私の仕事に本当に大きな影響を与えました。高口先生には、あれからの変化についても是非調査していただきたいですね。第83回の朱喜哲さん【10】のELSI研究は、生成AIがビジネスや生活の現場に入り込んできた今、ますます重要になってきています。そして第99回の小久保さんは、自然科学と人文科学の境界領域というフロンティアに挑まれていて、本当に頭が下がります。朱さんと小久保さんのお2人の仕事は、先日のOpenAIのアルトマン解任騒動からもわかる通り、これからの社会でとても重要なものになるはずです。

――確かに、その5名の方のお話は、今まさに変化しつつあるけれど、方向が定まらない状況について、手がかりとなりますね。

クロサカ 皆さん、この世界の深い暗闇の中にある問題に対して、核心は何かということを問い続けていらっしゃるんですね。そして、その根深い問題を抱えながらも、必要以上に深刻にならずに、その核心についてわかりやすく説明してくれる。だから、最終的には、彼らの言うことがものすごく信じられるんだと思っています。皆さんには、また改めてお話をうかがいたいですね。

――ほかに10年を通して気がついたことはありますか。

クロサカ 新型コロナの影響でこの連載も、第75回の石川温さん【11】からはすべての対談がリモート収録でした。この連載に限らず、仕事の打ち合わせはウェブ会議に皆が慣れて、少なくともこの部分に関してはDXが進みましたよね。

――初期の頃は大変でしたが、最近ではリモート取材のほうが楽だという感覚になりました。時間も含めて、効率はいいですからね。

クロサカ この数カ月で世間はコロナを忘れようとしています。もちろん、新型コロナの感染者はまだいますし、インフルエンザなどの感染症も増えていますが、世間では「ないもの」とされつつあります。わかりやすいのが、ホテルの宿泊費ですよね。インバウンド需要に加えて、展示会などのリアルイベントも制限がなくなったことで、天井知らずになってきています。先日、幕張のイベントで登壇するので前泊したんですが、幕張メッセ付近のビジネスホテルが軒並み3万円前後もするんです。

――一方で、値上げをできない企業や業種が、従業員を集められず人手不足で倒産していると聞きます。

クロサカ ホテルも実際に稼動する部屋数を抑えているため、稼働率もこれ以上は伸びづらいようです。この人手不足は、来年に大きな問題として吹き出すかもしれません。それ以外にも、いろんな歪みが、そろそろ限界を迎えているように見えます。例えば、統一教会やジャニーズの問題も、そうした歪みの一端で、その清算が始まったのが2023年だったのかもしれません。

――例えばジャニーズ問題は「サイゾー」でも報じてきたのに、文春しか頑張っていなかったみたいに言われるのは、寂しいです(笑)。だからというわけじゃないですがここのところ、出版社ごとの体力というか、稼ぐ力の差がはっきりと見えてきたのは確かです。

クロサカ 大手出版社がマンガのデジタル配信で過去最高の利益を稼いでいる一方で、デジタル化に出遅れた中小の出版社がより厳しい状況に陥っている。だから、稼ぐ力のある産業というよりも、同じ産業の中でも稼ぐ力に差がある。例えば、コンビニは小売りの中では強いし、携帯電話会社もなんだかんだ強いです。でも、個別で見ていくと差があるし、いま稼いでいるところもこのまま稼ぎ続けられるとは断言できない。なにより、そこで働いている人たちが、満足して仕事をしているか、満足した生活を送っているかというと、そうではない。

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