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ドクター苫米地に聞け!僕たちは洗脳されてるんですか?【1】

ビッグモーターの不祥事は「洗脳集団」の暴走ですか?

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――今の世の中、理解不能な言動を取ったり、主体性がない判断をする人が多くないか? 個が尊重される多様性社会といえば聞こえがいいが、アイツやコイツや、そして僕たちも、実は無自覚なまま、特定の権力者や情報に操られる「洗脳状態」になってはいないか? だから、脱洗脳のスペシャリストである苫米地英人博士に聞いてみたい。「僕たちは洗脳されているんですか?」

中古車販売大手のビッグモーターでは、車に故意に傷をつけるなどして、保険金を水増し請求していたことに端を発し、厳しいノルマやそれに伴う罰金、パワハラ、下請けいじめ、さらに除草剤を撒き、街路樹を枯らしていたといった問題が続々と判明。経営陣や上司の命令が絶対的な中で暴走していった従業員たちは、「洗脳状態」だったのだろうか。

金儲け主義を生んだ「ビジネスモデル」

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――苫米地博士、新連載が始まります!

苫米地 「サイゾー」では20年ぶりくらいの連載だね。で、最初のテーマは「ビッグモーターと洗脳について」ってことなんだけど、ビッグモーターの刑事事件的要因のところは読者の皆さんが報道で見ている以上のことは俺も知りません(笑)。ただ、認知の部分だよね。「なぜ、こんなに奴隷的な人たちなのか? オウム真理教と同じ洗脳集団的な要素はあるのか?」っていうところでしょ。 

――はい。なぜ、いい大人たちが上司の命令に従って簡単に法律を犯すんですか??

苫米地 最初に言っておくと、洗脳の定義は「第三者の利益のために、強制力を用いて思考や行動を操作すること」。「その人のため」なら、それは教育。小・中学校へ行くのは強制だけど、それは洗脳とは言わない。で、ビッグモーターの件は、従業員が洗脳状態かといえば、そうではなく、一部の日本人の倫理観の欠如の表れというべきもの。いつから、そういうことが起こったかというと「楽天の成功問題」ぐらいかもしれない。楽天の「成功」を「問題」というと三木谷(浩史)社長は怒るかもしれないけど(笑)。

――倫理観の欠如とどうつながるんですか?

苫米地 どういうことかというと、2000年ぐらいに渋谷近辺にIT企業が集まってビットバレーって呼ばれるようになったのね。その頃から「ビジネスモデル」という言葉がはやるようになったんだ。アメリカのシリコンバレーで生まれた言葉で、いいビジネスモデルがあると、それだけお金が調達できる。例えば、「ある画期的なプログラムがあります。ライセンスしませんか? 出資しませんか?」と企業に持ちかける。企業が興味を持って、「プログラムの中身を少し見せてくれ」と言っても見せてくれない。なぜなら、中身なんてないから(笑)。

――「ない」って、それは詐欺じゃないんですか!?

苫米地 詐欺じゃない。中身はお金をもらったあとに作ればいい。当時のシリコンバレーには1000万、2000万円を渡せばなんでも作ってくれるスーパープログラマーがいっぱいいて、彼らの作るモックアップが十分動くものだから、それを見て投資する側が満足しちゃう。それで5億、10億の金は簡単に調達できちゃうんだよ。

――後付けってことですか?

苫米地 そうそう。で、それだけの金があれば、スーパープログラマーが寄ってたかって本物のシステムを作っちゃう。つまり最初のアイデアがあればいいわけ。それがビジネスモデルってことね。もっと詳しい話は、別に動画も撮ってるから、そっちを見てもらいたいんだけど【記事末尾を参照】、そうやって成功したのが楽天の三木谷社長やライブドアの堀江(貴文)元社長などだよね。彼らの場合は中身がなかったわけじゃないんで良心的なビジネスモデルだったけど。でも、からくりは同じ。これの凄いところは、ほとんど何もないところからスタートできるということに加えて、事業が動きだしてもネット上での運用が基本だから、ほぼ資本投下をする必要がないということ。必要最低限の人件費とサーバー代を払っていればいいんだよ。

――利益率が異常に高いと。世界的に多くのIT企業が急成長した要因ですよね。

苫米地 しかも、シリコンバレーの企業って、これで上場するんだよ。設備投資がなく、資金調達も不必要なのになぜ上場するの? 答えは時価総額が大きくなるから。つまり、創業者や株主は所有する株式の価値が爆発的に上がって、大金持ちになれる。企業が営利目的で活動するのは自由だけど、本来は社会的機能を提供することの見返りとして「稼げる」という結果があるべき。ところが、ビジネスモデル先行で時価総額を上げることを目的とするようになったわけだ。汗水流して何百億という利益を積み上げていくより、時価総額で何百億を目指すほうが手っ取り早いし。

――つまり2000年ぐらいから日本人のビジネスも、時価総額モデル、金儲け主義に変わってしまったと。

苫米地 特に若い人たちが変わったということ。時価総額ビジネスで大金を持った三木谷社長たちの姿を見て、彼らに憧れる若い経営者たちが出てきた。手段のいかんは問わず、「企業の成功とは、金持ちになること」だと。ここが倫理観の欠如につながっていく。

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