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第1特集
ジェンダー問題としての議論も巻き起こるマンガ雑誌のセグメント分け

性別・年齢による区分は時代遅れ? マンガ雑誌に「少年」が付く理由

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――日本のマンガ文化を支えてきたマンガ雑誌の名前には、「少年」や「少女」、「ヤング」といった対象読者層を示す言葉が冠されることも多い。一方で、少年マンガを愛読する女性や女性向けマンガを楽しむ男性読者も当たり前に存在している。マンガ雑誌が性別や年齢によって対象読者を区分するようになった歴史的経緯を振り返る。

◉マンガ雑誌は“自分たち”を表現するための場だった
時代とともに広がりを見せたマンガ雑誌の変遷

――マンガ雑誌が対象とする読者のセグメント分けは時代とともに細分化していった。各時代で重要な役割を果たした雑誌を挙げながら、大きな流れを見ていこう。

〜1940年代
大人向けだった雑誌とマンガが“少年”のものに

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江戸時代の浮世絵や風刺画の流れを受けて、大人向けの娯楽とされていたマンガ。1862年に訪日イギリス人のチャールズ・ワーグマンがマンガ雑誌「ジャパン・パンチ」(画像左)を創刊し、その影響を受けて、74年に神奈垣魯文と河鍋暁斎が日本人による最初のマンガ雑誌「絵新聞日本地」を誕生させた。80年代末期に子ども向けの童画・絵雑誌が登場してくると、1907年に日本初の子どもマンガ雑誌「少年パック」が創刊。これが“少年”のためのマンガ雑誌の始まりとなった(画像右の「東京パック」は05年に刊行され、「少年パック」に影響を与えたとされる)。終戦後には「漫画少年」だけでなく、50年に「少年画報」と改題される「月刊冒険活劇文庫」(明々社/現・少年画報社)や「少年」(光文社)といった少年マンガ雑誌が次々と誕生し、勢いづいていく。

1950年代
“少女”マンガ雑誌の誕生

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少女マンガ雑誌の歴史をひもとくと、その源流には後に「週刊少女フレンド」となる「少女倶楽部」(画像左:23年創刊/講談社)や、51年に集英社が少女向けの総合月刊誌として創刊した「少女ブック」などがある。そして、54年に現在も三大少女マンガ誌の一角を担う「なかよし」(画像右)が誕生。続く55年には「少女ブック」の妹雑誌として「りぼん」も登場している(創刊当初は総合誌的な色合いも強かった)。この時期に、少女マンガ雑誌というジャンルが成立したといえるだろう。なお、三大少女マンガ誌の残る一冊「ちゃお」(小学館)創刊は77年となる。

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1960年代
若者の気持ちを代弁した“青年”マンガ雑誌

貸本や劇画から派生する形で“青年マンガ”を象徴する存在となったのが、64年にマンガ家・白土三平によって創刊された「月刊漫画ガロ」だ。その後、総合誌「ボーイズライフ」(小学館/63年創刊)もマンガや劇画の色を強め、66年に青年向け劇画誌として「コミック Magazine」(芳文社)、67年に「漫画アクション」や「月刊ヤングコミック」(少年画報社)などが次々と創刊される。同年には「まんがエリートのためのまんが専門誌」をうたった「COM」(虫プロ商事)も刊行され、“青年マンガ”の勃興期を担うこととなる。


1970〜80年代
性別の越境とマンガが描いた“女性”

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(画像左:「BE LOVE」 画像右:「FEEL YOUNG」 表紙はいずれも23年2月号)

70年代に“24年組”の活躍で少女マンガが拡張されつつ、女性向けマンガは”少女”という枠組みを超えていく。80年創刊のレディースコミックの祖である「BE LOVE」は、当初のターゲット層は大学生やOLだったと、同誌で後年に編集長を務めた岩間秀和氏がウェブのインタビューで回答している。また、86年に「YOUNG YOU」、89年に「FEEL YOUNG」が創刊されるなど、ヤング・レディース誌は80年代中盤に隆盛を迎えた。安野モヨコや羽海野チカら女性向けマンガ出身作家の一部が、後に活動の場を青年誌へと移したということも注目に値する。

1990年代〜
趣味や嗜好が細分化した“オタク系”

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「月刊コミック電撃大王」や「月刊少年ガンガン」など、旧来の“少年・少女”や“青年”といった枠組みにとらわれず支持されるマンガ雑誌が登場。これらはいわゆる“オタク向け”であり、一部で“ガンガン系”などと呼ばれることもあった。特に「月刊少年ガンガン」が人気を博したことで、「ガンガンWING(現・ガンガンJOKER)」や「月刊Gファンタジー」といった兄弟誌も登場した。また、本文では触れなかったが、91年に白夜書房が商業誌で初めて「ボーイズラブ」という言葉を掲げたBLマンガ雑誌「イマージュ」を創刊。ミリタリーや美少女、BLといったかつてニッチだった嗜好が顕在化し、多くの読者を獲得していく背景には同人文化の影響も見てとれる(75年に始まった同人誌即売会のコミックマーケットは、年々その認知度と求心力を高めていった)。


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