サイゾーpremium  > 連載  > NewsPicks後藤直義の「GHOST IN THE TECH」【22】/【地球に優しい】企業が誕生
連載
NewsPicks後藤直義の「GHOST IN THE TECH」【22】

お金を儲けて自然環境を守る“地球に優しい”企業が続々誕生

+お気に入りに追加

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

DBLパートナーズ

サンフランシスコを拠点にする、スタートアップ投資ファンド。自然環境を守ったり、地元コミュニティの活性化や雇用につながるなど、社会的に大きなインパクトを起こすような、ベンチャーに資金を投じる。テスラの初期投資家としても有名であり、すでに合計3つのファンドを運営している。

2105_GITT2105_200.jpg

 突然だが、私はお墓が好きじゃない。

 こんなことを言うと、親族から総スカンを食いそうだが、都心で墓石や卒塔婆がとても狭いスペースに並んでるのを見るにつれ、ここでは安眠できないだろうと思ってしまう。

 しかし先日、シリコンバレーで生まれた、素晴らしいお墓をつくっているスタートアップを見つけた。すでに50億円以上の資金を集めており、急成長しているという。それがサンフランシスコ生まれの「ベター・プレイス・フォレスト」だ。

 これは愛する家族が亡くなった時に、冷たい大理石とかの墓石の代わりに、美しい森に生えているセコイア(杉の木)を選びませんか、と提案しているスタートアップだ。

 遺体を火葬した後で、その遺灰をもって、選んだ木の下に埋める。そうするとロジック的には、そのセコイアの木が、遺灰の混じった土から養分を吸い上げることになる。遺族たちは、その木を亡くなった人に見立てて、お墓参りをすることができるわけだ。

「ピカピカに磨かれた両親の墓石に映り込む、クルマたちの姿が嫌だった」

 創業者であるサンディ・ギブソンは、米国メディアに創業の理由をそう説明している。彼は幼い頃に両親を亡くしたという。そんな両親の墓参りをする時に、すぐ近くを車道が通っており、クルマが右に左に行き交っているのが嫌だったという。

 もっとゆっくりと、大切な人を思い出す場所がつくれないか――。それが2015年に生まれた、ベター・プレイス・フォレストの創業理由だ。

 東京だと想像しにくいが、シリコンバレーは海だけじゃなく、実は豊かな森や山に囲まれている。ちょっとした時間に、グーグルやフェイスブックの社員たちが、山登りをしたりする環境にあるわけだ。同社は資金調達をすると、手始めにシリコンバレーの近くにある20エーカー(東京ドーム約1.7個分)の土地を、買い上げた。建築家がデザインした美しいゲートをくぐると、そこはマイナスイオンがいっぱい溢れる森林になっている。そこに生えている一本一本が、売り物なわけだ。

 価格も、木の太さや見晴らしによって「松竹梅」がある。安価なものは5900ドル(幹の太さ約50センチ未満)から、人気のスタンダード(幹の太さは約75センチ未満)、プレミアム(幹の太さは約1メートル未満)まで。米国の一般的なお墓の価格が、約150万円というから、多くの人の手の届くプライスといえる。ちなみにペットも一緒に埋める場合は、追加250ドルでOKだ。

 このスタートアップが注目されている理由は、このセコイアの木をお墓にする人が増えれば、ずっと守られる森や山が広がっていくという、その思想にある。すでに彼らの活動は米国で7カ所の森を買い上げるまでに広がっており、予約したユーザーも1000人を超えるという。まさに「眠れる森」を増やす、スタートアップだ。

地球環境問題に取り組むスタートアップが増加中

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2024年11月号

アイドルビジネス最前線

アイドルビジネス最前線

サヨクおじさんが物申す 腐敗大国ニッポンの最新論点

    • 【青木理×川端幹人】ニッポンの最新論点

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

サイゾーパブリシティ