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『西国分寺哀の「大丈夫?マイ・フレンド」』【63】

すべては気まぐれ?――あの素晴らしい恵美をもう一度

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『上沼恵美子』

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近年、『M-1グランプリ』の審査員では歯に衣着せぬ物言いで、良くも悪くも話題にあがる上沼恵美子。だが、2020年の大会では一転して毒がなく心配する声も。あと「マヂカルラブリーは漫才なのか」論争よりも話し合うべき大事なことはもっとほかにあると思う。

 新型コロナで文字通り激動の年となった2020年。新たな年を迎え、心機一転前を向いて頑張っていこうとしているのに水を差すようでなんだが、昨年の話題を振り返りたいと思う。だいたいね、“忘年”なんていうが、忘れてどうするんだと。過去はなかったことにはできないのだ。だったらその年の「恨み・辛み」は翌年に持ち越して、原動力にすべきではなかろうか。「この恨み、晴らさでおくべきか」くらいのほうが、弾みがつくというもの。

 というわけで、今回は昨年の上沼恵美子の話をしようと思う。なぜなら今、恵美ちゃんは弱気になっているかもしれないからだ。発端は審査員を務めた『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)。ここ数年は、彼女の辛口コメントや芸人たちへの説教なども目玉のひとつとなっていたが、今回は誰も説教することなくコメントも終始優しかった。番組冒頭では「審査員は今回で最後」的な発言もしており、毎年大会後にあがる視聴者および芸人たちからの不満の声に、耐えられなくなったからではないか? との憶測も出ている。

 しかも、M-1だけならまだしも昨年の恵美ちゃんは色々と世間を騒がせていた。6月には、番組で共演していたキングコング・梶原が、彼女とモメたとかで降板。7月には25年続いた関西ローカルの人気番組『快傑えみちゃんねる』(関西テレビ)が突然の終了。裏で番組スタッフとの衝突があったなどと報じられている。もちろん本人はこれらを否定しているが、周囲にやいやい言われて嫌気が差していても、おかしくはないだろう。

 私は西の人間ではないので、恵美ちゃんのスゴさをよくわかっていない。伝説の姉妹漫才コンビ「海原千里・万里」だったのは知っているが、千里なのか、万里のなのか? なんなら読み方も「せんり」はいいとして「まり」なのか「まんり」なのか? そんなレベルである。

 私が最初に恵美ちゃんを知ったのは、90年代初頭、NHKの『バラエティー生活笑百科』に出ていた時だったと思う。「自宅は大阪城」だとか、「金閣寺を購入した時のポイントで家電を買った」といったホラ話をする「関西の面白いおばちゃん」ぐらいの認識だった。その後、あれよあれよと知名度は全国区となり、94、95年と『NHK紅白歌合戦』の司会をするまでになったが、拠点を関西から移すことはなかったので、ほとんどウォッチしていなかった。だから、改めて恵美ちゃんを意識したのは、ここ数年のM-1の審査員からだ。

 普通に見ていて、審査員という立場であれだけ個性を発揮し、笑いまで取れるのはなかなかできることではない。コメントや説教については賛否あるだろうが、個人的にはそんな的外れなことは言っていないように思える。まあ、昔と比べ視聴者の意見が可視化されやすくなり、芸人自体が意見をSNSにアップするという現状を考えれば、確かに喰らうダメージは相当なものだ。

 と思ったのだが、そもそも恵美ちゃん自身、紅白の司会をした時には大御所歌手からそっぽを向かれたとか、自身の番組に来たゲストの態度が悪かったなどの悪口を散々言ってきたわけで、因果応報な部分もある。だが、そんな「恨み・辛み」をバネに踏ん張ってきたからこそ、彼女は“西の女帝”にまで上り詰めたのではないか。そんな恵美ちゃんが、周囲に何か言われたくらいで揺らぐはずはない。

 そもそも20年のM-1で優勝したマヂカルラブリーだが、17年大会で恵美ちゃんが酷評したことにより、決勝進出が決まった時点から、その「因縁」が注目されていた。だが、当の本人は「え!? そうだっけ? ゴメンゴメン」といったご様子。よく考えたら、彼女がネットをつぶさにチェックしているとは考えづらく、ひょっとするとこれまでの批判に対しても「気にしない」のではなく「気づいていない」という可能性が高い。だとすると、もう無敵である。

 ではなぜ、今大会の審査は優しく、そして「最後」発言をしたのか? 単に「そういう気分だったから」じゃないだろうか。彼女の言動は結構気まぐれだ。来年M-1の審査員席に何食わぬ顔で座っていても、不思議ではない。多分説教もするだろう。

 視聴者は、引き続き恵美ちゃんへの批判をネットに書き込めばいいし、芸人たちは文句を言えばいい。そこに何も知らない恵美ちゃんが気まぐれに審査をする。今やM-1は、この三位一体で成り立っているのかもしれない。

 事実、20年のM-1ではマヂカルラブリーが、恵美ちゃんとの確執を乗り越え優勝するというドラマが生まれた。芸人は審査に文句を言うのはいいが、その悔しさをバネに成長していくことも大切だ。そういう意味でやっぱり「恨み・辛み」は忘れてはならないと思うのだ。

西国分寺哀(にしこくぶんじ・あい)
新年一発目なのに、ネタが古いことを上手くごまかせた40代独身男性。今頃になって、これはウェブ媒体「日刊サイゾー」の連載で書けば、タイムリーだったと悔んでいる。

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