――過去のアメリカの大麻規制は、黒人やメキシコ系を標的にしていた――。Netflixの『グラス・イズ・グリーナー』は、大麻から人種問題を追及する。
2019年に公開されたNetflixのドキュメンタリー『グラス・イズ・グリーナー:大麻が見たアメリカ』。ジャズ、レゲエ、ヒップホップといった黒人音楽と大麻は非常に密接な関係があり、数々の音楽家が大麻を愛し、大麻について歌ってきた。ヒッピー時代には白人も大麻を嗜むようになり、結果的にアメリカの多くの州で大麻は合法化された。……という大麻と音楽のありきたりでヌルい文化論に終止するのではなく、本作は大麻(規制)と人種問題をめぐる歴史に鋭く切り込む。
大麻は20世紀に入ってメキシコからの移民によってアメリカにもたらされたとされ、やがて黒人社会でも愛用されるようになった。しかし1930年代、連邦麻薬局の初代長官ハリー・アンスリンガーは大麻を危険で違法なものとした上、「大麻を吸って狂ったメキシコ人男性が家族を殺した」といった話をでっち上げるなど、人種差別的なキャンペーンを展開したと指摘する。
また、70年代のニクソン政権、80年代のレーガン政権は「麻薬戦争」を掲げ、麻薬犯罪を厳しく取り締まったが、大麻を含むドラッグを使用・密売していた黒人をはじめとする有色人種をターゲットにしていたと示唆。事実、急増した刑務所人口は黒人の割合が異様に多く、さらに監獄ビジネスが巨大産業に成長したことが映し出される。
そして現在、大麻合法化の時代を迎えたわけだが、合法ビジネスを主に展開するのは白人たち。麻薬犯罪で前科のある者は大麻生産・販売の免許が取りづらく、貧困層の有色人種には参入する資本がないからである。摘発のリスクを犯して大麻を売りさばくという従来の黒人の裏稼業が、白人に“搾取”されている現実を突きつける。
(編集部)