サイゾーpremium  > 特集  > タブー  > 時代を先取りする【新・麻薬王】の肖像

――コロンビアのパブロ・エスコバル、メキシコのエル・チャポ……。麻薬王には凶悪でド派手な男といったイメージがあるが、それをポール・ルルーという人物は覆したかもしれない。彼はインターネットを駆使し、麻薬密売をはじめ闇ビジネスをグローバルに展開した。新しき麻薬王の実像に、国際ジャーナリストの山田敏弘氏が迫る。

2002_P070-073_mayakuo01_320.jpg
「タイム」の元記者で女性ジャーナリストのエレイン・シャノンが著した書籍『Hunting LeRoux』(William Morrow)。マイケル・マン監督によって映画化される。

 2012年9月26日、世界を股にかけた大物麻薬王が西アフリカのリベリアにて逮捕された。

 この麻薬王は、ビジネスを拡大すべくコロンビアの麻薬カルテルの代理人と交渉する予定で、恋人のフィリピン人女性と共にリベリアに滞在していた。

 だが交渉は、米麻薬取締局(DEA)によって周到に仕組まれた“おとり捜査”だった。交渉後、DEAの捜査員らは滞在先だったホテルのスイートルームになだれ込み、デスクに座ってノートパソコンに向かう麻薬王を拘束。“最重要証拠”であるパソコンをただちに押収し、そのままプライベートジェットで米国に連行した。

 逮捕の事実は、麻薬ルートを解明し、組織を壊滅させるために極秘扱いにされた。だが、19年になるとメディアや書籍などで詳細が相次いで報じられ、それまでほとんど知られていなかった謎の麻薬王の存在が白日の下にさらされた。世界を舞台に大金を生み出すスキームを構築していたこの麻薬王の名は、ポール・ルルーという。

 ルルー(47歳)による犯罪の実態が明らかになるにつれて、彼はこれまでの麻薬王のイメージを覆す稀代の“頭脳派”と呼ばれるようになった。天才的なプログラマーであったルルーは、シリコンバレーの起業家並みに時代を先読みし、独自の暗号化システムを施したノートパソコンで組織を遠隔コントロールしながら、麻薬密売を超えた闇ビジネスをグローバルに展開した。史上初めてサイバー空間で暗躍した麻薬王のルルーが南アフリカ出身であることを引き合いに出して、“闇社会のイーロン・マスク(南ア出身の名物起業家)【註1】”と言う者もいるくらいだ。

 ただ、日本では、そんなルルーについてほとんど知られていない。フィリピンの首都マニラを拠点に、彼が香港や北朝鮮、そして日本にも闇ビジネスを広げていたにもかかわらず、だ。そこで、従来の麻薬王とは一線を画する“21世紀の大物犯罪者”であるルルーの実像に迫ってみたい。

処方薬販売サイトから北朝鮮製シャブの密売へ

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2020年3月号

バンクシー&現代(危)アート

バンクシー&現代(危)アート
    • 【バンクシー】の矛先と日本
    • バンクシーと【パルコ】の関係
    • 社会を斬る【次世代アーティスト】
    • 【石川真澄×くっきー!】異端美術対談
    • レン・ハン自殺後の【中国写真】
    • 【舐達麻】が吐くラップとタトゥー
    • 【刀剣乱舞】狂騒曲
    • 芸術なのか?【AIアート】の真贋
    • AI推進国【韓国】のAIアート
    • 【高山明×中島岳史】「不自由展」圧力と希望
    • あいトリをめぐる【政治家たち】
    • 【書肆ゲンシシャ】が選ぶ(奇)写真集
    • 【天皇肖像】の含意とアート群
    • 【美術展ビジネス】に群がる既得権益
    • 現代アートの今がわかる書籍群

池田ショコラ、甘くて苦いオトナグラビア

池田ショコラ、甘くて苦いオトナグラビア
    • 【池田ショコラ】大人に脱皮

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 表紙/都丸紗也華「このへんで跳ねたいんです」
    • 【ぴーぴる】天真爛漫娘の現代っ子放談
    • 必ず最後に【杏】は勝つ
    • 【ベビーテック】の伝道師が語る普及の道
    • 【萱野稔人】"殴り合い"はなぜ人間的なのか
    • 【イズム】が蘇る2020年の音頭
    • 米発【ミートテック】が狙う中国人の胃袋
    • 【丸屋九兵衛】アンバーを語る
    • 【町山智浩】「スキャンダル」TV局トップのセクハラを暴け!
    • 世界の左派が掲げる【反緊縮経済政策】
    • 小原真史の「写真時評」
    • 笹 公人「念力事報」/令和のマスク騒動
    • おたけ・デニス上野・アントニーの「アダルトグッズ博物館」
    • 稲田豊史/「So kakkoii 宇宙」小沢健二の鎮魂歌
    • 辛酸なめ子の「佳子様偏愛採取録」
    • 震災をきっかけに浸透した「んだ」のビール
    • 更科修一郎/幽霊、雑誌もまた老いて死んでいく。
    • 『花くまゆうさくの「カストリ漫報」』