――デビューして2年目にしてブレイク、世界を席巻。のほほんとした雰囲気の4人だが、言葉の端々には芯の強さが! 「NEOかわいい」はかわいいだけじゃなかった。
(写真/加藤正憲)
2年前、本コーナーに登場、世界進出を成し遂げたCHAI。勢いはとどまらず、海外での展開もめじろ押し。その成長ぶりと実感を確かめるべく、ツアー中の彼女たちをキャッチ。まずは、海外でのツアーを通じて得られたこと、感じたことを聞いた。
カナ 「マインドかな? 海外には日本にいると感じられない悔しさ、楽しさ、喜び、愛とか人の温かさとか。いろんな感覚がある。『このままじゃだめだ』と初心に戻れることも」
ユナ 「海外に行ったら、毎日ライブが入ったりするので体力勝負。キャパが小さい会場で、酸欠状態で演ったり、ステージが狭すぎて落ちたり、トラブルには強くなった。日本では感じられない温度感の中『ライブやってるぞ!』と体で感じる瞬間が多くて、すごい楽しい」
CHAIの海外ツアーは、抱える人や機材はミニマム。ツアーマネージャーや機材も現地で調達し、同行スタッフもマネージャーだけという。心身共に、タフになった様子がうかがえる。
そうしたツアーライブを通じて各地で披露し、育ってきた曲たちをまとめた、2枚目のアルバム『PUNK』をリリース。タイトルについて、ユナとユウキが話してくれた。
ユナ 「ジャンルの『PUNK』じゃなくて、それぞれがありのままに、『なりたい自分になるぞ』という姿勢みたいなもの」
ユウキ 「誰がなんと言おうが『私は私』という気持ちは、最初からCHAIのマインドとしてある。育ってきた曲には、自分たちの『芯』に持ってきたものと通じるものがあるから。それをタイトルらしいものに置き換えて出てきた言葉が『PUNK』かな」
ユウキは歌詞を担当するが、詞は曲を完成させてから考えるという。俯瞰的にバンドをとらえる存在だ。メロディづくりは、マナとカナが担当する。
カナ 「家で、マナが鼻歌でメロディを歌い始めて、その場で私がコードをつけていく感じ。アレンジは4人でスタジオで、録るときは、バンドの演奏に、打ち込みやシンセの音を重ねてく」
CHAIには著名プロデューサーの存在はなく、基本的にセルフプロデュース。ほぼすべてを自分たちの力でやってきたという。知恵を絞り、話し合い、力を尽くし、世界進出を果たしたCHAIだが、曲を作るとき、国内外のリスナーを意識するのだろうか?
カナ 「日本には『~みたいな』という音楽がいっぱいあふれてて、
『あなたの本心はどこなの?』って問いたくなるし、『~に似てますよね』ってなりたくなくて。好きな洋楽を聴いてインプットして、アウトプットしたものが唯一無二のCHAIとして出て、それが世界に伝わればいいなという感じ」
当初はネタっぽく聞こえたグラミー賞だが、どうやら本心のようだ。そこには近づけたのか?
カナ 「めちゃ遠い! 海外行けば行くほど遠いなあって。いい曲を作り、演奏すること。それしかないよね。曲が進化していかないと嫌だから。曲で『強さ』を見せていきたいし、バンドというスタイルや『女』という概念にとらわれたくないと思う」
マナ 「世界に行くと、私は身長も体もこんなに小さい。その姿で人間っぽく、強くやる姿が『一番カッコイイ』と思っていて。その感じは『猿』だと思ったんですよ。ステージから見る外国人のお客さんは、みんなエネルギッシュで、『ゴリラ』みたいだから。それと戦っていくには、この顔とこの姿とこの強さで、『猿感』をもっと強くして、ライブをしていきたい」
では、「いいライブをやるために心がけていることは?」と聞くと、「美味しいものを食べる!」「よく寝る!」といった声が返ってきた。なるほど本能的! グラミー賞を射程に置き、「猿感」という新機軸を携えた4人は、このあとヨーロッパへと飛んだ。
(文/櫻井一哉・Solaris)
(写真/加藤正憲)
『PUNK』
CHAI(ちゃい)
ボーカル/キーボードのマナ、ボーカル/ギターのカナの双子と、ベースのユウキとドラムのユナで編成された4人組バンド。1stアルバム『PINK』を2017年にリリース、各チャートをにぎわし、高い評価を受ける。18年にはアメリカや英国の人気インディーレーベルからデビュー作をリリース。加えて4度のアメリカ・ツアー、SUPERORGANISMのサポートアクトとしてイギリス・ツアーを敢行。今年もUSツアー、ヨーロッパ・ツアーと大忙し。