サイゾーpremium  > 特集  > 社会問題  > 【ドクターX】で描写される現代医療の功罪

――ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』の快進撃が止まらない。主演・米倉涼子が放つ「私、失敗しないので」という決め台詞が視聴者のカタルシスとなる一方で、医療界からは疑問の声もちらほら。本稿では『ドクターX』を軸に、医療ドラマの中身を徹底解剖。そこから日本医療の新たな問題も浮かび上がってきた。

現役医師の理想を具現化 大門未知子はエンタメ外科医の象徴である

――「こんな外科医は存在しない!」を「エンタメの世界だからアリ!」にしたのが、そう、彼女である。

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(絵/河合 寛)

出演:米倉涼子、内田有紀、岸部一徳、西田敏行、泉ピン子、遠藤憲一、滝藤賢一、吉田鋼太郎、草刈民代ほか 脚本:中園ミホほか
2012年の第1期から放送が開始され、現在は第4期が放送されており、視聴率は常に20%以上を記録している医療ドラマ。東帝大学病院を舞台に繰り広げられる医師同士の闘争や上下関係、院内の内情をメインに、病院や医局に属すことのない“フリーランスの外科医・大門未知子”の活躍を描く。医療ドラマにありがちな「お涙ちょうだい」演出を極力避け、最新医療や機器を用いつつも、「でも、こんな医者はいないだろ」というフィクションが功を奏してか、視聴者のハートをわしづかみ。

大門未知子(40)
米倉涼子が演じる『ドクターX』の主人公。昭和51年1月7日、広島県生まれ。医科大学を卒業後、医局に入局するも1年半で退局。海外で医療を学び、帰国後は「神原名医紹介所」に籍を置く。現在も“フリーランス外科医”として活動。モットーは「三度の飯よりオペが好き」、口癖は「私、失敗しないので」。『Dr.コトー診療所』のような患者への手厚いもてなしは一切ないのも特徴。

【1】設定
「私、失敗しないので」が主演の口癖であれば、脇を固める医師たちは病院長の指示や命令に「御意」と返事をするのも特徴。「御意は使いませんが、医師同士のコミュニケーションを円滑にするため、独自の言葉を用いる病院はあると思います」と話す医師も。「こんなドラマあり得ない!」と記事になることの多い同ドラマだが、それだけ影響力を放っているということの証左だろうか。

【2】趣味
麻雀、卓球、銭湯、クラブ遊びを好む。手術以外のシーンでは、ほとんど医局や屋上で何かを食べているが、抜群のスタイルを維持している。しかし、取材で話を聞いた現役の医師たち曰く、「私たちがそうした趣味を表沙汰にしたら、『そんなヒマがあるなら勉強しろ』と、お叱りの言葉を受けます。また、医療ドラマで描かれるような高級店でお酒を飲むこともありません」と苦笑い。

【3】人間関係
「手術以外のスキルはゼロ」と評され、東帝大学病院の病院長・蛭間重勝を演じる西田敏行、副院長・久保東子役の泉ピン子らには媚びを売らず、年上の上司だろうが、重篤な病に冒されている患者にも敬語の類は一切使用しない。一方で、岸部一徳演じる神原名医紹介所・所長、神原晶のことは“師匠”と呼び、同紹介所に勤務の内田有紀演じる城之内博美とは信頼関係を築く。

 2016年も『レディ・ダ・ヴィンチの診断』(関西テレビ)、『ドクターカー~絶体絶命を救え~』(読売テレビ)、『フラジャイル』(フジテレビ)など、医療をテーマにしたドラマが次々と放送されており、医療ドラマは花盛り。今や刑事ものと並びテレビドラマの定番となっている。そして、近年の医療ドラマブームの火付け役となったのが、12年の第1シーズン放送開始以来、常に20%を越える平均視聴率をたたき出している『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)だ。米倉涼子演じるフリーランスの天才外科医・大門未知子を主人公にしたこのドラマ。いったい、この人気の背景には何があるのだろうか? そして、視聴者は大門未知子に何を求めているのだろうか?

 そこには、医療ドラマが単なるエンタメとして機能するだけでなく、医療界のみならず、視聴者側に与える弊害も浮かび上がってきた。早速、医療に携わる識者に話を聞いてみよう。

高視聴率を稼げるおいしい医療ドラマ

「当たり外れはありますが、刑事ドラマも医療ドラマも大きくコケるということがありません。他ジャンルのドラマであれば、4~5%の視聴率に終わることもめずらしくありませんが、医療ドラマはコケても7~8%は確保できる。企画として保険が利いているんですね。また、難病を大掛かりな手術で救うというストーリー展開も、視聴者がカタルシスを得やすい。刑事ドラマの場合は、犯人が犯行に及ぶ事情を説明しなければならないなど、爽快感を得にくい要素を孕んでいますが、病気の存在は絶対悪なので、徹底的に“悪者を退治する”という描写にできるんです」

 こうした旨味を語るのは、テレビ局のドラマプロデューサー。固定ファンがついており、大コケする心配もないとなれば、各局で右にならえの医療ドラマ量産も頷けるだろう。さらに、視聴率だけでなく、コストパフォーマンスの良さも、医療ドラマの大切なメリットだという。

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