サイゾーpremium  > 特集  > タブー  > 【MEG】が語るファッション業界の甘い誘惑
第1特集
音楽とファッションのおいしい関係【1】

シャレオツリーダーMEGが語るブランド継続の秘訣と甘い誘惑

+お気に入りに追加

――音楽活動をメインとしながら、自身のアパレルブランドを立ち上げるアーティストは少なくないが、成功する者はほんの一握りといっていい。そんな両者の深き関係と、ブランド継続の秘訣を、おしゃれアイコンとして活躍するアーティスト、MEGに問う。

1410_musician_01.jpg

 2002年、岡村靖幸プロデュースのシングル「スキャンティブルース」で音楽業界に彗星の如く登場したMEG。アーティストとしてデビューする以前から『Cutie』(宝島社)や『Zipper』(祥伝社)などのファッション誌にモデルとして登場し、時には表紙を飾ったりと、ファッションアイコンとしての側面も持ち合わせていた。そんな彼女は、精力的な音楽活動に加え、自らデザイナー/プロデューサーを務めるアパレルブランド「Carolina Glaser」(カロリナ・グレイサー)を06年に立ち上げたことで、ファッション業界からも耳目を集める存在となった。

 MEGをはじめ、国内外問わず音楽業界には自身のアパレルブランドを持つアーティストは数多く存在する(詳細は別項を参照)。しかし、気がつけばブランドが倒産していたり、音楽活動から撤退しアパレルビジネスがメインになっていたりと、なかなかどうして音楽とファッションの両立は難しい。また、アーティストが自身のブランドを立ち上げるという動きに目を向けたとき、ことダンスミュージックを主戦場とするアーティストのほうが、親和性が高いように見受けられる(実際にロック畑のミュージシャンなどは自分のアパレルブランドを持つ、というよりは、既存ブランドとのコラボ商品が多い)。

 なぜ、その手のジャンルとアパレルの親和性は高いのか? 本稿では、その密接な関係性の根幹と、アーティストがアパレル業務を並行したときの内情を知るべく、音楽とアパレルを見事に両立させているMEGに話を聞く。

夜鍋作業から量産へ 売り上げは数億円に

――そもそも音楽活動をメインとしながら、自身のアパレルブランドを立ち上げようと思ったきっかけは、なんだったのでしょうか?

MEG 02年にワーナーミュージックからメジャーデビューが決まっていて、高校卒業と同時に地元広島から上京してきたんですけど、デビューまでに準備期間が約3年間くらいあったんですね。その間にファッション誌のモデルの仕事をいただくようになり、いつしか表紙も飾らせてもらえるようになりました。

 そこで〈1週間コーディネイト〉や〈1カ月コーディネイト〉といった企画もやるようになって、ファッション誌に出るときは、だいたい私服で。もちろん、ギャランティもなく……というか、請求書の書き方とか知らなかったからか(笑)。1週間コーデならまだしも、1カ月となると必然的にお金も洋服も足りなくなってくるんですよね。なので、いっそのこと自分で洋服を作るか、と思って。

――そのときからゆくゆくは自身のブランドを立ち上げたい、という気持ちがあったのでしょうか?

MEG こんなに長くやるとは予想してなかった(笑)。最初は(企画に合わせた)自分コーデ用の洋服を作ることがメインとか、そんなもので。でも、雑誌に出て、自分の作った洋服や帽子を着用して、プロフィール部分にメールアドレスと、『この商品が欲しい方はこちらまで』という一文を載せたら、その帽子が150個前後売れたことがあったんです。それが02年くらい。

 当時はガラケー時代でもあり、インターネットもオンライン通販も今ほど容易なものじゃありませんでしたから。服飾の学校を出ていたわけではありませんでしたが、裁縫やリメイクは好きだったので、オーダーがきてから手縫いで夜なべしながら作ってたのが、”お手製量産&通販”の始まりですかね。ほかの洋服も作りたいと思うようになってからは、友だちから『業者に頼めば短期間で量産できる』と助言してもらい、資金を貯めて原宿のマンションの一室を借りて始めたのが、私のブランド『カロリナ・グレイサー』の原型です。ワーナーからデビューしたのも、この時期ですね。

――売り上げも伴っていたから、ブランドを立ち上げた、と?

MEG そうですね。ありがたいことに取引先が増えたりオーダーの数も増え、気がついたら3年後くらいには数億の売り上げを立てることができていて。それまでは個人事業だったんですが、税理士さんから、『さすがにいろいろ大変だから法人化したほうがいい』と言われ、その年に法人登記して今のオフィスとなる株式会社を立ち上げました。

 インターネットが一般的になってからは、今度は夜な夜なサイトデザインや構築のほうにハマって、古着と自社ブランドのオンライン通販を始めました。最初は2人だけでスタートした事業でしたが、06年には原宿に直営店がオープンし、従業員の女の子たちも10人以上になり、地方のショップや商業施設にも卸すようになりました。

――音楽活動との両立は困難ではありませんでしたか?

MEG 音楽活動と共にモデルの仕事やアパレルの仕事も並行しながら、(当時籍を置いていたマネジメント)事務所からの独立と共にワーナーとの契約が満了したんですが、『音楽って自分にとってなんなんだろう?』という疑問はありました。でも、そんな矢先に05年の『WIRE』【編註:電気グルーヴの石野卓球主催でスタートした日本最大規模のテクノフェス】に出演させてもらったことがあって、そのときに心の底から『ダンスミュージックって楽しい!』って感じることができて。それからはみんなが踊れて、一体感を得られるダンスミュージックに特化した音楽を作りたい、と思うようになったんです。

――それが再度メジャーデビューを果たす07年の、中田ヤスタカ・プロデュースのシングル「OK」になるんですね。

MEG マンションの一室を借りて作業していたときに、隣の洋服屋さんによく来ていたのが中田くんだったんです。それが縁となって、音楽にも再び本腰を入れることになりました。それ以降、結構ハードな動きになりましたかね。

――例えば、自身のアパレルを立ち上げることで、音楽活動にどのようなフィードバックがあるのでしょうか?

MEG レコード会社の予算だけでは、自分の希望するプロモーション展開を望めないことがありました。アパレルからのフィードバックがあったとすれば、自分の会社を持つことによって、お金の管理や流れも把握することができていたので、よりクリエイティブなアイデアが浮かび、アパレルの売り上げから音楽活動へ投資できた、ということでしょうか。

 それと、ツアーグッズの製作もスピーディに行えました。ミュージシャンのためのツアーグッズ製作会社から何度かプレゼンを受けたこともありましたが、『それならうちでやったほうが全然クオリティ高く、早くできるな』と思うこともあって。ライブに足を運んでくれるお客さんも洋服好きで厳しい目を持っているので、ただのプリントTシャツは売れない時代になってきましたからね。

――両方のビジネスを維持させる秘訣というのは?

MEG 音楽もファッションも消費者――つまりお客さんとのキャッチボールと、信頼関係だと思います。私はありがたいことに、音楽と洋服という2倍の反響をもらうことができていたので、それが両方を継続することのできる活力にもなりました。

経営継続の鍵は消費者とのキャッチボール

――しかし一般的なイメージで、ミュージシャンがブランドを立ち上げると、「片手間で金儲けをしようとしている」といった色眼鏡で見られることもありますよね?

MEG うーん、実際片手間でできる稼働量じゃないとは実感してるんですけど、もしあるとしたら、それは立ち上げ当初は経営やデザインに関与していても、継続していくうちにブランドや本人の名義だけを貸し、知らないところで運営だけがひとり歩きしていくことが原因のひとつでもあるんじゃないかと思います。実際に、事業が軌道に乗ってから私の元にも『名義だけ貸してくれないか』といった打診は何度かありました。でも、私の手の届かないところで、私がやってる風なテイで商品が動くということは、ある意味でお客さんをダマしているような感じがするし、嘘に嘘を重ねるようなことになっちゃうのが気持ち悪くて。

 確かにお金の面だけをみれば、カロリナ・グレイサーという名義だけを貸して、ビジネスを展開するのは簡単だし、楽です。でもきっと消費者の目をごまかすことはできないし、それが知られたとき、残念な気持ちを与えることになる。もちろん、音楽活動が激務になることで、本当にアパレル業務に携わることが難しいケースもありますが、その時は信頼できるパートナーと組まないとダメだし、自分の意向とは異なる商品を、自分でレコメンドしないといけない状態が続くことは、私自身きっと耐えられなくなると思うんですよね。

――それでもアーティストが「自身のアパレルブランドを立ち上げたい」と思う深層心理は、どう分析しますか?

MEG 私の場合は、もともとほぼアーティストとして活動していない状態から個人事業でスタートしたという、ほかのアーティストさんとはちょっと違う形でアパレルに参入したタイプだと思いますけど、先ほど話したように音楽そのものが生活に身近であること、フェスやライブでの一体感――グッズが自分のブランドならなおさらですよね――またクリエイティブコントロールといった面で、音楽とファッションの両立を図りたい、誰かとキャッチボールしたいと思うのは自然かもしれません。なので、ある意味、必然に近い形なんじゃないかな。あと、ヒマなのがイヤだ、というのも私はあったかもしれませんね(笑)。

――主にMEGさんの音楽活動をメインに支援しているリスナーの方々は、アパレル業務事情に関してはよく知らない、という人が多いと思うのですが、ブランドを継続する上でもっとも大変なことは、どんなことなのでしょうか?

MEG 人ですかね。私が気になるのは『お店の掃除はきちんとできてるか』『売り上げは立てられてるか』『スタッフ同士、仲良く無理せずやっているか』など、些細なことだったりするんです。音楽活動に時間を取られると、どうしてもおろそかになってしまうことはありますし。まだスタッフの数が少ない頃は、みんなで食事に行ったり私の目で見渡して判断することができても、スタッフが増えると、なかなか直接悩みや問題を拾えない距離になってしまう。経営を続けていく上で、スタッフと密に話すことはすごく大事なことですからね。

 そのあたりをきちんと面倒見てもらうべく、安定していた売り上げをかっていただき、11年にカロリナ・グレイサーのアパレル事業部を大手アパレル運営会社にセクションごと移す形で、デザイナー&プロデュース契約を含めた店舗展開拡大のための業務提携を結ぶことにしました。

――しかし、昨年末に「カロリナ・グレイサーのプロデューサー/デザイナーを辞任する」というニュースがありましたが、現在は?

MEG そうですね…… その会社との業務提携の契約は満期で終了しました。カロリナ・グレイサーは私が作ったアパレルブランドですし、私がブランドから外れても"カロリナ・グレイサー"の名前で売られることに納得することができなかったので、きちんと辞任も発表をしないと、と。

 その後に、ブランドを手放さざるを得ない状況にもなり、長期間の話し合いの末、ブランドの名義は私の元に戻ってきました。後輩たちが作っていた次のコレクションの洋服もあったんですが、それを発表することはないという、たった1枚の書面で通知されたり、そういった急な終了だったのは、すごく残念でした。

――でも、戻ってきたんですね。

MEG そもそも辞任についても発表する必要はないんじゃないか、という話もあったんですが、私は発表しないことのほうがファンを裏切ってしまう行為だと感じたし、きちんと報告する義務があると思いました。辞任の件で驚いた人もいるかもしれませんが、今は次の業務提携先も決まり、新しいチームで来春のコレクションのデザインを詰めているところです。

 洋服を作ること、音楽を作ること、両方の物作りをずっとしてきた私からすると、お金をもらうことというのは、すごく責任を感じるんです。だから、誠意のないことはしたくない。これまでの経営で、カロリナ・グレイサーを手放してしまいそうな誘惑がなかったとは言えません。『出資するから、もっと大きな展開をしないか』と、アタッシュケースを持った怪しげなおじさんが現れたこともありますよ(笑)。でも、私がアパレルを続けてた理由はお金儲けからの発想ではなく、洋服が好きでいてくれるスタッフやお客さんとの、"女子だけの集まり"みたいな雰囲気が楽しかったからなんですよね。もちろん、アーティストの中には、アパレルをサイドビジネスとして『儲けてやる!』という人もたくさんいると思います。そのこと自体を否定することもしませんが、私は"アーティストとアパレルの親和性はなぜ高い?"と聞かれたら、やっぱり、共に同じ空間を楽しむという共有感なんだと思います。

 今、音楽活動は自分自身がわくわくするようなことのアイデア待ちですが、近いうちに音楽、ブランド共に発表できることがあるので、楽しみにしていてください。

(文/編集部)

MEG(メグ)
1980年、広島県生まれ。シンガー、デザイナー。音楽活動以外にファッションブランド『Carolina Glaser』、コスメティックブランド『baw』のディレクターを務める。フェイスブックやツイッター、インスタグラムなど、SNS各種のフォロワー総数は200万人を超えている。

海外進出も果たすブランドへ
手縫いの夜なべ作業から世界的一流企業へ

1410_musician_02.jpg
MEGがプロデューサー/デザイナーを務める「Carolina Glaser」(カロリナ・グレイサー)。2人態勢の個人事業から、06年に正式に法人登記し、株式会社を設立。店舗は原宿の直営店を皮切りに、新宿伊勢丹や渋谷パルコ、ラフォーレ原宿など、全国26カ所で展開。

 11年からは洋服の製造・販売・卸を中心に事業を拡張するべく大手商社と業務提携するが、13年末に契約を解消。「カロリナ・グレイサーからのプロデューサー/デザイナーを辞任する」というニュースが出たが、現在カロリナ・グレイサーは業界トップの某社との提携が決まり、本人の監修の元でプロジェクトが進行中。近日中にも新たな発表がされるとのこと。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...
この記事を購入※この記事だけを読みたい場合、noteから購入できます。

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論
    • 音楽業界からの【賛辞と批判】
    • 【芸能プロ】的戦略が抱える2つの“矛盾”
    • 令和の【ジャニーズ・シングル】20選
    • 20年代のジャニーズ【ミュージックビデオ】

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

インタビュー

サイゾーパブリシティ