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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第81回

イスラエルの罪を描いた監督によるハリウッドへの風刺

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『ザ・コングレス』

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かつてのアカデミー賞候補女優ロビン・ライト本人が演じる主人公は、ある日、映画製作会社からオファーを受ける。それは彼女の全身をスキャンし、デジタル化したロビン本人の肖像権を買い取るというものだった。それにより、永遠に若々しい姿のままロビンは映画に出演することになったが……。

監督:アリ・フォルマン/出演:ロビン・ライト、ハーヴェイ・カイテル、ジョン・ハム、ポール・ジアマッティほか。日本公開は未定。




「ロビン、君は23歳の時、『プリンセス・ブライド』(87年)のヒロインで華々しくハリウッドに登場した。『フォレスト・ガンプ』(94年)のヒロインを演じた時はアカデミー賞にもノミネートされた」

 映画『ザ・コングレス』は、実在のハリウッド女優ロビン・ライトのすっぴんのアップで始まる。66年生まれの彼女の顔は、歳相応に見える。

「でも、その後の君はいくつもの選択を誤ってきた」

 ロビンは『ガンプ』の後、ショーン・ペンと結婚し、映画よりも子育てに専念した。夫はアカデミー賞を二度も受賞して大スターになったが、彼女には『ガンプ』以降、ヒット作はなかった。ロビンに話しかけているのは彼女のエージェント。彼は、ロビンの全身の映像データをコンピュータでスキャンして、その権利を映画会社に売ろうと提案する。

『ザ・コングレス』は、2008年に『戦場でワルツを』でアカデミー外国語映画賞にノミネートされた、イスラエルの映画作家アリ・フォルマンの新作。『戦争でワルツを』は、82年のレバノン内戦に当時19歳のフォルマンが従軍した体験をアニメーションで描く。26年後、彼はレバノンで何をしたか思い出せず、戦友を訪ねて記憶をたどっていく。そしてついに、自分が忘れようとした事実と直面する。イスラエルが支援するキリスト教徒がレバノンに逃げたが、パレスチナ難民キャンプを襲撃して3000人を虐殺するのを目撃してしまったのだ。

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