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【premium限定連載】芸能評論家・二田一比古の芸能ゴシップ今昔物語

芸能スクープ記者も提言! 競馬とキャバクラと芸能界のタニマチで考える“AKB48総選挙”の虚と実

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――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの"今昔物語"を語り尽くす!

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AKB48公式HPより。

 6回目の総選挙は中間発表では一位だった指原莉乃を二位の渡辺麻友が抜いて堂々の一位に輝いた。ファンは一喜一憂しただろうが、改めてこの総選挙を考えてみたい。

 握手券同様、選挙の投票もCDを購入しないと投票券は入手できないし、投票もできないシステム。要はお金で投票券を買うわけだ。となれば、「あの子を一位にさせたい」とファン同士が熾烈な投票合戦を繰り広げる。そこで現れるのが投票券の大量買い。国政選挙では金で投票してもらうのは禁じられているが、こちらは関係なし。大量買いは当たり前だ。

「関西には指原の大スポンサーとして二人の子供のいる四十二歳の男性が、五千票近い投票券を大量買いして投票することで有名です。ファンの間では”さしため(指原のためにできることを意味する)”と呼ばれているオタクです。指原のように太いスポンサーがいる子は強いのです」(AKB担当記者)

 なかなか理解しにくいことだが、社会を見渡すと似たようなことがある。相撲に端を発したと言われる”タニマチ”。かつては贔屓の関取りのスポンサーとなり金品の援助をする人たちのことを差した言葉だが、芸能界にも古くからいる。バブル時代は、にわかタニマチが出現したが、「特に不動産バブルで稼いだ人たちが多かった。そのおかげで高級な店での飲食は日常茶番事。高級外車やブランド品のプレゼントに、お小遣いまで恩恵にあずかった芸能人はかなりいた。歌手はコンサートやディナーショーのチケットをまとめ買いしてもらうこともあり、かなり助かっていた」と当時を懐古しながら芸能プロ関係者は最近の傾向をこう話す。

「今は少なくなったとはいえ、古い芸能人、特に歌手には根強くタニマチはついています。最近は、男性よりも金持ちのオバサンが(地方で事業をいくつも経営しているとか、ダンナが金持ちの実業家といった人がいるそうだ)タニマチ的に振る舞っている」

 AKBのファンもある種のタニマチ感覚だと思う。一人の子を応援するために多少の散財は厭わない。本来、タニマチは歌手とのマンツーマンだが、一人でタニマチになるほど財力のある人たちではない。そこで考えたのが同じ子を応援する仲間が集まり、協調してタニマチになる。これは馬主にも似ている。

 馬主とは一人が一頭の競走馬を買うものだが、一頭何千万円、何億円ともなれば、一人で馬主になれる人は限られてくる。そこで誕生したのが共同馬主システム。競馬クラブが運営して一口から共同馬主なる人を応募する。一口でも馬主になり所有する馬が勝てば、配当がもらえる。無論、単なる応援と違い、博打性が高くAKBの主旨とは異なる。AKBは配当こそないが、応援した結果、一位という称号に酔いしれることを目的とする。タニマチと共同馬主を併せ持つのがAKBのファン心理なのだろうと思う。

 さらに、そこに夜の街で流行りのキャバクラシステムも加味されているように見える。

 キャバクラに限らず、ホステスのいるクラブは女の子たちにとって死活のかかる仕事場。彼女たちは一人でも多くの顧客を確保するために必死になって働いている。昔、キャバレー全盛期には毎月、個々の売り上げ数を張り出し、女の子たちを競わせた。働く以上、ナンバー1を目指せば収入も必然的に増える。

「バブル時代、六本木のキャバクラには月の売り上げが一千万円を超える子もざらにいた」(黒服)そうだ。女の子たちに競わせることで店は繁盛する。俗に「太い客を持っている子が強い」と言われる世界は、AKBに似ている。

 今年、他界したやしきたかじんさんは新地で有名な太い客だった。何件ものクラブに”口座(係)”と呼ばれる女の子がいて、「たかじんさんをお客に持っているだけでナンバー1になれた」という逸話も残されている。

 キャバクラで気にいった子を見つけ常連となって、通う男性の最終的な目的は男と女の関係に持ち込みたいのが大半の本音だが、女の子は「関係を持ってしまったら店に来なくなるし、お客確保の為に肉体は使えない。いかにヤラせずに通わせるかが腕よ」(某キャバクラ嬢)という。こうして客と女の子の攻防戦が繰り返されているわけだ。

 AKBとファンの間には「彼女にしたい。付き合いたい」という思いで応援する子も少なからずいるとは思うが、むしろ、「僕が応援する子がチームのナンバー1に輝き、将来はスターとして活躍してほしい」(ファン)というように、彼女たちのために投票券を買うのは彼女にすることよりも、タニマチ感覚に近い。タニマチからキャバクラまでいろいろなシステムを取り入れ、まさに「いいとこどり」で出来上がったのがAKBおよび総選挙のシステムなのだ。

ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母顔が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。


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