サイゾーpremium  > 特集  > タブー  > 音楽業界では当然の事実? 【ゴーストライター】の「是非」を探る
第1特集
ゴーストライター起用は正義か悪か!?【1】

ゴーストライター起用は正義か悪か!? 音楽業界では当然の事実?ゴーストの「是非」を探る

+お気に入りに追加

――楽譜が読めず、明瞭に聞き取れる耳を持ち、日本を感動の渦に巻き込んだ佐村河内守には、ゴーストライターが存在した。業界で脈々と続いてきたゴースト文化とは。

1406_music_01.jpg
(絵/河合 寛)

 あの日、何気なくつけたテレビの画面にギョッとしてしまったのは、そこに、本来は見えないはずの幽霊の姿がはっきりと映っていたからだった。去る2月5日、「クラシック界の風雲児」として脚光を浴びていた佐村河内守氏を、世間的には無名の音楽家・新垣隆氏が「私は18年間にわたり、彼のゴーストライターを務めた」と告発した。また、全聾であるはずの佐村河内氏の耳が「実は聞こえる」と暴露したことにより、“現代のベートーベン”という化けの皮は剥がされてしまったわけだが、同時に、ゴーストライターという都市伝説のように囁かれてきた音楽業界のタブーが白日の下に晒され、人々はある疑念を抱くようになっただろう。つまり、「実は多くのアーティストもゴーストライターを使っているのでは?」と。一部のミュージシャンにとっては、新垣氏の姿は死神に見えたかもしれない。

 そもそもゴーストライターとは、佐村河内氏の事件からもわかるように、「実際に制作をしたにもかかわらず、作品とはまったく無関係」と見なされる姿なき制作者を指す。これは音楽業界に限らず、小説家や脚本家など、あらゆる分野で共通する職種であるが、こと音楽業界に関しては、プロデューサー・作詞・作曲・編曲など、そのゴーストの存在場所は広範囲にわたる。「ゴーストの存在は、日本の音楽業界では当たり前です」。とあるレコード会社関係者は話す。

「佐村河内氏の一件は、クラシックの分野で起きた事件でしたが、歌謡曲からロック、クラブミュージックなど、さまざまなジャンルで、ゴーストライターは重宝されている。もちろん、商品にそのゴーストはクレジットされず、アーティストの名前で(作詞作曲などが)クレジットされます」(レコード会社関係者A氏)。

 07年、ビーイングのプロデューサーである長戸大幸が、大黒摩季の歌詞の大半を自分が書き換えたと暴露したこともあった。そのようにゴーストライターが蔓延する背景には、80年代はアイドルと呼ばれていた歌手の肩書きが、90年代には“アーティスト”と言い換えられ、歌うだけではなく作詞作曲も手がける万能なイメージを求められるようになった風潮も、深く関係しているように思う。

 また、小室哲哉や小林武史、つんく♂など、曲をリリースすれば必ず売れる“ヒットメイカー”として一世を風靡したプロデューサーの登場は、当時ヒットの法則をゴーストに覚えさせてしまえば、そのプロデューサー名義で、いくらでもヒット曲を量産できるという疑惑が生まれたほどであった。つまり、ヒットメイカーの“名”がクレジットされていれば、自動的に売れる、という仕組みも、ゴーストライター文化を加熱させる大きな要因となったのではないだろうか。もちろん、リスナーの中には、ゴーストライターの存在を知り、騙された、と落胆する人もいるだろう。では、音楽そのものを聴いて、それがゴーストライターを使っているか否か見極めるテクニックというものはあるのだろうか?

「佐村河内氏のように、取材で作曲の手法について聞かれると、『音楽が降りてきた』みたいな、抽象的なことしか言わない人は怪しい。実際に楽譜を書いたり、機材を使用して曲を作っているわけではないので、詳細に答えられないんですよ。一般情報誌やファッション誌の取材は、質問も専門的ではないのでごまかせますが、『サウンド&レコーディング・マガジン』(リットーミュージック)のような、制作工程や使用機材について詳しく聞かれる音楽専門誌ではそうはいかない。中にはほとんどゴーストに作らせているのに、付け焼き刃で仕込んだ知識で滔々と話す人もいるので、見極めは難しいですけどね」(レコード会社関係者B氏)

「例えば、自称シンガー・ソングライター系アーティストが、ライブなどで頻繁に歌詞を忘れてしまったとします。SNSが発達した今、『本当は自分で歌詞を書いていないんじゃ?』と、ツイッターやブログで拡散されるようなことになってしまったら、ゴーストの存在を疑われる時代でもあります。が、たいていのファンは、歌詞を忘れることはよくある失敗として笑い話にしてくれますけどね」(レコード会社関係者C氏)

 こうなるとすべてが怪しく思え、音楽を聴くというよりクイズをやっているような気持ちになってきくる。ひょっとしたら、この混乱は、過去のゴーストライターたちの呪いによるもので、新垣氏は浮かばれない彼らが遣わした使者だったのかも……とは、言いすぎだろうか。

(文/磯部 涼)

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2022年6・7月号

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論

目指すはK-POP? ジャニーズ進化論
    • 音楽業界からの【賛辞と批判】
    • 【芸能プロ】的戦略が抱える2つの“矛盾”
    • 令和の【ジャニーズ・シングル】20選
    • 20年代のジャニーズ【ミュージックビデオ】

移ろいゆくウクライナ避難者

移ろいゆくウクライナ避難者
    • 移ろいゆく【ウクライナ】避難者

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

サイゾーパブリシティ