サイゾーpremium  > 特集  > 本・マンガ  > 総会屋扱いされる【経済誌】の阿鼻叫喚

――現在、雑誌を手に取るメイン層として知られるサラリーマン世代。中でも彼らが一番手に取るのは、ビジネス誌だといわれているが、現状はどうなのか? ネット化も進み、多くの雑誌がしのぎを削る中で、2013年一番のスクープや、今読むべきビジネス誌、不況の中での苦労や編集部の現状などを、ビジネス誌で活躍する記者が明かす――。

A…大手紙経済部記者
B…元ビジネス誌編集者
C…元ビジネス誌記者

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企業と付き合いながら、ときにはバッチリスクープを飛ばすには、並大抵の根性では作れません!

――今回は、ビジネス誌で執筆されている記者さんにお集まりいただき、昨今のビジネス誌の状況について伺おうと思います。まずは、2013年に業界で話題になった特集とともに各誌の傾向をご紹介ください。

A まず経済界と距離が近いのが「日経ビジネス」(日経BP社)だね。特集「それをやったら『ブラック企業』」(4/15号)、特集「社長の発信力ランキング2013」(4/29・5/6号)と企業目線の特集が多い。それから「プレジデント」(プレジデント社)はビジネススキル特集や企業社長などの財界人・著名人に登場してもらう仕事術向上ハウツー物が得意。今年だと、特集「稲盛和夫の叱り方」(3/18号)、特集「金持ち老後、ビンボー老後」(10/14号)が話題になった。この2誌の部数がそれぞれ23~24万部前後で、ビジネス誌の売り上げでいうと1・2位だ。

B 一方、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)「週刊東洋経済」(東洋経済)、「エコノミスト」(毎日新聞社)は、財界とは一定の距離をおいて取材をしている印象です。「ダイヤモンド」は、サムスンにヘッドハンティングされた日本人技術者ランキングを掲載した特集「サムスン 日本を追いつめた二番手商法の限界」(11/16号)、「東洋経済」は、ユニクロの「3年内離職率」の異常な高さを明らかにした「特別リポート ユニクロ 疲弊する職場」(3/9号)と、企業の裏側まで徹底的に突っ込んだ取材物が際立っていました。それから「エコノミスト」は、学者や市場関係者による寄稿が中心で、「外国人投資家の正体」(5/28号)といった特集の企画勝負になっている。なお、番外編で、JR東海の子会社が発行する雑誌「WEDGE」(ウェッジ社)の「日本経済の最大リスク要因はエネルギー 今こそ原子力推進に舵を切れ」(9月号)という特集も挙げておきたいです。それほど売れたわけではないけど、強烈に原発再稼働論を展開し【1】、業界がざわついていました。

C ビジネス誌は現在、どこもそれほど好調でもない。各誌の売れ行きを見ていても軒並み東日本大震災から売れ行きがガタッと落ちている。売れる企画といえば、医療、介護、相続・遺言、事業承継と、50代以上の関心ごとである目先のカネにまつわるものばかりになっている。

A 定番モノばかりで新しい企画をやると大コケ、刷り部数を減らしても赤字になることも。このためどの雑誌も、ますます定番モノで、手を替え品を替えて特集をするハメになる負のスパイラルに陥っている。さらに意外にぱっとしないのが不動産特集、これも大震災以降まったく売れていない。アベノミクス効果で世間では不動産バブルが起きているといわれるが、特集を組んでもほとんど反応がない。

B 負のスパイラルでいうと、年末には、3誌が定番の介護特集でほぼタイミングが重なりました。【2】「エコノミスト」(12/3号)は特集「介護離職」を組み、翌週の「ダイヤモンド」(12/14号)の特集は「親と子の介護」。同日発売の「東洋経済」の特集は「介護ショック どうする!おカネと住まい」だった。ここにきて介護が特集のテーマとして重なったのは、政府が、3度目の介護保険法改正で、抜本改革に着手し、15年4月から、一定以上の所得がある高齢者(年金収入280万円以上)を対象に、利用者負担を1割から2割に引き上げる方針となったからでしょう。政府の方針が明らかになってから企画が立ち上がり、取材を開始。各誌が同じタイミングで同じような特集を発売……と、重なることになってしまうんですよね。

C かつては、「ダイヤモンド」と「東洋経済」が特集企画をぶつける、「あてる・あてられる」という軋轢があったが、今はない。販売ルート経由で、翌々週の他誌の特集企画が明らかになって、「重なった」と判明するが、重なっても売り上げに大きな影響が出ているわけでもないからね。

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