サイゾーpremium  > インタビュー  > 【伊東友香】──女性詩人が語る「自分の中の攻撃性」とは?
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人生の中で一番つらい「思春期」を記す

【伊東友香】「自分の中にある攻撃性を否定したくない」そう語る女性詩人が生み出した最新詩集の"中身"

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――気鋭の女性詩人の言葉と、芸術高校の生徒たちの絵画とのコラボが生み出す、「弱った心」の心象風景

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(写真/ノザワヒロミチ)

 クロネコのようなしなやかな印象を持ったこの女性は、詩人で作家の伊東友香。作品集の発表はもちろん、アーティストへの詞の提供、ポエトリー・リーディングのライブ、またテレビ番組『にほんごであいらぶゆう』(テレビ神奈川)ではホステス役として、同じアーティストから講談師、言語学者までと対話を重ね、「言葉」への表現にこだわり続けている。そんな彼女が、最新詩集『クロネコを撃ち殺したくなったら』(学びリンク)を発表。衝撃的なタイトルだが、そこに込められた思いとは?

「例えば、すごく疲れているときに電車の中で舌打ちしている人や乱暴な態度の人がいたりしたら、機関銃で全員撃ち殺したくなったりしませんか? その攻撃性はときに自分自身に向くこともあって、やけ酒を飲んだりリストカットをしてしまうような人もいます。でも、そういう攻撃性は誰にだってあるし、それはただ否定してしまえばいいようなものではないと思うんです。人間が持つ、そんな闇を表現したかった」

 この詩集は、北海道芸術高等学校の学生たちとのコラボレーション作品となっている。

「『クロネコを撃ち殺したくなったら』は、ドロップアウトしてしまった高校生の心象風景なんです。この学校は通信制の芸術高校で、心に痛みを持っている生徒が多い。私はその子たちに、10代の頃から今までに書き溜めてきた詩の中で読んでもらいたいものを100点ほど渡し、彼らにその中から好きなものを選んで絵を描いてもらったんです。それらをまとめたものが、この詩集になりました。『中学の頃は登校拒否児だったけれど、この高校で絵を描いたり歌ったり踊ったりして笑顔を取り戻せた』という子がたくさんいる学校で、その子たちとコラボできたことが今の私の喜びです」

 子ども時代が一番つらい、と彼女は言う。自分自身も、思春期に引きこもりになってしまった過去があるのだ。

「とにかく楽しいことが好きで、クラブに行ったりして遊びまくっていたんです。ところがある日、一緒にイベントをしていた先輩が急に連絡がつかなくなって……事故で亡くなってしまった。すごく一生懸命イベントを企画してDJを呼んだりして頑張っていたのに、あまりにもあっけなく。それから遊びを一切やめて、すべてを遮断して引きこもって、家から出られなくなりました。後から思えば、それまでの、面倒でも学校へ行っていたときのほうがずっと楽で、家から出られなくなったこの時期が一番つらかった」

 しかし、そんなどん底から彼女を救い出してくれたのが、「言葉」だったのだという。

「家から一歩も出ずに、ずっと本を読んでいたんです。たくさんの本を読む中で、真木健一という作家の『白い血』という小説に出会いました。その中に、『誰にも染まらない、誰にも似てない、私だけの白い血』という言葉が出てくるんですけど、それにすごく感動して……あ、『白い血』って、私かも?って(笑)。誰にも染まらなくて、誰にも似てなくて、そんな自分でもいいんだって、すごく救われたんです」

 言葉に救われた経験があるからこそ、言葉で人を救いたい、と彼女は言う。

「ある高校生が私の詩を読んで、『最初はなんでこの人、優しい詩じゃなくてこんなにつらい、痛い詩ばかり書いてるの? って思ったけど……私も同じことを思ってました』って感想をくれて。そのときに、伝わっているんだなって、うれしかった。詩って、難しいものではないんです。会話と一緒だし、会いたい人、会えない人、想い人に対して書く恋文のようなものだから。ふと自分の心を見つめ直したいとき、空や紅葉でも見ようかなっていう気分で詩集を手に取ってもらえたら、自分の心と対話するいい機会になると思うんですよね」

(文/エリンギ)
(ヘア&メイク/高野雄一)

【拡大画像はグラビアギャラリーでご覧いただけます。】

伊東友香(いとう・ゆか)
詩人・作家。詩の創作・朗読と文筆活動を軸に、「言葉の力で、心の振れ幅を表現する」ことに取り組み続けている。詩集、絵本の発表、ポエトリー・リーディングのライブ活動のほかリュ・シウォンの作詞を担当するなど、フィールドにこだわらず幅広く活動。14年1月28日には、南青山MANDARAにてポエトリー・リーディングのライブを開催予定。公式サイト〈http://yukaitoh.com

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『クロネコを撃ち殺したくなったら』(学びリンク)
詩人・伊東友香の自薦詩に、北海道芸術高等学校の生徒たちが思い思いに描いた絵が挿絵として挿入された詩集。絶望のまっただ中にある弱った心を包み隠さず表現した詩、そして絵が並ぶ。

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