サイゾーpremium  > 特集2  > 「顔でも何でも活かせばいい」元NHK・堀潤インタビュー

――各局がそれぞれにルックスとタレント性を兼ね備えた男性アナウンサーを育てていることは、ここまで見てきた通りだ。では当の若手アナウンサーはそうした風潮をどう捉えているのだろうか? 今春までNHKに在籍し、局の顔としてお茶の間でも"イケメンアナ"として認知されていた堀潤氏に尋ねてみた。

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(写真/奥山智明)

──日本テレビの桝太一アナや上重聡アナ、フジテレビの生田竜聖アナなどをはじめ、いま男性アナウンサーの"アイドル化"が進んでいるように感じています。堀さんもNHK時代からイケメンアナとして人気でしたが、そういった風潮は身をもって感じられていましたか?

 僕の場合、全然大したことないにも関わらず「FRIDAY」さんに一度「イケメン」って書かれたくらいですが……男性アナのアイドル化とも言うべき傾向は確かにあるのでしょうね。日テレの桝アナとは一緒に仕事をしたこともありますが、さわやかなイケメンで、まさに“アイドル”です。テレ朝の富川(悠太)アナも仲良しですが、富川さんは心の底からキレイな人ですよ。フジの生田アナや中村(光宏)アナも最近人気のようですが、彼らはいじられてかわいがられる存在ですよね。僕がいたNHKは、女子アナよりも男性アナが話題になる変な局でしたが、白髪頭の登坂(淳一)アナは「麿」というあだ名で人気でしたし、美声で人気の武田(真一)アナも、「たけたん」という愛称で親しまれていました。

──そうした状況を、男性アナウンサー自身はどう捉えているんでしょうか?

 とてもいいことだと思うんですよ。アナウンサーは、画面から視聴者に言葉を語りかけられるポジションにいます。そしてアイドルというのは、人を癒やしたり元気づけたりできる存在ですよね。地震が起きたときにそういう存在から「落ち着いてください」と言われたら安心感を覚えるだろうし、「麻薬はダメ」って言われたら手を出そうとした人はやめるかもしれない。明日死のうと思っている人に「もうちょっと生きてみようかな」と思ってもらう力だって、アイドルにはありますよね。実際、人気のアイドルアナなんかはそのことに十分自覚的で、サービス精神も旺盛なので、「役に立つなら、いくらでも利用してください」という気持ちでやっていると思います。ただしそれは、「コスプレ」としての役割だと思っています。

──コスプレとは、どういう意味ですか?

 例えばドラマの役と役者本人が別人であるように、テレビに映る「堀アナ」と堀潤という人間は、実は別物です。そして、アイドル化しているのはアナウンサーという職業のほうなんですよね。それはそれで役割をこなしつつ、もう一つの仕事、すなわち「テレビマン」としての仕事もしっかりやっていくべきだというのが僕の考えです。

──テレビマンとしてのアナウンサーとは、どういった役割なのでしょうか?

 日本のアナウンサーって、報道番組においては「ニュース原稿を読むだけ」という、かなり特殊な仕事なんですよ。報道の現場にいるのに、自分の意見が言えないんです。実際は我々も取材をしてるし、そのニュースに対して個人的に言いたいこともある。さらに、それを直接表明できるポジションに立っているのに、言ってはいけないことになっている。これはすごくおかしなことです。例えばアメリカのCNNなんかを見てると、オバマ大統領に反対派のアナウンサーが出てきて、「今回のオバマの動きにはホント憤慨しているんだが、今日は賛成派の○○さんに来てもらってるんで、さっそく意見を聞いてみよう」などとニュースを報じるわけです。テレビマンとして、アナウンサーはこうあるべきなんですが、日本ではそれができないんですね。

──そんな中で堀さんは、原発報道のあり方に異を唱え、結果的にNHKを辞められたわけですよね。

 僕はもともと、そういうアナウンサーのあり方を変えたくてNHKに入社した人間です。就活の面接でお偉いさんたちにそれをプレゼンし、「本当に変えられるのか?」と笑われたこともあります。でも、「意見を言っただけで会社をクビになった」なんて、すごく愉快なことですよね。それが世の中に伝われば、「まだまだこんな社会なんですよ。おかしいでしょ?」というメッセージになる。だから、願わくば今活躍しているアイドルアナにも、ぜひ意見を言ってほしいですね。だって、例えば桝アナがいきなり「私は特定秘密保護法案に断固反対です!」なんて言いだしたら、超おもしろいじゃないですか(笑)。

──それは、かなりの騒ぎになるでしょうね……。

 そのインパクトって、果てしなく大きいんですよ。これは、アイドルにしかできないことです。専門家のおじさんが言っても「まあ、そうだよね」くらいにしか受け止めてもらえませんから。だから、アナウンサーはテレビマンとして「自分はこれを絶対に伝えるんだ」というコアなメッセージを見つけ出していく必要がある。そういう仕事にしていかないと、若いアナウンサーたちがかわいそうです。みんな、超難関の就職面接をパスして入ってくる優秀な人材です。適応能力もクリエイティブ性もあって、人当たりもよく、おまけに見栄えもいいような人たちが、「お前は何も考えずに原稿を読んでればいいんだよ」という仕事しかさせてもらえないとしたら、完全に能力を持て余してしまう。アイドルと言われようと言われまいと、「なんでテレビで働いているんだっけ?」ということを見失わないでやっていければそれでいいと思う。今の若手アナウンサーたちを全員後輩と捉えるなら、自分が誰の何のために働いているのか、それを忘れないで実行していってほしいですね。

(構成/清田隆之)

堀 潤(ほり・じゅん)
1977年、兵庫県生まれ。01年、NHK入局。岡山放送局に配属後、06年から東京アナウンス室へ異動。『ニュースウオッチ9』リポーター、『Bizスポ』司会などを務める。11年3月の東日本大震災発生後、福島第一原子力発電所事故報道に関してNHKの報道姿勢批判を繰り広げ、話題を呼ぶ。

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12年6月からのUCLA留学中に映画『変身』を自主制作。13年春の帰国後、NHKを退局し、フリーに。現在は市民ニュースサイト「8bitNews」を運営しながら、取材や執筆を行っている。近著に『変身 Metamorphosis メルトダウン後の世界』(KADOKAWA)ほか。映画『変身』は、12月1日に日本初上映された。〈twitterID:@8bit_HORIJUN〉

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